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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2018年12月09日

2018年ヒット商品番付を読み解く   

ヒット商品応援団日記No726(毎週更新) 2018.12.9.

今年もまた日経MJによるヒット商品番付が発表された。昨年2017年はこれといったヒット商品はなく、今年もまたヒット商品は少ない。ここ数年なぜ少ないかが「読み解く」中心テーマとなる。以下が2018年の主要なヒット商品番付である。

東横綱 安室奈美恵 、 西横綱 TikTok 
大関 スマホペイ  、  大関 サブスクリプション
張出大関 羽生結弦  、  張出大関 大坂なおみ
関脇 キリンビール本麒麟  、 関脇 ゾゾスーツ
小結 Vチューバー、  小結 eスポーツ

東横綱に安室奈美恵が入ったが、沖縄での引退ライブを始め多くの話題を集めた。それは平成という時代を駆け抜けたミュージシャンとして、時代の終わりを実感させるものであった。前頭にはDA PUMPの「U.S.A.」が入っており、90年代に流行ったユーロビートをベースにしたものである。つまり、平成最後の年ということで、いささか結論ありきの番付編集の感がしてならないが、そうした時代感が番付に出たことは事実である。
ところで西横綱にTikTokが入ったきたが、その撮影編集が簡単であることや15秒というショートムービーということから既存のSNSを超えた動画コミュニティサービスとなっている。ほとんどのユーザーは10代が中心となっているが、1億3000万人を超えたと言われている。Yutubeやインスタグラムの次のSNSということで根底には「承認欲求」を満たすコミュニティサイトであるが、そうした中から新しいアーチストもまた生まれてくる可能性はある。しかし、一方では俗悪な動画が投稿されることもあり、ネット社会における表裏が内在していることは認識しなければならない。
ところで今話題のスマホ世界シェア2位のファーウエイだけでなく、TikTok もまた中国企業であり、身近なところでも米中のIT関連産業の覇権争いが起こっているということを実感させる。そして、こうした「競争」によって、これからも日本国内におけるヒット商品としても現れてくることは間違いない。特に来年にはスマホは5Gの時代がやってくる。米中対立の中のヒット商品争いということだ。

そのスマホ関連でいうと、大関にスマホペイが入ってきている。いわゆるバーコードやQRコードを使った決済方法であるが、確かに遅れている日本もやっとこうした時代がやってきたということであろう。この決済方法も中国では露天商ですら行われており、やっと一周遅れで始まったということだ。
もう一つ大関に入ってきたのがサブスクリプションで、リピート狙いのお得な使い放題定額システムで、動画配信から町のコーヒーショップまで幅広く取り入れられてきている。これも一つのヘビーユーザー作り法の一つである。ただこの2つの大関を見てもわかるようなこれが「大崎」に値するヒット商品かというと、それほどでもないと思うがどうであろうか。
東西の張出大関には羽生結弦と大坂なおみが入っているが、スポーツイベントの世界では当然であると思う。そして、多くの人の関心事をさらに高めたのは羽生結弦の場合は怪我を押しての平昌オリンピック優勝であったこと 、大坂なおみの場合は対戦相手もさることながら圧倒的なアウエイの中での全米オープン優勝、共に「ドラマ」があったことによる。ある意味スポーツならではの「感」が揺さぶられるドラマであるが、番付に入ったヒット商品の中では特筆すべきものとしてある。

関脇にはキリンビールの本麒麟が入っており、アルコール度数が6%と高い第三のビールである。数年前からのストロング系アルコール飲料の延長線上にあるビールだが、3月に発売され3億本を超えるヒット商品となっている。安くて酔える飲料の傾向はこれからも続くということだ。関脇にはゾゾスーツが入ったが、3次元の立体画像に基づくサイズ確認はサービス向上にはなっているが、他のアパレルメーカーでも行われ特筆されることはなくなる昨年にもZOZOが番付に入ったが、これは若い女性を惹きつけるUA(ユナイテッドアロー)などのブランドをサイトに取り入れたことによるもので、課題は次なるブランド開発ということで、関脇という番付には疑問の残るものである。

小結には Vチューバーとeスポーツが入っているが、これが小結という一つの大きな市場を形成しているとは思えない。後に指摘をするが特定の市場においてである。そうした意味で「消費」が広がることはなく、ひいては社会に何らかの影響を与えるものではない。

このように疑問に思えるような番付であると指摘をしたが、発表の少し前に第35回となるユーキャン新語・流行語大賞が発表された。周知のように大賞は平昌オリンピックにおけるカーリング女子代表の「そだねー」であった。新語・流行語大賞はその狙いとして、「世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた言葉」である。オリンピックは多く人が関心を持ち、感動させてくれるイベントで「そだねー」が対象に入ったことは理解できる。ただ発表後審査員の一人である俵万智さんがインタビューでいみじくも答えていたように、「広く大衆の」といった流行ではなく、狭い特定の人たちだけの流行語が年々多くなってきており、審査は難しかったと。ちなみに受賞した流行語は以下の通りである。
・そだねー(年間大賞) ・eスポーツ ・(大迫)半端ないって ・おっさんずラブ ・ご飯論法 ・災害級の暑さ ・スーパーボランティア ・奈良判定 ・ボーっと生きてんじゃねーよ! ・#MeToo

例えば、「おっさんずラブ」はテレビ朝日系連続ドラマとして放送されたテレビドラマである。スタート時7話の平均視聴率は約4%で、失敗作と言われる数字であったが、小さなブームになったのはコアな視聴者、いわゆるリピーターを獲得したからであった。あるいは、「ご飯論法」は国会答弁などのすり替え答弁に使われ、新聞紙上ではよく使われた言葉である。例えば、”朝、ご飯は食べましたか?”の質問に”食べていません”と答えるが、更に質問を続けていくと”朝はパンを食べたので、ご飯は食べていない”といったすり替え論議を指す言葉である。こうした言葉は新聞をよく読む、政治論議に関心のある特定の社会集団の言葉としては認識されているが、果たして広く認知理解され共有されているかといえばそうとは言えない。

2007年の流行語大賞の一つに選ばれたものの中にKY語(空気が読めない)があった。その発生源は高校生で、コミュニケーションスピードを上げるために圧縮・簡略化してきたと考えられている。以降、こうしたコミュニケーションが実は社会に広がりしかも常態化している。高校生ばかりか、大の大人までもが「仲間内」の間略語となっているということである。つまり、小さな社会集団における一種の記号として流通しているということだ。この記号としての「しるし」と「意味」との間には自然的関係、内在的関係はない。例えば、当時流行ったKY語におけるCB(超微妙)というKY語を見れば歴然である。仲間内でそのように取り決めただけである。記号の本質は絵文字と同様で、「あいまい」というより、一種の「でたらめさ」と言った方が分かりやすい。つまり、そんな社会になりつつあるということだ。
何故こうしたコミュニケーションが社会へと一般化したのかは、ブログにも何回も書いてきたが、やはり個人化社会が広く深く浸透してきたからに他ならない。バラバラになった個人は居場所を求めて「何か」が起こるであろう場所に向かう。渋谷のスクランブル交差点における騒動も居場所探しという承認欲求から生まれたということである。そして、渋谷のスクランブル交差点は常設の劇場・舞台になったということである。

さて本題に戻るが、この個人化社会の進行は「市場」をどんどん小さな単位にしていく。消費という視点から見ていくと、大衆(マス)から分衆・小衆へ、そして地域や家族といったコミュニティの崩壊と共に社会集団の細分化が起こり、「仲間内」という市場へと向かう。消費という視点に立てば、仲間内から生まれてきたのは、例えば「ママ友」+「クックパッド」による「おにぎらず」といったヒット商品であり、今回番付の前頭に入っている「サバ缶」にもそのアイディア溢れる利用法などにもつながっている。一方では1本1000円前後の高級食パンも前頭に入っているが、ブランド米と同じで日常の食には少しだけ贅沢したいという基本欲求の市場であり、安い「サバ缶」と矛盾するわけではない。つまり、どんどん市場の単位は小さくなっていくということである。

ここ数年時代の変化を求めて「街歩き」をし、その観察レポートを未来塾としてまとめてきた。その特徴の一つは「賑わい」の変容で、賑わいのある街や店に共通して求められているのが「居場所」である。それは場所ではなく、居場所としてで「一人の場合」と「仲間内の場合」とに分かれる。
さて、こうした小さな市場をどのように探し、そこで求められている「何か」を創造していくかである。そのヒントとしては少し前の未来塾「コンセプト再考」で取り上げた「ウオークマンプラス」にその着眼は出ている。今回の番付にも前頭にランクされているが、作業着からカジュアルな街着への転換は、実はその着眼の背景にはバイクライダー需要の急増があった。防水・防風・防寒といった高機能なウインドブレーカーとして、バイクライダーばかりでなく、アウトドア着や街着にも使えると需要が拡大した事例である。私の言葉で言うと、「顧客から教えられた市場」と言うことだ。今回のヒット商品番付を見てもわかるように大きな消費傾向もなく、一種バラバラ状態である。こうした小さな市場にあっては素直に顧客の声に従うのも一つの方法だ。そして、このように多様化した市場にあっては、まず小さくトライしてどんな居場所で何が求められているかを見出すことだ。(続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:38Comments(0)新市場創造