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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年01月27日

不信の増殖

ヒット商品応援団日記No236(毎週2回更新)  2008.1.27.

信用という見えざる資本が、食品偽装から株を始め世界の金融商品にまで毀損している時代となった。毀損などといった言葉で書くと他人事のように感じてしまうが、グローバリズムの波にもまれている日常生活が壊れ始めているということだ。昨年秋、サブプライムローンに関して書いたことがあったが、以降世界中至る所で信用から不信へと大きく振り子が振れている。

生活者視点での不信は、「見えない世界」であることと、「誰が損失=責任をとるのか不明確」であることに極まる。昨年、サブプライムローンによる損失はシティグループを始めとした大手金融機関は軒並み1兆円を超えると発表されていたが、2008年になり更に損失は膨らみシティグループは2兆4000億円もの損失になると発表された。更に、住宅ローンから一般のクレジットカードにまで飛び火し、信用収縮という貸し渋りが起きていると言う。住宅バブルではなく、アメリカンバブルへと向かっているということだ。格付け、保証、といった信用の仕組みが壊れ始めたということだ。

経済発展の歴史を辿ると、物と物との交換から、貨幣による流通を支えたのは「信用」であった。日本の場合は銭による全国レベルでの流通は13世紀後半からであるが、それ以前にも銭に替わる米、布、絹なども貨幣として使われていた。米に関しては11世紀には「替米(かえまい)」という為替手形が用いられており、物の調達や土地取得の支払い、交換手段に使われていた。勿論、国内ばかりか中国や朝鮮半島を含めた貿易など商業、金融業のネットワークができていた。この金融業に携わっていたのが、神人、山伏、山僧といった聖職者であった。神仏へ奉納される銭や米を資本に、出挙利銭という金融業が武力と神力を背景に営まれていた。これは網野史学によるが、元々中国の仕組みを律令国家の徴税の仕組みとして導入され、次第に商業等の発展に従い世俗社会にも広がっていく。この貨幣経済の発展には神仏の力=信用力が不可欠であったという。このことはヨーロッパでの資本主義の発展にプロテスタンティズムが深く関わっていたことと同じである。

ところで一昨年のノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行の無担保融資は、マイクロクレジットというユニークな「信用の仕組み」である。5人からなる互助グループが返済における連帯責任を負う仕組みで、返済率は98%を超える仕組みだ。融資を受けた5人は、その資金が有効に使われ成果が得られているか、相互にチェックし合い、サポートし合う仕組みである。5人という小さな単位であればこそ成立する保証の仕組みである。日本には同じような講という仕組みがあったが、今や沖縄に「模合い(もあい)」という仕組みしか残っていない。模合いというと学校や職場、地域、クラブなどで作る懇親会のように思われるが、マイクロクレジットまではいかないがビジネスにおける融資といった側面を併せもった小さな単位の信用保証の仕組みである。

私は金融のプロではないので分からないが、世界のGDPの約3倍のお金、1京6000兆円ものお金が動き回っている時代である。しかも資本主義の本質はあらゆるものを商品化し続けることにある。物ばかりか、情報も、企業も、人も限りなく商品として市場化していく。現代には神仏という聖なる力が無い時代であり、「信用」という一種のインフラを回復させていくには、小さな単位に戻すことが必要という感がしてならない。小さな単位とは、足下にあり、現実、実態に戻すことだと思う。また、情報偽装がいとも簡単にできる情報の時代であればこそ、情報公開の徹底、その透明性を追求し続けることが必要だ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:53│Comments(0)新市場創造
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