さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年07月23日

垣根をこえて

ヒット商品応援団日記No285(毎週2回更新)  2008.7.23.

ここ数ヶ月、ガソリンや輸入穀物の高騰、あるいは環境問題から生まれた多くの問題について書いてきたが、それら全てが次なるパラダイム(価値観)へのプロローグであるように思えてならない。私は一見停滞しているように見える情況を「時代の踊り場」と評してきたが、この踊り場で人は生活もしビジネスも動いている。このブログでもそうした新しい動き、変化を取り上げてきた。この1ヶ月半ほどガソリンや輸入穀物の高騰による「価格」に対する生活者の反応や行動をどう読み取るべきかといったテーマも書いてきた。もっと簡単に言ってしまえば、この景気後退局面はどのようにライフスタイルやビジネスを変えていくかであった。

以前、新しい市場はどこから生まれてくるか、このテーマについて「境界」に着眼ということに触れたことがあった。対立するもの同士、相容れないであろう異なる世界、といった一種の境界・区分を超えることによる市場化のことである。例えば、大企業と中小企業、産業と生活、文明と文化、行政と市民、企業とNPO、あるいは最近の環境問題で言えば文明と自然といった境界を超える試みである。今回のガソリン高騰では、車離れが進む中古車販売企業と廃業へと向かいつつあるGSとが新しいサービス業態づくりへとコラボレーションが始まっている。不況業種同士のコラボであるが、その新しい業態とは、中古車のレンタカーサービスをGSでも行うといった試みである。その試みが利用者を巻き込んでのカーシェアリングのようなシステムへと移行すれば、新しい市場として存続していくと思う。

あるいは幹線道路を走れば廃業したGSが至る所で目にするようになった。次のビジネスをどうすべきか検討している最中だと思うが、既にGS過疎地が生まれ、村民自ら出資し会社をつくり、SSを運営するところまで出てきた。医師不足・医療崩壊に対し、医師、住民、地元メディアが垣根を超えて結びつき、再生の緒についた兵庫丹波の柏原病院と同じである。
以前取り上げたことのある滋賀県のGS経営者青山さんの活動も同様だ。天ぷら油などの廃油を精製しバイオディーゼル燃料にして車の燃料にする試みである。青山さんの志しに応え、ヤマト運輸が家庭用の廃油回収を引き受け、松下電器の工場では作業車の燃料に使い、更に彦根市ではゴミ回収とともに廃油回収を行い、ゴミ回収車の燃料に使うという試みだ。小さなGS、大手企業、行政、勿論廃油回収に取り組む市民、なかなか結びつかなかった世界がつなぎ直され始めた良き事例である。

1人、1エリア、1企業、1国、だけで解決することの難しい時代に来たということだ。ある意味、「社会」という新しい概念が必要ということでもある。この概念は、境界をこえて、異なる人や企業、風土や慣習・文化までもがぶつかり・衝突し、そこからしか生まれてこない概念だ。境界はある意味法が及ばない脱法的世界という側面を持つ。既に平安時代にも、異なる人が行き交う市場には「不善のやから」が横行していた。欲望と欲望とがぶつかり合う混乱・カオスの世界でコントロールできないこともある。しかし、こうした中から新しい「何か」が生まれてきた。最近、社会起業、社会事業というキーワードを若い世代からよく聞く。先月訪れた沖縄の勉強会でもそうした人達ばかりであった。グラミン銀行の創始者であるアヌス氏が注目されてからということもあるが、問題を解決するには、どうしても「境界」をこえ新しい社会を目指したいということだと思う。

最近注目されている女性起業家に山口絵理子さんがいる。周知のようにアジア最貧国バングラディッシュで特産の麻を素材としたバッグを作り、販売している26歳の起業家である。その悪戦苦闘は「裸でも生きる」に書かれているが、彼女の前に立ちはだかっているのも様々な「境界」である。あるいは、後継者のいない農業にあって、米づくりの未来を考え、会社組織にし、通販ばかりでなく、海外へと輸出を試みる新潟内山農産を始め、旧来の「既成」という垣根をこえる人達がこの時代の踊り場へと出てきた。不安、不確かさ、といった悪い話ばかりがマスメディアを通じ報じられているが、次なるパラダイムを創る芽が確実に出てきている。(続く)

あなたにおススメの記事


同じカテゴリー(新市場創造)の記事画像
マーケティングノート(2)後半
マーケティングノート(2)
2023年ヒット商品版付を読み解く 
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半  
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半
春雑感  
同じカテゴリー(新市場創造)の記事
 マーケティングノート(2)後半 (2024-04-07 13:03)
 マーケティングノート(2) (2024-04-03 13:47)
 2023年ヒット商品版付を読み解く  (2023-12-23 13:34)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半   (2023-07-05 13:21)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半 (2023-07-02 14:15)
 春雑感   (2023-03-19 13:29)

Posted by ヒット商品応援団 at 13:54│Comments(0)新市場創造
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
垣根をこえて
    コメント(0)