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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年06月22日

文化型(蓄積)価値とコンビニ型(変化)価値

ヒット商品応援団日記No276(毎週2回更新)  2008.6.22.

ここ2週間ほどいくつかのブランドをテーマに挙げて、時代と向き合い、時代と呼吸するとはどんなことであったかスタディレポートの概略を書いてきた。ブランドが時代の変化と共にある、その意味合いを、時代が求める使用価値を超えた何か、付加価値などといった表層の価値と異なる何かを、理解いただけたと思う。そして、ブランドは顧客が育てるもので時間がかかるということも。今回取り上げたブランドは高額なインポートブランドであるが、日本経済と同様に低迷している。高額商品も等しく、時代の雰囲気は直接消費に反映される。従来からの富裕層と呼ばれる人達は、株式市場が世界的に低迷しているとはいえ、経済的には変わらず豊かであり、都市ばかりか地方にもいわゆる資産家は存在している。

以前にも少しふれたと思うが、行動経済学におけるプロスペクト理論では、人間が感じる感覚差(幸福感)を明らかにしている。その内容であるが、人間が気にする富の参照点(どこを参照して見るか)を設定し、それよりも上の富を所有する時の感覚の増大さよりも、参照点を下回る場合の減少の方が二倍以上大きいとされている。例えば、年収の平均を参照点と考えるならば、収入が平均以上の差を付けているという喜びよりも、差を付けられているという悔しさの方が二倍以上大きいという理論である。もっと分かりやすく例えると、「勝ち組」の喜びよりも、「負け組」の悔しさの方が感覚差として二倍以上大きいということだ。そして、私が指摘してきたようにバブル崩壊以降、それまで参照点という意識を無くしていた中流層の多くが下流層へと流れ込み、参照点を富の「平均」とするならば圧倒的に下回り、差をつけられているという感覚を持つ下流層が圧倒的に増大したということだ。これが時代の雰囲気を作っている。

勿論、参照点という視座は経済、富といったことばかりでなく、家族の幸福であるとか、生き甲斐であるといった非経済面での喜び・幸福感もある。情報の時代にあっては、どの市場を対象とするのか、顧客は誰かと共に、価値感覚として「何」を基準に見ているかを判断することが極めて重要な時代になったということだ。消費行動、特に日常においては明確に価格に関心が集まっているが、何故この価格なのかという背景を正直(オネスト)に情報公開しているOKストアを取り上げたのもこうした理由からだ。何故安いのか、何故高いのか、その理由を店頭で明確にすることが時代に沿った基準となり、顧客支持が集まっているということである。

ところでブランドの主要購買層である、従来の富裕層や新富裕層の独身キャリア女性・DINKS層の参照点・視座はどこに置いているかということだ。一つは「頑張った自分(達)へのご褒美」と「お気に入り」であると思っている。前者のヒット商品には定年後の夫婦向けの世界一周クルージングであったり、独身キャリア女性ではお一人様歓迎の「ヒトリッチ市場」なんかであろう。後者はやはりブランド市場ということになる。しかし、時代の雰囲気、格差感覚が充満する社会にあって、「喜び」心理は半減する。こうした格差感覚のある社会の解決には全体がよくならなければならないことは言うまでもない。

前回のロレックスのところでスオッチとブランド比較をした。顧客は何を見て価値としているかというと、ロレックスは文化価値(=アンティーク)であり、スオッチはデザイン価値(=変化・鮮度)であると指摘をした。前者を文化型商品、後者をコンビニ型商品と私は呼んだが、過剰な情報が行き交う時代にあってそうした価値を見出すには極めて難しい時代となっている。後者のようなトレンド型商品の場合は、極めて単純で「ランキング情報」もしくは「格付け情報」が物差しとなる。但し、ランキングNO1のみがベストセラーとなる。2位以下は物差しとはならず、多くのメーカーなどはNO1となるための話題づくりに投資するのである。過去サプライズというキーワードが流行ったが、これも過剰な情報時代に話題を集めNO1になるためだ。こうした消費、買われ方は変化・鮮度を求めるアパレルファッションのみならず、食品、化粧品、更には書籍まで幅広い市場が作られてきた。あまり、予測はしたくないが、飲食サービスにおいて使用牛肉はA5とかA4といった「格付け」が流行っているが、いつか産地偽装と同様に「格付け偽装」が始まる。

前者の文化型消費、キーワード的にいうと、「大人消費」へと全体が動いているのだが、まだ全体へと波及しているとは言い難い情況にある。こうした文化型消費はあまり話題になることもなく、顧客がブランドとして育てるという時間を必要とする買われ方である。ブランドは、時という顧客体験を経て磨かれ、そのエッセンスだけが残った、ある意味余計なものを削ぎ落とし、引き算に引き算を重ねなお残った価値である。だから高額なのだ。この文化というテーマは2年半ほど前から和回帰と共に過去へと遡っており、今日の「江戸ブーム」なんかもこうした潮流の中にあるものだ。恐らく、江戸のライフスタイルである粋や鯔背といったコンセプト&キーワードが新しいブランドづくりの着眼になったり、既存ブランドと江戸を継承する職人とのコラボレーションなんかも出てくると思う。奥行き、深み、味わい、こうした微妙な違いを楽しむ時代になるにはまだまだ時間を必要とする。しかし、確実に「大人の時代」へと向かっている。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 14:30│Comments(0)新市場創造
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