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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2007年12月19日

神の手と仏の手

ヒット商品応援団日記No228(毎週2回更新)  2007.12.19.

3年ほど前、どの病院でも断られ手術困難な患者を救う医師、「鍵穴手術」の考案者でもある脳神経外科医福島孝徳氏を「神の手」と呼ぶようになった。以降、テレビ東京による「主治医が見つかる診療所」や雑誌で紹介され「神の手」を持つ名医が広く知られるようになった。最近では、再生医療を大きく前進させるであろう「万能細胞(iPS細胞)」を創ることに成功した京都大学の山中伸弥教授なんかも神の手を持つ研究者の一人であろう。こうした医療の分野だけでなく、周知の小さな町東京大田区の町工場にもロケット部品を作る神の手を持つ技能者はいる。更に言えば、日本文化の伝承者にはこうした「神の手」と呼ぶにふさわしい高度な技能者、匠は極めて多い。

今東京大田区の町工場には若い女性達が技能を身につけたいと就職希望者が出て来た。私が好きな沖縄にも紅型を学びに単身で移住する女性も多い。あるいはWeb2.0を提唱する梅田望夫さんは、IT技術者の精神のふるさとシリコンバレーに1万人の若者を移住させようと活動している。若者ばかりか、町工場で培った技能を中国や東南アジアで自ら働き、伝える中高年も多い。ビジネスの師P.ドラッカーも言うように、ビジネス世界は全て徒弟制度である。若い人は「神の手」を学び修行し、技能を持つ人はその技能を伝承する。

「神の手」と呼ばれる福島孝徳医師は、そう呼ばれることに対し「神の手をもつ医師ではない、いつも手術前には神様に成功を祈っている」と答えている。病気を治す「神の手」という卓越した技能と共に、患者と向き合い対話する「仏の手」を持っている方だと思う。梅田望夫さんは一つの「生き方論」として「ウェブは『志』『志向性』の核さえあればどこへでもいける」(「ウェブ時代をゆく」ちくま新書)と言う。そのために「新しい強さ」を身につけよう」と呼びかけ、自ら「高速道路」を走ることなく、「けもの道」を選んでいる。ある意味「仏の手」をもって呼びかけていると言えよう。東京大田区の町工場の代表がインタビューに答えて「技能は後からでもいい。まず挨拶、礼儀から。心が一流であって欲しい」という言葉にもつながる世界である。神の手を匠の技、プロの手、あるいは高度な技術と呼んでもかまわない。仏の手を他者への優しさ、愛情、あるいは生きざまと呼んでもかまわない。いづれにせよ、神の手と仏の手は一枚のコインの表と裏だ。

今年の「新語・流行語大賞」に引き続き、恒例の世相を表す漢字「偽」が京都清水寺から発表された。ちょうど一年前、私はこのブログで2007年はポリシーの時代になると、願望を込めて書いた。高い志しに多くの支持が集まる時代にという意味であったが、「発掘!あるある大辞典」から始まった「偽」は、2007年を終えようとする12月には船場吉兆のあざとい「偽」で終えた。「志し」の一年でという思いとは全く逆の年となった。
ところで「偽」の反対語は「真」という言葉であるが、2つを合わせると「真偽」という言葉になる。それは正しいことなのか、いや偽りなのか、と言った具合に使われる二項軸の考え方である。ところで多値論理という論理学がある。真と偽の他に多数の値があるのではという論理学だ。つまり、「曖昧さ」を認める考え方と言って良いと思う。コンピュータのように0と1で物事を決めていくのではなく、真ん中も良いではないか、ファジーを一つの価値としていく世界である。ある意味直感もこうした価値の一つであろう。過剰情報の中にあって、全てが真偽混在、混沌としている時代にいる。

食品偽装・偽造に関し、このブログでも書いたことがある。日本の精進料理はその戒律から多くの「もどき食品」で成り立っていると。カニもどき食品としては、あの「かにかま」というヒット商品すら生まれている。居酒屋などで使われているさいころステーキの多くは「成型肉」である。「もどき」を作る技術は、ある意味「神の手」と言えなくはない。決定的に失ってしまったのが「仏の手」だ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:49│Comments(0)新市場創造
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