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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2007年02月04日

和ブームの本質

ヒット商品応援団日記No137(毎週2回更新)  2007.2.4.

日本映画の興行収入が21年ぶりに洋画を上回った。シネコンが普及し、周防監督の映画のように小劇場で観るにふさわしい映画が生まれ育って来たのだと思う。また京都ブームは続き、今年度は観光客数5000万人を目指すと聞いている。食の分野においても健康志向の延長線上で玄米や雑穀米の人気も定着し始めている。住宅においても和のインテリアだけにとどまらず、和室を組み込んだ住まいも定着し始めている。いわゆる和ブームのモノやサービスは好調であるが、どこかチョット違うなという感じがしている。

今、東京郊外の河川で蛍の再生に取り組んでいる人やプロジェクトがいる。銀座のビルの屋上でミツバチを飼って蜂蜜づくりをしている人達もいる。東京都の小中学校の校庭の芝生化も始まっている。自然との共生、取り戻しであるが、江戸時代の人達はどうであったのだろうか。江戸も中期になると都市化してくる。自然を生活に取り入れる風物詩、朝顔などの園芸と共に「虫聞き」が盛んであった。鈴虫、こおろぎ、蛍、といった「虫売り」は6月位から始まり、お盆の頃まで売っていたと言う。既に、江戸の中心部には虫が生息する自然は無く、武蔵野あたりで人工的に孵化させた虫を売り歩いていた。今日の百貨店でかぶとむしやクワガタが売られるようなものである。ただ、今日と江戸時代の違いは、売れ残った虫を「放生会(ほうじょうえ)」といって野に返していたことである。命あるものを野に返し、後生を願うといった、自然との共生認識である。この認識は自分が死後虫に生まれ変わるかもしれないという認識を踏まえた「放生会」であったということだ。こうした死生観、自然観に裏打ちされた共生であった。

江戸時代の基幹交通は水上交通であったが、治安も良くなり道路も次第に整備され、五街道が一般庶民でも旅として使えるようになる。ヨーロッパの街道が軍隊によって開発整備されたのに対し、江戸時代の街道は商人、商道として開発された。江戸中期の「お伊勢参り」は一生のうち一回は行きたい旅として大ブームとなる。身の回りの世話をするお供をつれた豪勢な旅もあったが、ヒッチハイクのような宿場で働きながらの旅もあった。日本の人口が約3000万人の時代にお伊勢参りには500万人が行ったという。平和な時代の象徴が旅であり、通行手形も町役人や場合によっては大家が発行していた。今日のパスポートであるが、そこには「もし亡くなったら亡骸を送り返す必要はない」との一文が書かれていた。良い意味での自己責任が徹底していた。前回、「浮世」というキーワードについて書いたが、この世は苦しくもあり、楽しくもあり、一生物見遊山という人生観における自己責任である。モノの所有、例えば財産を作ることにエネルギーを費やすのではなく、人生という「時間」を楽しむ価値観を第一とし、旅はそのさえたるものであった。昨今、言われている「時間消費型マーチャンダイジング」と同じである。

現在の和ブームは、雰囲気が好きとか興味があるといった「入り口」段階である。「洋」一辺倒であったライフスタイルから、「違い」を求めたり、「変化」を求めるといった入り口だ。江戸のライフスタイルと比較をしてきたが、現在の和ブームはまだまだ表層をなぞっているだけで「和」の本質にはたどり着いてはいない。「方言と標準語」でも書いたが、日本文化の固有性への理解は難しい。ひらがな、カタカナ、漢字、しかも音と訓がある言語をもつ民族は世界で日本だけである。米国にはまがい物の店も含めてであるが、日本食レストランは2005年度の統計で約9000店もあり、世界の目は日本に注がれている。しかし、残念ながら日本人だけが日本文化に対し無自覚であった。今、やっと入り口にたどり着いた訳であり、これからが本格的な「和」のビジネスが生まれてくる。京都・奈良の観光も団塊世代にとって「思い出旅行」として一度は行くこととなるが、寺社仏閣的観光では「和」にはたどり着けない。今、京都では路地裏観光が盛んであると友人から聞いているが、京都は路地裏の一般庶民の生活の中に「和」が残されている唯一の都市だ。これからは和の生活文化に向かうことになる。しかし、マクロビオテクスのように「理屈」を食べても楽しくはないのと同じように、和の文化の理屈を提供することではない。今なお生活歳時の中に残っている四季という自然観や死生観、人生観をどのように感じ取ってもらうかがポイントとなる。例えば、懐石料理ではなく、おばんざいの中に着目すべき和の知恵と工夫を見ていくことだ。自分の生活の中に取り入れやすく継続できる、日常的で小さなものが「和」の本質へとつながっていく。キーワードとして言うと「生活文化体験」となる。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:29│Comments(0)新市場創造
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