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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年08月20日

育てる顧客へ

ヒット商品応援団日記No292(毎週2回更新)  2008.8.20.

前回これからのライフスタイルの一つとしてロングライフ志向をテーマとした。成熟した時代の消費の一つとして、生活から余剰、過剰を取り去ることから始まり、取り去ってもなお残るもの、そうしたモノ達との暮らし・ロングライフ志向へと向かうと指摘した。使い込めば使い込むほど手に馴染む、着続ければ着続けるほど肌に身体にしっくりする、そうした考えをもって顧客自身が商品や企業を育てる方向に向かうということである。単なる消費というより、共に作り、共に消費するといった方が正確であろう。何でもかんでも興味関心のおもむくままに消費していた騎馬民族的生活から、半完成品を使い込み育てていくといった農耕民族的生活への転換ということだ。

以前から顧客が主役と言われてきたが、その主役が作り手へと進化してきたということである。こうした書き方をすると、「育てる顧客の組織化」のように矮小化してしまう間違いを起こしがちである。顧客は誰も組織化などされたがってはいない。「作り手」という出入り自由な場を創るだけである。一種の運動であり、顧客である作り手は、勝手に宣伝マンになったり、場合によっては売り手にすらなる。

数年前に指摘したことであるが、LOHASの失敗は「運動」としての組織、そうした視座を持たなかった点にある。LOHASを商標とし、参加企業からブランドロイヤリティをとることだけにしてしまったことが原因だ。運動の主体である顧客をLOHASを「育てる顧客」として位置づけなかったということである。勿論、運動を持続推進していくには資金が必要となり、ブランドロイラリティビジネスとしていくことも必要である。と同時に「作り手」としての顧客にも何らかの協力・負担をしてもらうことだ。LOHASという理念に集まった企業も、顧客も、それぞれがある意味「育てる投資」を分担し合うことが必要であった。

既に部分としてはこうした「動き」も出てきている。例えば、以前取り上げた日本の農業再生の道を海外に求め、量ではなく質で勝負しようとチャレンジしている新潟の米作農業内山農産なんかがあてはまる。有機栽培とはいえ、作られたお米はかなり高い価格だ。しかし、その価格を顧客はわかって、育てる投資として購入していると思う。あるいは京都の上田米穀店(http://uedabeikoku.shop-pro.jp/)では、米の「適正価格」とは何か、専業農家がつくる価値=価格はどのぐらいが適正かを確認し合うために、専業農家と消費者、上田米穀店が一緒になって完全無農薬の米づくり体験を実践している。これも日本の農業を育て、体験実感する中から適正価格を探す試みである。志しに共感し、それを実現するための3者によるコラボレーションという訳だ。

多くの偽装事件が続発する社会にあって、漠とした不安を解決するには、互いに信頼し合う関係づくりが不可欠となる。安心を得ようと、小さなコミュニティが至る所で創られている。会員、クラブ、SNS、・・・・多くのコミュニティが自己防衛策として創られてきた。それは安心を担保してきた集団である村落、家、会社、都市においてそれらは既に崩壊しているからだ。しかし、一方では内山農産や上田米穀店のように既成の流通から離れ、生産者、流通、顧客が互いに信頼し合うための動きも出てきている。信頼は互いに信用しないことから始まる。信用しないからこそシビアな観察者にもなるし、時には消費から生産現場へと足を運び体験実感もする。顧客を単に消費者としてだけ見るのではなく、協力・分担してくれる良きパートナーとして見ていくことが重要である。ロングライフを目指すとは、生産、流通、消費という各々の原点を共有し合うマーケティング、いや従来のマーケティングの概念を超えた新しいコラボレーションによる運動が必要ということだ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:51│Comments(0)新市場創造
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