さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2017年12月10日

2017年ヒット商品番付を読み解く 

ヒット商品応援団日記No695(毎週更新) 2017.12.10.

日経MJによる2017年のヒット商品番付が発表された。2017年上期にも書いたのだが、昨年のようなヒット商品はほとんどなく、書くのをやめようかと思ったが、「ヒット商品が無い」こともまた消費低迷の傾向としてあり、その対策着眼についてコメントすることとする。以下が2017年の主要なヒット商品番付である。

東横綱 アマゾン・エフェクト 、 西横綱 任天堂ゲーム機 
東大関 安室奈美恵 、  西大関 AIスピーカー
関脇 GINZA SIX  、 関脇 ゾゾタウン
小結 シワ取り化粧品、  小結 睡眠負債商品 

2017年ヒット商品番付全体を象徴するキーフレーズには「決まり手はウチ充」とある。ウチは内・家で充は数年前に使われたリア充(リアル生活の充実)もじったキーフレーズである。デフレが常態化したここ数年、特にそうだが、成熟した時代の消費の最大特徴は生活者が「楽しみ」のつくり方、家族や友人などとの交換・交流の仕方、そして買い方を手に入れたことである。その楽しみは ありふれた日常で、しかも小さな「楽しみ」を小さな「金額」で満足させる方法を手に入れたことによる。
ここ数年私が指摘したことは、大きなヒット商品ではなく、例えば「孤独のグルメ」の様に地元にある一見ありふれた中華そば屋を楽しんだり、「好き」を入り口に手作りアクセサリーをネット上で販売したり、横丁路地裏散歩で見つけた風景を写真に撮りこれもインスタグラムに公開することを楽しんだり、そんなお気に入りの「楽しみ方」を手に入れた時代を「成熟」した時代と呼んできた。こうした消費潮流を表すかの様に、全国各地の産品をはじめとした固有文化に注目が集まってきている。いわゆる「わが町自慢」「ご当地自慢」である。こうした成熟時代を踏まえてのヒット商品である。

流通業態の変革が本格化した

東横綱のアマゾン・エフェクト、関脇GINZA SIX、関脇ゾゾタウン、共通しているものは日本における流通業態の大変革が本格化したということである。上期には物流サービスの「ヤマト運輸の値上げ」が入っていたが、まずはネット通販業態が生活のあらゆる商品分野に及んでいるということである。その象徴がアマゾン・フレッシュという生鮮食品の宅配サービスが都内の限定エリアで始まったことにある。書籍から始まったアマゾンであるが、顧客興味の把握をベースに次第にそのMDを広げていった、その一つの到達点が「生鮮食品」である。世界一の小売業であるウオルマートが有店舗業態であるのに対し、アマゾンは無店舗業態という比較もあるが、そうした競争の競争最前線にあるのが既存のスーパーマーケットである。このスーパーマーケット業態が数年前から実施しているのがネットスーパーであり、一定金額以上の買い上げへの宅配サービスである。
また、前頭には飲食店の出前・宅配サービスを代行するウーバーイーツが入っており、登録店は1000店を超え、対応エリアも拡大しているという。更に、番付には入っていないが、大手回転すしチェーンのスシローは鮮魚流通の羽田市場と組んで、朝取れ鮮魚を空輸し6時間で店頭に並ぶサービスが本格化している。あるいは鮮魚のみならず青果においては先行して実施されており、従来の「産直」の概念も変わりつつある。この様に、あらゆる領域で「物流」を軸に再編が本格化している。
次の流通変化としてGINZA SIXを挙げたが、百貨店のSC(ショッピングセンター)化という再編集の意味合いだけではない。日経MJをはじめ世界のラグジュアリーブランドを集めた延長線上で、高価格帯市場の成功事例の様に指摘をしていたが、それは一面的な見方である。「フェンディ」や「ディオール」といったブランドを指してのことだが、レストランにはあの大阪新世界ジャンジャン横丁の串揚げの「ダルマ」が入っている。ジャンジャン横丁の串揚げより少し高い価格になっているが、それでも安い「食」が用意されている。SCのデベロッパーであれば熟知していることだが、価格帯市場としてはある程度幅のある中でテナント編集するのは当たり前のことである。
更に若い世代にはファッション通販ZOZOTOWNは安くて使いやすい通販として急成長している。かなり前から通販と古着市場は伸びていると指摘をしていたが、ZOZOTOWNでは新品のブランドは勿論古着もあれば買取もしてくれる、しかも支払いは2ヶ月後という「うれしいシステム」になっている。嬉しいこと満載の通販ビジネスで、単なる通販の概念を超えた進化したビジネスとなっている。

AI(人工知能)はライフスタイルそのものを変えていく

少し前まではAIと言えば、将棋vs AIといった「知能」の卓越さや自動運転装置などの「技術」への応用が話題の中心であった。しかし、わずか数カ月で今回のAIスピーカーの様な生活を変えるそんな商品が出てきた。前者はまだまだ部分的世界であったが、身近な日常生活の良き「道具」として使われる様になった。価格としてはまだ少し高いが、これから安くなり普及していくであろう。
勿論、裏側にはインターネットという文字通り張り巡らされたネットワークがあっての話であるが、前述の流通業態の変革を促す世界と同じで早晩小売業とも連動していくであろう。PCの画面で注文するのではなく、AIに向かって話すだけで・・・・・支払いの決済はどうかと言えばAI機能に「顔認証」が付け加われば全て済む、そんなライフスタイルも間近に迫っている。既に有店舗のコンビニ・ローソンでは欲しい商品をカゴに入れれば自動的に持ち帰り包装され、支払いにはカードによる決済であるが、そんな無人の実験も始まっているぐらいである。そして、このAI機能はスマホやタブレット端末へと重なっていく。つまり、既に始まっているIot家電だけでなく、流通も大きく変わりライフスタイルそのものが変わっていくということだ。

それでは前述の流通業態はどう変わっていくかである。少し前のブログで米国で流行っている「ブラックフライデー」について書いたことがあった。消費活性のプロモーションであるが、日本ではブームにはならなかったが、米国ではそれなりの成果があったようだ。米国でも日本と同様小売は通販が主流となっており、有店舗はどこも苦戦している。そうした状況にあって唯一活況を見せている有店舗小売業があると言われている。それは世界最大の小売業ウオルマートである。その理由は通販で頼んだ商品の受け取り場所に、その巨大な4300店舗ネットワークを活用するということである。日本の場合でいうとコンビニがその受け皿になるということである。

この様にライフスタイルが変わり始め、至るところで「やり直し」が始まったということである。ところで西横綱に任天堂ゲーム機が入った。上期にもその「スイッチ」は順調な売れ行きを見せていたが、若干危惧もあった。それはゲームの潮流はスマホに移っていたからであるが、据え置き型プラス携帯という多様な遊び方機能を加えたことで、従来の任天堂フアンを呼び戻したのであろう。更に懐かしい「スーパーファミコン」が小さくなった復刻版も予約が殺到し好調とのこと。こうした背景から西の横綱に番付されたのだが、これも従来型ゲーム機の見直し、やり直しの成果であったということだ。

「価格」と「人手」という経営課題

今回の日経MJではあまり「価格」についてはドン・キホーテによる格安5万円台の4Kテレビが前頭に入っている程度であまり触れられてはいない。しかし、この価格の根底には「経営」という大きな山を越えなければならない課題がある。例えば、外食チェーンにおいて人件費や原材料のアップにより値上げが行われ始めているが、原材料は別にして人件費や家賃に見合わなくなったということからチェーンビジネスの本質的課題が生まれてきている。結果、採算の合わない店舗は撤退し、縮小していくだけとなっている。ブログにも書いたが、低価格を売り物に急成長してきたラーメンの幸楽苑ですら低価格だけではやっていけない山が立ちはだかっている。よく対比されるのが同じ業態の日高屋であるが、日高屋の場合は野菜たっぷりの「タンメン」という人気メニューがあり、そうした特徴がチェーンビジネスを維持させtている。あるいは牛丼大手のすき家も数年前人手不足から店舗閉鎖に追い込まれたことがあった。しかし、一方で24時間営業の立ち食いそな「富士そば」は順調である。何故か、それは前社の場合は深夜時間帯における「ワンオペ」「一人回し」という業態では最早人材は集まらずやっていけなくなったからである。つまり、「人手」をまるでロボットとして使っていたのに比べ、富士そばの場合は「人手」の人を生かしきる経営、例えば良き実績が上がればアルバイトにボーナスを出す経営、そんな人力経営との違いを見ればわかる様に、価格設定・人手という経営の「やり直し」が問われているということである。
また、このやり直しと共に山を越えている企業もある。その代表的事例はUSJ(ユニバーサルジャパン)で同じ様に値上げした東京ディズニーリゾートが低迷しているにもかかわらず、好調な集客が図られているのはやりすぎとも思われる「ここまでやるか」というMDにある。「この差・違い」は何かと言えば、徹底して顧客を喜ばせる、そんなアトラクションが至るところに溢れている。これも転換期の山を越える一つの戦略であろう。「価格」と「人手」という2つを軸に再編されるということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:34Comments(0)新市場創造