さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2017年09月24日

問われているのは、こころが見える関係づくりである  

ヒット商品応援団日記No687(毎週更新) 2017.9.24.

以前から経営危機が指摘されていたが、玩具量販の米「トイザらス」が経営破綻したと報じられた。日本トイザらスについては店舗での販売やサービスに変更はないとのことだが、日本における流通業にとって無縁なことではない。いやそれどころか米国トイザらスの破綻は日本のこれからの予兆のようなものとして受け止めなければならない。この破綻の背景には通販のアマゾンと玩具のディスカウンターに挟撃されたものだと言われているが、それは競争における現象としてはその通りである。しかし、本質として消費が変わってきており、価格と共にショップの意味合いが変わってきていることに他ならない。特に、おもちゃという「遊び」は目まぐるしく変化しており、遊びの中心は周知のように「ポケモンGO」に代表されるスマホ・ゲームが中心となっている。結果、いわゆる玩具・おもちゃという「物」の遊びはどんどん少なくなっている。

価格については前々回のブログ「再び、人力経営の時代へ」にも書いたが、その象徴例としてユニクロとguの比較とリーダーである柳井社長の第二の創業プロジェクトに触れたが、ショップの持つ意味、経営としての有店舗の意味合いが変容する消費と共に変わってきたということである。
数年前から私はわかりやすく「ショップで商品を見て、ネットで比較し一番安いところで買う」と、既にショップはショールーム化していると書いたことがあった。こうした購入方法は当たり前のことになり、都内の食品スーパーの多くは一定の購入金額以上であれば無料でデリバリーしてくれるサービスも日常化している。勿論、店舗にも行かないネットスーパーの売り上げ比率もじわじわと増えてきている。。そして、こうした物販のみならず、飲食サービスにおいても専門料理店のメニュー宅配といった同じようなことが始まっている。つまり、人手不足と言われているが、物流・デリバリーの進化が消費の変容を促しているということである。そして、もう一つショップが果たす役割は前回のブログにも書いた通り、「顧客情報」の収集にある。

ところでそのネット通販のアマゾンであるが、2015年度アマゾン経由の売上高は全米オンライン売上の33%を占めており、2016年度には43%へとその成長度合いを強めており、いわゆる一人勝ち状態である。そのアマゾンが少し前に高級オーガニックスーパー「ホールフーズ・マーケット」(440店舗)を買収したと話題になったが、その少し前の4月には日本国内においても野菜、果物、精肉などの生鮮食品を、最短4時間で配送するサービス「Amazonフレッシュ」を東京都内から開始したとしてその躍進ぶりを見せている。
世界最大の小売業「ウオルマート」はそのディスカウント業態を確立させたことによって成長してきたのだが、アマゾンの目指す世界はいわゆる複合小売業であり、前述の飲食サービスであるスイーツ、チーズ、コーヒー、お酒などの専門店27店の商品が注文できるようにもなっている。ある専門家に言わせると、ゴタゴタ続きの東京豊洲市場の多くをアマゾンに使ってもらったらという案を出す人も出るぐらいである。

話は元に戻すが、いわゆるこのEC化の進展があらゆる分野で進行しており、日本の小売業をはじめとした商業を根底から変えていくこととなる。ずいぶん前になるが、日本の小売業を牽引してきた百貨店の売り上げを抜いたのがコンビニであった。そして、あまり話題にはならなかったが、その百貨店売り上げを5年以上前に抜いたのがいわゆる通販業態であった。久しぶりに日本通信販売協会(略称=JADMA)のHPを見たのだが、2016年度(2016年3月―2017年3月)の通信販売市場の売上高については前年比6.6%増の6兆9,400億円とのこと。(この数字は加盟企業の集計であって、最近話題となっている個人間ビジネスCtoCなどは含まれてはいないのでこの数値以上に大きいということである)



2008年のリーマンショックによって、多くの小売業や飲食業がリストラせざるを得ない状況にあって、このグラフを見るだけでいかに進化成長してきているかがわかる。アマゾンや楽天、ヤフーといった大手事業者は別として、リアル店舗からネットショップへの「参入は個人商店など小規模事業がほとんどで毎年10万店ほどが出店していると言われている。こうしたBtoC以上に成長が期待されるのが、CtoC-EC市場である。
周知のヤフオクであるが、今注目されているのがフリーマーケットEC。ネット上のフリマで商品の個人間売買が行われ、そのプラットフォーム(場)を提供しているのが、メルカリやショッピーズなどである。つまり、ミニミニ個人ビジネスへとEC市場の裾野が広がったということである。あるいは、プロ級のハンドメイド商品やアート商品を売買するサイト「Creema」などもCtoC-EC市場である。つまり、従来あった異なる「ビジネス区分」をつなぎ合わせるプラットフォームがネット上に続々と創られ市場化してきているということである。このように成長が続くEC市場であるが、多くのEC事業者は東京オリンピックの2020年には現在の小売サービス売り上げ約300兆円の内、ヤフーなどは20%ほどのEC化率が見込めると予測している。ちなみに現在は18%ほどで、まだまだ成長する分野であるとのこと。

こうしたマクロ的な視点を踏まえることも大切であるが、インターネットによって個人需要にどのような変化をもたらし、これから更にどこへと向かっていくかである。2000年代に入り、企業のみならず個人の可能性を広げるツールであると、それをWeb2.0というタイトルで表現した。その可能性とは、「ロングテール」というキーワードに象徴されるように、小売店頭の片隅に置かれた、あるいは店頭に並ぶことからも外された商品に販売の「機会」を与えるビジネスファーマットの出現であった。その先駆けがアマゾンで、埋もれた商品を表舞台に上げる、そんな可能性である。売れなかった書籍が売れると同時に、中小書店は廃業へと向かったことは、これも周知の通りである。しかし、廃業していく書店にあって、読んでもらいたい埋もれた書籍を選び届ける地方の書店が注目され、生残る術を示してくれている。TVで何回か紹介されたことがあるので周知のことと思うが、北海道のいわた書店の「一万円選書」である。これも過剰な情報(書籍)にあって、埋もれてしまった書籍を読者につなぐアナログサービスである。

こうした「つなぐ事例」は他にいくらでもある。数年前から街場にヒット商品、人気店があるとブログを通じ指摘したのもこうした背景からである。TV番組「マツコの知らない世界」もその一つであるし、深夜の人気番組「孤独のグルメ」もそうである。最近注目され始めているBSーTVの「酒場放浪紀」も埋もれてしまった世界を表に出した試みである。これら表へと取り上げ、顧客と店とを「つなぐ」マスメディアの例であるが、SNSのメディアであるFacebookにおいても同様の試みはいたるところで出てきている。つまり、つなぐ方法・メディアは個人でもできるのがインターネットの時代の特徴である。
インターネットは過剰な情報をもたらしたが、その過剰な情報の中から欲しいモノを異なるジャンルの中から組み合わせ・つなぎ合わせ、ベストなモノへと変化させることができるのもインターネットの時代ならではの発想である。

今から12年ほど前にブログを始めたのだが、ちょうどブログが広がり始めた頃で、40万程度の日本語ブログ数であった。そのブログというメディアを称し、「個人放送局」というキーワードを多用したことがあった。ブログはFacebookに代表されるSNSへと進化し、そしてYoutubeは特別なメディアではなくなった。最近は分化してきており、ブログは個人新聞社、Youtubeは個人TV局、インスタグラムはグラビア雑誌ということである。そんな社会をマイメディア社会と私は呼んだ。
インターネットが象徴しているように情報技術は驚くほど急速に発展し、地球は小さくなり、同時代性、同地域性という世界が、経済ばかりか知的情報の世界まで拡大した。図式化すると、世界の共通語=英語、自国語、地域語=方言という3つの言葉を生きている。ブログであれ、Youtubeであれ、社会に発信する以上、ジャーナリズムの精神を忘れてはならないと自戒している。既にお二人とも他界しているが、ジャーナリスト筑紫哲也さんが亡くなられた時、コラムニスト天野祐吉さんは「ニュースに声を与えてくれた人」と語っていたことを思い出す。同時に、膨大な情報を整理し、防波堤の役割を果たしてくれていたと思う。筑紫さんがキャスターをしてきたTV番組のタイトルのように、多事という情報を争論できるようにしてくれた訳である。言葉は声であり、また文字である。

この生身の声の持つ意味を今一度再考すべき時にきている。つまり、効率論だけでインターネットやIT技術を語ってはならないということでもある。通販ビジネスは、店舗を持たない「顔の見えない者同士」のビジネスでもある。そうしたいわゆる通販ビジネスについて、顔が見える関係から、心が見える関係へと1歩踏み出すことの良き事例を次のようにブログにも書いたことがあった。

『通販生活のカタログハウスでは、顧客からの問い合わせに対し、「お客様窓口」などとは言わず、「お便りありがとう室」としている。お問い合わせいただきありがとうございますという意味だ。今も継続しているかわからないが、いただいたお便りに対しては直筆で返事を書くという。あるいは九州に皇潤というヒアルロン酸を販売しているエバーライフという通販企業がある。この企業ではシニアの悩みを聞くことが全てであると考えており、顧客は電話オペレータを指名することができる。つまり、電話オペレータ担当制を敷いている。人件費といった経済効率を考えたら「担当制」という発想は出て来ない。』

「心が見える関係」とは、理解から共感・共有というこころが通いあう関係に踏み込むということでもある。市場が心理化しているとは、有店舗ビジネスにおいても、その存在意義、可能性があるとすれば、この「心が見える関係」をどう創造していくかということに他ならない。つまり、今問われているのは、インターネットやIT技術でも、無店舗・有店舗の論議ではない。問われている本質は、顧客との間に「会話」があるかどうかである。今起こっている変化に対応するには、会話力、あるいは消費に関する諸データの分析などではない。まずすべきは、顧客の生身の声を聞くという原点に立ち帰って始めるということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:38Comments(0)新市場創造