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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年06月25日

時代の調味料

ヒット商品応援団日記No378(毎週2回更新)  2009.6.25.

前回、2009年上期のヒット商品について書いた。結論として、新しい着眼や未来のライフスタイル傾向を予感させるような商品は全くなかったと。2009年下期の予想について日経MJも書いているが、本来のヒット商品が出てくることはない。以前、「過去の中の未来」というテーマで私はブログを書いたが、それと同じことを日経MJは「歴史・未来への意識、底流に」と、つまり過去の中に未来を見出すものとして、11月から5回にわたって放送されるNHKのドラマ「坂の上の雲」を取り上げていた。周知の司馬遼太郎の小説のドラマ化であるが、私なりに付け加えれば明治維新によってヨーロッパ文明と対峙し、文明の衝撃を残した夏目漱石なんかも静かなブームを起こすと思う。つまり、「今」という時には未来はないということだ。

数年前から社会現象として出現する、こうした一種の回帰現象はこれからも引き続き起こってくる。今、太宰治の生誕100年という機会もあって、若い世代に太宰ブームが起きている。また、今週の週刊東洋経済のテーマを「古典が今、おもしろい」とし、論語からケインズまで取り上げている。
昨年、サントリーがウイスキーのショットバーを青山に作るというニュースを耳にし気にしていたのだが、実は低迷するウイスキー市場を活性化させ順調に伸びている。特に、その中心メニューはハイボールで、若い世代にとって「古(いにしえ)が新しい」ものとして受け止められている。サントリーウイスキーも、いわゆる原点回帰ということだ。また、町起こし、村起こしが盛んに行われているが、その中心テーマはご当地グルメで、その多くは「古が新しい」メニューとなっている。横須賀の海軍カレーや地方では日常的に食べられているものに少し手を加えたメニューである。こうした傾向、回帰志向は数年前までの大きな「和回帰」のようなものから、より身じかで日常生活に即した回帰へと変化してきた。

結果、大きなヒット商品は当分の間出てこないと思うが、反対に小さなヒット商品がどんどん消費の舞台へと上がってくる。2年少し前に、「今、地方ビジネスがおもしろい」と書いた。ちょうどその頃、私は鳥取県のアンテナショップづくりを手伝っていたが、周知のように今東京では地方の食を中心にアンテナショップ巡りが話題となっている。
つまり、小さな固有商品こそが求められているのだ。裏日本、日本の岬やはずれ、過去注目されたことのない田舎、そうした地方が今面白いということである。まさに京都がそうであるように、表通りの名所旧跡観光から、路地裏の生活文化観光へと変化し、観光拡大を果たして来ているのと同じである。路地裏に埋もれた小さなヒット商品、あるいは小さな企業がこれから表舞台へと上がってくる。

過去注目されてこなかった「何か」とは、全て「小さな世界」、少数の知る人だけが大切に育ててきたものである。しかし、それが売れるものであるとは一切認識されていない。当人や利用顧客にとって、ごく当たり前で、普通で、売る術を知らなかったとも言える商品だ。私の言葉で言うと、都市生活者が求める欲望を知らないという一点において、埋もれてきたのである。

こうした宝探しのような中にヒット商品を見出すことも必要であるが、日常の中に小さな「何か」をチョット付け加えることによって、我慢を和らげたり、楽しさに変えられるような、そんな時代の調味料のようなものがヒットすると思う。○○したつもり消費といった代替消費もそうであるし、自己解決するにしても「何か」を加えることによって楽しさに変えることができる、そんな消費スタイルである。例えば、今流行の節約弁当も、ブログに公開し、弁当族と交流するといった面白さに変換するといった工夫。ただ単にお金をかけずにストレス解消の散策をするのではなく、「フットパス」のように知的興味を満足させるとか。

そんな時代の調味料は、過去あった商品ばかりでなく、人物であったり、スタイルであったり、裏に潜んでいたりする。調味料がそうであるように、味を引き立てるばかりか、1つのスタイルを創り上げることでもある。醤油を入れることによって和風に仕上がるように、その「何か」がライフスタイルを決めていく。以前、巣ごもりの中から清貧の思想のようなものが生まれてくるであろうと書いたが、新しいライフスタイル、知恵と工夫の達人生活とでも呼べるようなライフスタイルである。しかし、そんな新たなライフスタイル、成熟したライフスタイルが大きな潮流になるにはまだまだ時間がかかる。今は、手元にある巣ごもり生活に、チョット楽しく、時に刺激的に、自分で調味料を付加して暮らす、そんな調味料の時代と言えよう。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 10:45│Comments(0)新市場創造
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