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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2006年10月04日

デザインが変わる 

ヒット商品応援団日記No104(毎週2回更新)  2006.10,4,

サプライズの時代は終わったと書いたが、サプライズを生んだ「情報競争時代」が終わった訳ではない。劇場型、つまりメディア型発想が終わったということでもない。これからも情報競争は続くし、あらゆるものが情報発信していくというメディアの時代が変わる訳でもない。つまり、天野祐吉さん流に言うと「猫だまし」的手法については、この1〜2年十分学習してきた上での情報競争ということである。学習を積んだ生活者に対し、さてどんなコミュニケーションが必要とされていくのか、これが今回のスタディテーマである。古くから情報伝達の70%は視覚によるものであると言われてきた。そして、情報発信という視点に立てば、あらゆるものがメディアとなる時代にいる。街もメディアとなり、人も、店も、商品も、勿論通信メディアも視覚を最重要視して進んできた。そして、ここ数年どれだけ強く、惹きつけるビジュアルを創造できるかが、スピードを第一の眼目とした競争に勝つための入り口となった。また、使いやすく、しかも記憶の底に残るように、ことばも徹底して圧縮された。ティーンの間でかわされる携帯コミュニケーションは絵文字となり、叔父さん族には解読不可能なものとなっている。

さて、絵文字は別にして、デザインが、というよりコミュニケーションが市場を創っていく上で極めて重要な時代になった。デザインマーケティング、つまり新しい考え方に基づいたデザインコミュニケーションによるマーケティングである。「新しい考え方」とは、今や普通のことばになったが私たちはコンセプトと呼んでいる世界である。一つの商品をどう見ていくのか、あれもこれも良さはあるが、一つひとつ削ぎ落とし、たった一つのメッセージで魅力的(=アイディアのある)に表現したらどうなるのか、これがコンセプトワークである。1万の文字数を1000に、100に、たった一言で魅力あるメッセージにすること。これはビジュアルにしても同様で、たった1枚で表現したらである。このことは単純に圧縮すれば良い訳ではない。たった一言、たった一枚の絵とは、伝えたいメッセージの背景となる状況、大きくは時代の雰囲気や置かれている商品の状況を踏まえた、他には無いコミュニケーションの「創造」となる。
今、一番人気のあるアートディレクター、クリエイティブディレクターの一人である佐藤可士和さんが糸井重里さんとの対談(http://www.1101.com/design/)で、このコンセプトワーク・デザインワークのあり方を分かりやすく説明している。この対談にあるように、今佐藤可士和さんは幼稚園を創っているという。対談にも出ているが、幼稚園は子供にとって極まるところ「遊び場」であって欲しいと言っている。これがコンセプトである。絵や設計図は見られないが、幼稚園としての機能や場があるとは思うが、大人が考える世界ではなく、子供によって創られる遊び場になると思う。例えば、建物の屋根は雨や風、寒さを防ぐ機能であるが、子供に取って遊び場としての屋根はどうなるであろうか、という発想である。

ところで、ここ数年で薄型テレビが更に大きく画質も極めて鮮明になり、現実世界に近づきつつある。従来の仮想現実としての世界であったメディア、テレビ番組、広告などの創り方が大きく変わっていくような気がしてならない。周知のCNNが24時間、世界中のあらゆるところから情報を発信し、このスピード、同時性が今や当たり前となった。日本においてはブログが1000万を超え、玉石混合ではあるが情報発信の主要なメディアとなった。光ファイバーの普及を考えていくと、ブログを入り口に個人放送局が続々と誕生していくと思う。こうした個人単位のメディアがメディアとしての情報発信性を強めていく時、既存のメディアも変容を促されると思う。金沢21世紀美術館の成功も、現代アートの展示から子供の遊び場へと考え方を変えたことにある。旭山動物園の成功も、珍しい動物を集めてくることから動物が本来もっている行動展示(=野生の展示)という考え方に変えたことにある。佐藤可士和さんによる幼稚園もおそらくそうした新しい考え方によって作られていくと思う。時代が大きく変わろうとしている今、こうした新しい考え方による新しいデザインコミュニケーションが生まれてくる。

さて、その新しい考え方であるが、前回の「ライフトレンドの今」で書いたように和と北欧から生まれてくるような気がしている。最近のライフスタイル傾向、CiBONEにも見られるデザイン傾向、勿論北欧の家具もそうであるが、その美的感性方向を分析していくと、まさしく「引き算の創造」が既に生活者の生活の中に現れてきていると思う。それは、ミニマリズム、削ぎ落とし、ピュア・・・・・・「引き算の美学」である。こうしたミニマリズムをバックグランドにして、特に「時間が育ててきたもの」「老練な技」 「今は昔」、「アナログの素晴らしさ」、「手技」、つまり20世紀の合理主義によって失われたものの回復を目指しているように見える。そして、この引き算創造の源泉に日本と北欧があるというのが私の仮説である。「木」の文化、「職人」の文化といった精神性は北欧と日本は共通しており、今後の世界潮流の一つとなると思う。若い女性に人気のアパレルデザイナーである「ミナ」の皆川明さんのデザインを見てもそうであるし、京都の古い町家に住みたいと京阪神に仕事の場を移す若い世代が増えている。このように次のデザイン潮流の芽が出てきていると思うが、皆さんはどう感じているだろうか。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:49│Comments(0)新市場創造
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