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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2006年10月25日

コミュニティ再生への視座 

 ヒット商品応援団日記No110(毎週2回更新)  2006.10,25,

2006年のノーベル平和賞を、貧困撲滅に尽力したバングラデシュの経済学者、ムハマド・ユヌスさんと同氏が創設したグラミン(村落)銀行に授与すると発表したことは周知のことと思う。ニュースでは、受賞理由として「ユヌスさんは1983年、バングラデシュで貧困にあえぐ農村女性らを対象に無担保小口融資を実施する同銀行を設立。融資を受けた女性らが、工夫をしながら新たな収入源などを確保し、返済を実現。グラミン銀行の手法は、マイクロ・クレジットとして世界各国に広がった」と報じた。実はこのニュースを聞いた数日後に好きな沖縄に出かけ、訪沖の理由の一つであるライブハウスで面白い光景を目の当たりにした。それは、「もあい」(模合)と呼ばれる無尽、講の一つが、そのライブハウスで行われていたからである。同級生や親族、地域の仲間、経営仲間といった小さな単位のメンバーが親睦や助け合いを目的に定額のお金を積み立てて順番に飲み代や旅行、場合によっては資金繰りにも使われる金融の仕組みである。沖縄には未だこんな金融の仕組みが日常化していることに少々驚いた。今国会で論議されている消費者金融に関するあり方とは特例措置が撤回される方向に進んではいるものの、全く逆の助け合いの仕組みが沖縄には生きているのである。私は金融のプロではないが、もあいもマイクロ・クレジットもその仕組みの背景にある精神は同じだと思う。

5月2日の「家族のゆくえ」で個人化の進行に伴う多くの問題点と解決の芽についてふれた。家族という単位が崩壊し、最小単位の個人が社会の単位となった時代についてである。そして、バラバラとなった個人を今一度つなぎ直す試みが始まっており、そうした試みの総称として「コミュニティの再生」というキーワードが使われている。別の視点からいうと、唾棄すべきは過去にあり、過去を振り返るな、と言ってきた「考え方」の見直しと見るべきであろう。例えば、村落共同体、家制度は家父長制という封建制度の名残である、と全てを否定してきたのが戦後60年であった。しかし、子育て一つとってみても、祖母の手や目を、あるいはご近所の人たちの力を借りて育ててきた訳であり、若い母親にとって決定的に足りないのは経験であった。今、ららぽーと豊洲のキッザニアに注目が集まっているが、仕事という社会を幼い時から経験させたいとする思いから若いお母さんと子供たちで一杯である。別な視点で言えば、家あるいは社会という経験をサポートしてくれる「世間」が既にないという事実であろう。そうした世間を作ろうと、コミュニティ再生の一つである住居、住まい方として、英国を発祥の地としているコモンランドという考え方を導入しているところがある。コモンランドとは小さな公園・広場という意味で、その公園を囲むように住居を配置した暮らし方で、子供の遊び場である公園を互いにご近所が見守るようなかたちとなっている。この考えを導入しているのが、福島県伊達町諏訪野であるが、出生率は高いと言われている。こうした例を見るまでもなく、沖縄の離島を始め大家族世帯の多い地域では出生率は高く、東京目黒の出生率は全国最低の率である。あまり論議されていないが、少子化という課題についても、コミュニティという視座が必要であることは言うまでもない。

私はコミュニティ再生によって新たな市場が生まれてくるとこのブログでも書いてきた。都市が失ってしまったものの回復に最大の市場機会がある。今注目されているキッザニアに「社会体験」があるように、社会システムを変えていく入り口にある「体験」がこの時代のキーワードとなっている。失ってしまった自然の体験、野生の体験、それは農業だけでなく、漁業にも当てはまる「社会体験」である。農家にとって重労働である稲刈りばかりか、薪割りや雑草取りですら有料の体験観光(つばさツーリスト:http://www.e-toko.com/)になる時代である。農家や漁師の家の普通の家庭料理が身体によく、しかも美味しい料理観光になる時代である。それほど失われたものが大きくなっているということだ。このブログでも以前取り上げた金沢21世紀美術館の成功も、現代アートというテーマを子供たちの遊びという良き「文化体験」を提供しているからである。私の持論であるが、体験すべきは「自然・健康」「家族・関係」「歴史・文化」である。団塊世代が第二の人生をスタートさせる2007年、次代への継承という意味を含め、この「体験市場」は大きく顕在化する。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 14:02│Comments(0)新市場創造
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