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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年05月06日

昭和がまた一人亡くなってしまった

ヒット商品応援団日記No364(毎週2回更新)  2009.5.6.

5月2日、忌野清志郎さんが亡くなった。井上陽水、吉田拓郎といったミュージシャンの少し後からのスタートであったが、私たち団塊世代にとって、青春の風景には必ず出てきたミュージシャンの一人である。勿論、ロックとフォークというジャンルの違い、好き嫌いでいうと陽水・拓郎派と清志郎派とに大きくは分かれていたと思う。私はどちらかと言うと前者であったが、友人の一人は清志郎フアンであった。しかし、音楽のジャンルを超えて共通していたことは、時代に素直に向き合う、そこに生きている「人間大好き」を表現したミュージシャンであった。陽水と同じように社会問題をテーマとし、「原発賛成音頭」のように時に物議をかもす、反骨のロックミュージシャンのように言われるが、それも多くの音楽専門家が言うように根底にはリズム&ブルースがある。1990年代末、渋谷109に集まった山姥・ガングロの30年も前に、歌舞伎役者のような婆娑羅スタイルで時代を駆け抜けた。「昭和は死んでしまった」と言い残して亡くなったのは、日本のブルース、歌謡曲を書いた阿久悠さんであるが、また一人昭和が亡くなってしまった。

今、忌野清志郎さんと井上揚水の二人が創った「帰れない二人」を聞いている。

思ったよりも夜露は冷たく
二人の声もふるえていました
「僕は君を」と言いかけた時
街の灯が消えました
もう星は 帰ろうとしてる
帰れない二人を残して

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・

もう星は帰ろうとしてる
帰れない二人を残して    
作詩:井上陽水・忌野清志郎 作曲:井上陽水・忌野清志郎

「帰れない二人」は、今一人になって、何を想っているのであろうか。井上陽水の初期の楽曲に「人生が二度あれば」がある。この曲は亡くなった父を想って創った曲であるが、清志郎さんを想った曲を私は是非聴きたいと思う。
一昨日行われた通夜はロックコンサート会場になり、代表曲「雨あがりの夜空に」のアンコールで送り出したという。いってらっしゃい、清志郎さん。
言葉の原初的発生は、最初はまさに音であった。うれしかったり、悲しかったりそうした感情は音、つまり表音としてあった。そうした音を人類は表意として、地域ごとに時代ごとに言語として制度化してきた。そうした意味で、音楽は原初としての言葉であった。ニュースに声を与えてくれたのは亡き筑紫哲也さんであったが、清志郎さんは時代に言葉を与えてくれた一人だと思う。

前回、新型インフルエンザの危機によって、巣ごもりから冬眠消費へ向かう、と私は書いた。自己防衛意識は、更に強まるとも。つまり、言葉が届かない、受け付けない時代に進んでいくということだ。いや、最悪の場合は失語の時代を迎えるかもしれない。病気としての失語症は、脳の言語野が損傷することによって起こるのだが、マスメディアはまるで失語症の如く、言葉を発する言語野が損傷している。

昭和という元号が平成に変わったのは1989年であった。周知のように、日本の1989年はバブル絶頂期で株価は38000円を超え、ベルリン崩壊という東西冷戦のイデオロギー対立が終焉した年であった。生活という次元で言えば、収入が右肩上がりであった昭和とバブル崩壊後数年は世帯収入は上がるが1998年以降右肩下がりの時代へと分かれる年である。
本格的な分析を今後していきたいと思っているが、バブルが崩壊する1992年前後を境に生活価値観は根本から変わる。大きな分水嶺となる時代論であり、世代論でもあるが、1980年代後半に生まれた平成世代、25歳以下の若い世代の消費行動とその価値観、それ以前のポスト団塊世代40代半ば以上の昭和世代とを比較してみると明確な違いが分かる。

仮説はこうである。25歳以下の平成世代が物心がついてからどんなことが経済・社会で起きてきたか、物質的にはモノが溢れ、個室ばかりかPHSや携帯電話という個人単位の生活が当たり前の時代であった。しかし、同時に昭和の価値観が目の前で崩壊していく様を実感する。大企業神話、金融神話、終身雇用、年功序列、受験戦争、・・・・・こうした過去の価値観に替わってITビジネス、グローバリズム、成果主義、ゆとり教育、大学全入時代・・・・新しい平成の価値観に遭遇するのだが、経済でいうと右肩下がりの時代しか経験しておらず、不安はあっても不満が生まれる背景は持たない世代である。

この昭和世代と平成世代を対比して見ると、不足・欠乏感vs充足・不安感、モノ(ブランド)価値欲求vs情報(個人)価値欲求、消費・変化欲求vs貯蓄・安定欲求、競争vs非競争、変化受容vs保守維持、このように整理できる。不安感はあっても不足感の無い平成世代にとって、草食系男子と呼ばれるように消費欲望としては乏しい。しかし、モノを買わない訳ではなく、先日原宿にオープンした「フォーエバー21」のように、1万円あれば上から下まで全て揃うといった商品であれば買う世代である。また、これも先日リニューアルした新宿マルイの売り場を見てもわかるが、服と同じ位アクセサリーや小物雑貨が置かれ、どれも1000円〜3000円といった安さである。昨年のヒット商品となった柄タイツの主要購買層である。

話は元に戻るが、新型インフルエンザを含めこの平成世代こそ自己防衛に走る。いや、既に自己防衛的生活を送っていると言った方が正確であろう。団塊世代は若かりし頃「坂の上の雲」を目指したが、平成世代にとって「坂の上の雲」はない。この世代にとって安定・安心が最大のキーワードである。忌野清志郎さんの訃報を聞いて、ふとこの平成の時代、その申し子である世代を考えてしまった。以前、このブログにも書いたが、昭和と平成との段差は大きいと。清志郎さんが58歳の若者であるのに対し、目の前で多くの価値観崩壊を見てきた平成世代はまるで「20歳の老人」であるかのようだ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:53│Comments(0)新市場創造
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