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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2018年10月22日

第二次巣ごもり消費時代へ 

ヒット商品応援団日記No724(毎週更新) 2018.10.22.

来年10月に予定されている消費税10%導入の議論が始まった。消費増税は低所得者への負担が大きいため、生活必需品などについては除外して税率を下げる軽減税率が論議の中心となっている。その生活必需品の線引きはどうかということである。既に財務省からその線引きの概要について発表されている。軽減される対象品目として、酒類や外食を除く飲食料品全般と定期購読される新聞(週2回以上発行)で、消費税率引き上げ後も現在の8%のまま据え置かれるというものだ。

さてそこで問題なのが「線引き」が明確にできないということにある。例えば、弁当のテイクアウトは8%に据え置かれるが、イートインであれば飲食店と同じように10%になるという。いわゆる一物二価であるが、実はテイクアウトもイートインも境目のない時代に向かっており、消費場所で一物二価を決めるやり方は問題となる。顧客全員にレジ前で「店内で食べますか、それとも持ち帰りですか」と質問をすること。更に8%と10%の2種類のレジを使い分ける。もし、顧客が気が変わって店内で食べたいとレジ終了後申し出たらどうなるのか。レジはできる限り早くスムースに行うことが小売りの鉄則となっており、行列などあり得ない。今、レジを無人化する試みが始まっているが、8%と10%の2種類のバーコードによって可能ではあるが、そんなコストは食品の場合かけることはできない。アパレルなどの単価の高い品目は実施されつつあるが。つまり、「税」は公平であり、わかりやすいことが大前提である。煩わしい手間をどれだけ省くかが流通業を始め顧客接点を持つ事業者に課せられた課題となっている。勿論、これは顧客だけでなく、事業者にとってもである。

ただ推測するに、こうした混乱、手間を省くために現場では一律8%で実行されると思う。つまり、差額2%の消費税は国に入らないということである。財務省が厳密にレジ操作をチェックできるであろうか、それは不可能である。現場を知る人間にとって境目はどんどん無くなりつつある。つまり業際化であるが、例えばコンビニにおけるイートインであるが、少し古いデータであるが以下となっている。
■コンビニ各社のイートインの設置状況(全店舗数/設置店舗数)■
 ・セブン-イレブン  1万9166/約2000
 ・ファミリーマート・サークルKサンクス 1万8211/約4000
 ・ローソン 1万2395/非公表
 ・ミニストップ 2242/全店舗
業際化が一番進んでいるファミリーマートでは、平成29年度末までに約6千店舗でイートインを設置する方針で既に30%を超えていると考えられる。つまり、外食産業の市場をコンビニが進出しているということだ。こうした境目のない業態はスーパーでも百貨店でも多くの流通業において同様となっている。一方の外食産業も今以上にテイクアウト市場に積極的に入っていくことが予測される。ただし、外食産業は飲料やデザートなどのサイドメニューへの波及は低くなり、結果客単価はどんどん下がっていくことであろう。
つまり、「外食」ではなく、「内食」が進行するということである。そして、その内食は食品が8%という背景を踏まえ、家庭内調理が進行する。ちなみに平成29年の外食産業の市場規模は、1人当たり外食支出額の増加、訪日外国人の増加、法人交際費の増加傾向などにより、前年比0.8%増加し、25兆6,561億円と推計されている。ある意味軽減税率導入によって外食産業は冬の時代を迎えるということである。
しかも、消費者だけでなく、飲食事業者にとって経費負担増が加わることとなる。言うまでもなく、水道光熱費も10%となり、この2%増はコストアップへと直接つながっていく。私が提起しているように「コンセプト再考」が必要になっているということである。

また、報道によればキャッシュレスによるポイント還元案が検討されていると言う。クレジットカードの保有率は年齢の高い世代ほと高く80%を超えてはいるが、そこには軽減税率以上に問題は山積みとなっている。2009年に行われた家電エコポイントのように高額の還元であっても交換できる商品には多くの不満が残った。しかも、その還元期限をどうするか、あるいはカード会員の費用もかかる。
それよりもパパママストアのような零細事業者の場合、手数料は多様であるが平均5%前後、3~8%と多様であり、中小零細事業者にとってそのコスト負担は極めて大きい。このキャッシュレスポイント制度の主導は経産省とのことだが、その裏には顧客の消費実態もさることながら1000万未満の売り上げには消費税の負担はない中にあって、その経営実態を把握することも想定される。

ところで2016年首都圏で売りに出された中古住宅の戸数が、新築分譲住宅の戸数を上回った。新築一戸建て住宅が「100万戸の壁」を越える前に中古住宅が追い越したと言うことである。更に、新築・中古マンションの販売戸数についても2016年以降中古マンションが新築を上回る時代となった。確かに首都圏においてはタワーマンション需要は高いが、それ以上に中古マンションのリノベーションによる「自分好み志向」が上回ったと言うことである。
こうした「中古住宅」だけでなく、数年前からはシェアハウスという新しい価値観による住まい方も出てきている。この「シェア」という考え方は周知の車においても大きな市場となりつつある。大きな概念として見ていくならば、「所有から使用」への価値観である。数年前に断捨離というキーワードが流行ったが、そうした不要な物を減らす考え方によるライフスタイルが徐々にに浸透しつつある。そうした傾向の中に「ミニマリスト」と呼ばれる生活者も増えつつある。つまり、こうした潮流にある「使用価値」とは何かという「問い」の中に時代はあるということである。新しい合理的な価値観が生まれ、旧来の価値観を覆しつつあるということだ。ある意味デフレ時代から生まれた合理的なライフスタイルということである。勿論、消費税10%時代はこうした使用価値を促し更に進化していくことは間違いない。つまり、単なる節約といった「巣ごもり生活」ということではない。

更に、消費税10%が導入予定の2019年以降はどんな景気の時代になるか、前回のブログで次のように「曇り一時雨、という天気図」を予測した。その概要を再録しておく。

『ところで日米の日米物品貿易協定(TAG)が始まる。大枠については合意したと報道されており、懸案の自動車への追加関税25%については即実施しないことを条件とし、その代わりとして農産品の輸入関税引き下げが行われるようだ。詳細(具体的交渉)は年明けから始まると思うが、自動車への追加関税は行わないということではなく、推測するに農産品の関税いかんによっては交渉のテーブルに上がるということもあり得る。日米の貿易差額7兆7000億円の帳尻に合わせてくると考えられる。オバマ時代の経済秩序とは真逆の世界に入ったということである。
また、周知のように米国によるイランへの制裁によるイランからの原油供給不安、更には主要産油国が増産見送りにより、原油が高騰している。結果、レギュラーガソリンはリッター150円台にまで高騰している。消費レベルだけでなく、電力をはじめとした多くの産業のコストアップへとつながることは言うまでもない。更に、付け加えるならば首都圏の建設などオリンピック需要は来年の2019年で終わる。
つまり、消費税10%が導入される2019年の経済天気図は雨模様になるという予測が成り立つということである。但し、日本全体が雨になるのではなく、地域や業種のまだら模様の天気になる。日米物品貿易協定(TAG)の対象となる産業への助成策についてはTPPの時に既に計画されているので対応されていくと思うが、特に農業は高齢化も進み先行きが見えないということから廃業の道を歩むことは当然出てくるであろう。特に、相次ぐ災害に見舞われた農業県である北海道は雨模様になると言うことである。勿論、2020年には首都圏はオリンピックもあり、薄日は差し込んくることは間違いないが。』

こうした景気の天気予報を踏まえると、何故か10年前のリーマンショック後の消費風景を多くのマーケッターは「巣ごもり消費」と呼んでいたことを思い出す。消費税の導入はまた先伸ばされるのではないか、2回あることは3回もあるといった軽口は言いたくないが、10年前のリーマンショックは米国発の「外的要因」であったが、導入年度の2019年は大きな落ち込みにはならないとは思うが、オリンピック後は間違いなく消費は落ち込み続ける。第二次巣ごもり消費時代が始まるということである。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:36Comments(0)新市場創造