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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年07月30日

「過去」の中の未来

ヒット商品応援団日記No287(毎週2回更新)  2008.7.30.

個人化が進行していくと、情報源であれ、体験であれ、全てが個人単位となる。個人単位の世界を広げるために、SNSといったネットワークや地域&クラブコミュニティに参加し、少しでも判断視野を広げようとしてきた。しかし、そうしたある意味興味関心領域の横への広がりと共に縦への遡及が始まっている。
昭和の時代ぐらいまでは「家」という社会単位で受け継がれてきた常識、やり方や方法に基づいて日常行動や消費が行われてきた。今、そうした過去の常識、例えば「家庭の味」とか「しきたり」「慣習」といったことへの遡及&見直しが始まっている。つまり、自分の中に、いつの間にか横から得た情報によって「作られてしまった」常識を見直してみようという気づきである。養老孟司さんがいみじくも「バカの壁」で指摘してくれたことを日常生活の中で立ち止まり考え直してみるということだ。

この気づきがいわゆる回帰現象といわれていることの本質である。既に、「和」回帰を始め、極論ではあるが「過去」あったものに「回帰」というキーワードをつければ、それはそれで一つの世界が出来上がってしまうほどである。例えば、時間軸から見ていくとブームとなった「昭和回帰」や「′70年代回帰」、あるいは最近ではライフスタイルの原型となっている「江戸回帰」といった具合である。数年前から静かなブームとなっている「土鍋」や昨年のヒット商品となった「ゆたんぽ」なんかもこうした時間着眼から生まれてきたものだ。更には近過去であれば「学校(給食)回帰」なんかも既に商品化されている。場所軸から見ていくと、ブームとなっている「京都や奈良観光」は「日本の歴史・文化回帰」ということである。あるいは生まれ育った「ふるさと回帰」、その先にあるのが古民家ブームとなる。更には、先日ブログにも書いた「ホームグランド回帰」なんかも入る。人間軸から見ていくと、既に失ってしまった革新(マインド)の代表と考えると「坂本龍馬回帰」となったり、固有の手技を今なお継承している「職人回帰」となる。最後にテーマ軸でいうと、個人化の進行によって壊れてしまった人間関係の絆を取り戻す「家族回帰」であったり、「コミュニティ回帰」となる。

簡単に図式化してしまうと、こうした「時」「場所」「人」「テーマ」に沿って、商品開発やサービス開発が行われ多くのヒット商品が生まれてきている。私はこうした過去へと遡る消費を「思い出消費」と名付けたが、こうした個人的体験世界から少しづつ社会へと広がりを見せ始めている。
「過去」は単に古いものとしてではなく、潜在的にはそこに未来を見出す行為としてある。意識されないまま眠っていた無意識が、何かのきっかけによって思い出され、結果思い出となる。その延長線上に消費がある。今、東京を始めライブハウスは団塊世代を中心に満杯である。かくいう私も同じであるが、過去のオールデーズを聞くことによって、青春という元気さに触発される。つまり青春フィードバックという元気の未来を見出しているのである。一方、若い世代にとっては、横のネットワークからは得られない未知の新しさを感じるものであり、まさにOLD NEW(古が新しい)という未来だ。

ちょうど7月28日付けの日経MJのテーマに「マイナー魚に商機の網」と題し、漁獲の内捨てられていた約30%のマイナー魚を活用することを指摘していた。年間1900万トン廃棄されていた食の再活用と同じ発想である。農産物における規格外商品、基準外商品を生かす発想とも同様だ。過去に遡れば、禅僧による精進料理があり、マイナー魚を使った「もどき料理」をつくればよいのだ。カタカナで言えば「フェイク食品」であり、「かにかま」といったヒット商品もでてきている世界だ。例えば、未だかってないが、魚加工メーカーと禅僧とのコラボ、精進料理家とのコラボによる新しい精進料理メニューの開発なんかが該当する。作り手側も過去に未来を見出すということだ。活用する魚の栄養素や精進料理法次第では、新しいメタボ食品が誕生するかもしれない。

日本には四季という言葉があるように、自然に寄り添って生きてきた歴史がある。自然は豊かな恵みをもたらしてくれるとともに、また畏怖すべきものでもある。これが「寄り添う」ということの意味だ。悲観も、楽観もすることはない。バブル崩壊以降、失われた10年と言われてきたが、そうではない。生活者も、作り手も、十分学習してきた。その学習のヒント、未来への芽が「過去」にあるということだ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:53│Comments(0)新市場創造
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