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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年04月15日

停滞と底流 

ヒット商品応援団日記No358(毎週2回更新)  2009.4.15.

ここ数ヶ月、消費においては「巣ごもり消費」と言われる如く、特筆すべき新たな傾向は見られない。日経MJの1〜3月期のヒット商品を見ても、ユニクロのguやHONDAのインサイトなど誰でもが売れる理由や結果を知っていて、そこに新しい着眼や傾向を見出す商品はない。景気浮揚策として実施された高速道路の割引制度、あるいは定額給付金の消費刺激の結果も、当たり前のことであるがマスメディアが大騒ぎして報じるほどではなかった。随分前になるが、消費税アップの実施に伴う消費の落ち込みに対し、ヨーカドーグループはその差額分を値引きするキャンペーンを行い、顧客の圧倒的な支持を得て大きな成果を得た事があった。小売業的発想とはかくのごとき消費心理をしっかりと把握することが最大の経営課題となっている。このブログでも少し前に取り上げたが、「イオンの反省」もこうした消費心理を理解しえなかった事への反省である。スーパー、コンビニ業界は揃って、PB商品を中心に値下げに踏み切った。

最近のマスメディアが取り上げる消費のストーリーは、例えばもったいない精神による「使い切りサイズ」にメーカー商品の改定が行われていると。例えば、容量1000mlを750mlへ、あるいは朝カレーといった食べ切りサイズなどもそうであるが、こうした傾向は「もったいない」という節約理由もあるが、既に5〜6年ほど前からの傾向でヒット商品である「一人鍋」に象徴的に現れている。つまり、単身世帯と、DINKSと呼ばれる夫婦共稼ぎ世帯は全世帯の50%を優に超え、ライフスタイルから見て個食化に進んでいることが大前提にある。この個食化を多様化へと広げれば、「あれこれチョットづつがうれしい」という顧客欲求につながっていく。ここ10年近く、食ばかりかあらゆるライフスタイルに小単位化は浸透してきた。サイズや量といったモノの小単位化、時間の小単位化(省時間化)、テーマの小単位化(超専門化)、そして、今日課題となっている小価格化(低価格化など)といったことは、マスメディアのいう型にはまった節約志向ではない。個人化するライフスタイルの最大特徴は、マイサイズ=小単位である。

既に2年ほど前に「私生活主義の解体」というタイトルで、マイブームをはじめ「私」が最優先される価値観の解体が始まっている事を指摘してきた。当時私は次のようにブログに書いていた。
「『私生活主義人』ではなく、家庭人、社会人・日本人・地球人としての『個人主義者』へと向かわなければならない。・・・・私は既に価値のベクトルが『私生活主義』へと振れてきたことへの揺れ戻し、解体が始まっていると考えている。・・・・・・エゴとしての『私』から、多元的な価値を認め合う『個人』への脱皮が求められているのだ。・・・・・『私』に閉じこもった欲望物語は、既に壊れていることに多くの人は気づき始めていると思う。特に若い世代に感じることであるが、食欲、物欲、表現欲、・・・・生きる欲、多かれ少なかれ欲を持っているのが人間であるが、欲望そのものを喪失してしまっているのではないかと思うことがある。」
奇妙な話であるが、この欲望を喪失している若者を最近では「草食系男子」と呼んでいる。車離れ、結婚離れ、社会離れ、政治離れ、・・・・多くの「離れ現象」に「私」が表れている。しかし、リーマンショック=就職難、リストラ、賃金引き下げ、という現実も含め時間経過と共に「私」は「公」へと向かい、そうした意味で成熟した個人へと向かっていくと考えている。

停滞いや後退しているのはマスメディアであって、前回書いたが生活者は「意味ある消費」を探し、創り始めている。例えば、最近目にすることが多くなった商品にフェアトレード商品がある。発展途上国の産品を不当に安く買いたたくビジネスではないこと、適正な価格で継続的な購入を目的とした商品で、コーヒーなどに見受けられるビジネスの在り方である。アジアの最貧国といわれているバングラディシュに単身乗り込んで、バッグづくりという小さな産業起こしに悪戦苦闘しているマザーハウスの山口絵里子さんなんかもこうしたフェアトレード商品に近い考え方だ。あるいは、わけあり商品を広めた元祖スーパーのOKストアにおけるオネスト(正直)コンセプトにもつながる考え方の商品だ。勿論、前者の価格は少々高く、後者は低価格の「わけあり」という違いはあるが、共通している意味は「公正さ」であろう。こうした「公正さ」は、生産者・製造者と消費者との間に立つ流通が3者のコミュニケーションを重ね、適正価格を目指すケースが見られるようになった。ある意味、国や地域、業種・業態、作り手と享受者、こうした垣根を越えた共創、コラボレーションの進化系とでも呼び得る負担の分散ネットワークである。

ところで話は変わるが、「過去の中の未来」というタイトルで、思い出消費などを事例に挙げ、次の消費、未来消費について書いた事があった。この「消費」という言葉を「日本」に置き換えたようなTV番組がNHKによって放送された。いや、4/5に始まったばかりであるが、「プロジェクトJAPAN」という番組だ。マスメディアのていたらくばかりを書いてきた私であるが、好きであった「映像の世紀」以来のTVメディアならではのNHKによる日本論である。HPには「未来へのプレーバック」とあり、大きくはETV特集とNHKスペシャルの2番組を柱にした歴史ドキュメンタリーである。第一回のNHKスペシャル「アジアの一等国」という近代国家日本の「坂の上」を目指した台湾統治の歴史も良かった。亡くなられた異端の歴史家網野善彦さんとは、また異なるTVの持つ可能性を見せてくれると思う。薄っぺらな二次情報を加工するだけの民放番組と比べ物にならないクオリティを持っている。勿論NHKは営利企業ではないが、これも「意味ある番組=商品」と言えるであろう。

今消費を含め問われているのは、企業も消費者も等しく「コトの本質は何か」である。コトの本質、意味の外れた商品は市場から退出されていくであろう。どんなコトに意味を見出すか、異論反論百出するであろう。それが表面上は混乱に見えようとも、越えなければならない関門である。昨年、米国オバマ大統領候補の勝利宣言に触れて書いたが、過剰な消費文明にノン(否)といって生まれたのがLOHAS推進者であった。このLOHASの主要なメンバーの多くがオバマサポーターであり、今どんな「意味あるライフスタイル」を構築しようとしているのか、米国も日本も同じような新価値創造に向かっている。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:30│Comments(0)新市場創造
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