さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2007年03月23日

無菌社会 

ヒット商品応援団日記No151(毎週2回更新)  2007.3.23.

トイレのウオシュレットは世界に誇れる日本が作った革命的商品の一つであるが、そのトイレも更に進化している。今から10数年前、サービス化の第一歩はトイレを清潔&快適にすることからと多くの商業施設のトイレが変わり始めた。当時は「パウダールーム」と呼び、ゆっくりとお化粧を直せる空間にしようと、差別化のシンボルのように次から次へとリニューアルしてきた。最近ではこれがトイレかと思うようなゴージャスなトイレや、以前は忌み嫌われた公衆トイレも見違えるようにきれいになった。こうした清潔&快適なトイレにあって、「和式トイレ」の希望者は17%いて、「他人が使った便器に直接肌に触れたくない」というのがその理由である。こうした背景には、鳥インフルエンザ、ノロウイルス、といった細菌、見えないものへの恐怖がある。インフルエンザウイルスに対する特効薬タミフルへの不信も、「見えないもの」への恐怖の一つであろう。

今年も花粉症のピークを過ぎようとしているが、ぜんそく、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎といった広義の「アレルギー」患者は増加している。全て免疫反応によるものであるが、花粉症などの原因研究では中国からの黄砂も一因であると考えられている。また、子供の沢山いる大家族と子供が一人のような小家族との比較研究では、圧倒的に大家族の場合の方がアレルギーが少ないと言われている。つまり、大家族の場合は雑菌との「感染機会」が多く、それだけ抵抗力が備わるからというのがその理由である。そうした研究結果を見るまでもなく、戦後間もない頃は全てが「雑菌状態」であった。アレルギーが文明病、現代病と言われるのもうなづける話だ。抗菌、殺菌、といった機能は便座トイレばかりか、あらゆる道具の基本条件となり、今後も不可欠なものとなっていく。

近代化によって生まれた社会を「無菌社会」と私は呼んでいるが、身体ばかりかこころまで無菌化が進んでいると思う。誰もが感じることだが、こころの無菌化による最大の問題が「いじめ」だと思う。「私生活」という無菌箱の中で孵化した子供達は勿論雑菌に弱い。昨年話題となったキッザニアのように、「社会体験」、抵抗力をつける疑似体験が必要な時代となっている。以前取り上げた、田舎専門旅行代理店の「つばさツーリスト」(http://www.e-toko.com/)がプロジェクトとして次の段階へと進んで来ている。ここでは都市生活者が失ってしまった「体験」、以前であればどの家庭でもごく普通に行われていた生活体験をツアーメニューにしている。HPを見ていただくと分かるが、もはや旅行代理店ではなくなっている。「田舎体験」プロデュース会社と言った方が正確である。しかも、プロジェクトとして周辺の人達とネットワークを組んで「ダッシュ村」のような古民家づくりまで始めている。

こうした体験社会はあらゆる分野で取り入れられていくであろう。デジタル社会が進めば進むほどバーチャルとのバランスを「体験世界」が取ることとなる。こころの無菌状態に対し、こころの体験もまた必要となる。
異端の歴史学者網野善彦さんは、歴史の高校教師をしていた時、生徒から次のような質問を受けたという。「何故、平安末期から鎌倉時代にかけてのみ、優れた宗教家が出たのか?」網野さんは一言も答えられず、その後民俗学という歴史学とは異なる視座をもって解き明かしていくこととなる。その結論は、従来の自給自足的農業社会から商業など専門分野が生まれ発展し全国へと流通していく、大きなパラダイムチェンジがこの時代であった。ある意味異なる価値観が衝突し、精神の荒廃等カオスの時代に、親鸞、一遍、日蓮といった宗教家が生まれたと。
丁度1990年代の半ば以降、現代日本も同じようなこころのカオスの中にいる。オオム真理教のような妖怪も生まれたが、宗教の時代に入って来た。既成宗教への注目もあるが、例えば山岳信仰の地、熊野古道や鳥取三徳山三佛寺といった未知のところに注目が集まる。禅への関心も高まるであろうし、寺の宿坊に泊まるといったツアーが隠れたブームになる。こころの癒しから、未知なる心の体験世界へと一歩踏み出していく。(続く)

あなたにおススメの記事

同じカテゴリー(新市場創造)の記事画像
マーケティングノート(2)後半
マーケティングノート(2)
2023年ヒット商品版付を読み解く 
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半  
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半
春雑感  
同じカテゴリー(新市場創造)の記事
 マーケティングノート(2)後半 (2024-04-07 13:03)
 マーケティングノート(2) (2024-04-03 13:47)
 2023年ヒット商品版付を読み解く  (2023-12-23 13:34)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半   (2023-07-05 13:21)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半 (2023-07-02 14:15)
 春雑感   (2023-03-19 13:29)

Posted by ヒット商品応援団 at 13:40│Comments(0)新市場創造
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
無菌社会 
    コメント(0)