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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2016年12月11日

2016年ヒット商品番付を読み解く 

ヒット商品応援団日記No666(毎週更新) 2016.12.11.

日経MJによる2016年のヒット商品番付が発表された。2016年上期にはヒット商品はほとんどなく、そのヒットが出てこない傾向を読み解くことは難しかったが、夏以降立て続けにヒット商品が表舞台に上がってきた。以下がその番付である。

東横綱 ポケモンGO 、 西横綱 君の名は。 
東大関 シン・ゴジラ 、  西大関 AI (人工知能)
張出大関 ピコ太郎  、  張出大関 リオ五輪
関脇 日産せレナ、 関脇 PSVR 
小結 大谷翔平、  小結 広島 

上期には、東横綱には安値ミクス、 西横綱にはマイナス金利特需といったデフレを象徴するようなキーワードが並んだが、もちろんこうした傾向は今なお続いている。下半期には度々ブログに書いてきた2つのヒット商品「ポケモンGO 」と 「君の名は。」が東西横綱に番付された。まあ誰が番付しても理解・納得できるヒット商品であるが、今年について面白い傾向がいくつか見られるので読み解いてみることとする。

ひととき夢中になれる、熱中できることを求めて

7月24日のブログ「ポケモン探しの旅が始まる 」で次のように指摘をした。
『暗い情報ばかりであるが、去年の夏と今年の夏との消費における最大の違いがあるとすれば、それは「ポケモンGO」であろう。・・・・・・場所によって現れるポケモンが150種類ほどあって変化があることから、そのポケモン探しはやればやるほとはまっていく。それだけ探すための移動は広く激しくなるということだ。・・・・・低迷する消費の救世主、勿論2016年ヒット商品番付の東の横綱は間違いない。』
そして、レアなポケモン探しに熱中することによって、交通事故をはじめとしたトラブルが多発し社会現象にまでなった。こうした「ゲームを遊ぶ」ことによる社会現象のスタートは1980年代半ばのあのロッテから発売された「ビックリマンチョコ」であった。チョコレートを食べずにおまけシールを集めることに熱中し、チョコをゴミ箱に捨てないようにと社会現象にまでなったメガヒット商品である。特に10代目の「悪魔VS天使シール」は凄まじく月間販売数1300万個と記憶している。ビックリマンチョコの場合はアナログ世界である一方、30年後という時代の推移を表しているのだが、ポケモンGOの場合は、GPSの活用という「今」ならではのリアルとバーチャルが融合したゲームで、しかも世界各地で楽しめる「遊び」である。ちなみにポケモンGOのダウンロード数は5億件を突破したとのこと。そして、「次」のポケモンGOのステージとして、ポケモン探しがビックリマンチョコの時のようなシール集めを超えて、捕らえたポケモンで家族や友人との交換や対戦相手と行うゲームに発展していくのではないかと推測されている。いずれにせよ、これからもポケモンGOに夢中といった現象は続く。

感が動かされる世界を求めて

「追い求める」もう一つが西横綱の「君の名は。」である。興業収入が200億円を超え、映画のモデルとなった岐阜県飛騨には多くのフアンの「聖地巡礼」が見られたという。この聖地巡礼はアニメ(虚構)世界では珍しいことではなく、今から10年ほど前になるが、あきたこまちの包装に美少女イラストを起用してネット通販で売り出したことがあった。初めてということもあって、数ヶ月で2500件、30トンものあきたこまちが売れ、その萌え米誕生の地である、秋田県羽後町に若い男性が押し寄せることがあった。こうした「聖地巡礼」という社会現象はポケモンGOにも通底することだが、モノ価値から、物語を読み解く面白さ=情報価値への転換商品である。この時、虚構世界からリアル(聖地)へと行ったり来たりして楽しむ、そんな時代にいるということである。
さて、本題の「君の名は。」であるが、その描写の綺麗さもさることながら、私が感じたのは新海誠監督が主題歌を歌うバンド「RADWIMPS」のフアンであると語っているが、コラボレーションによって生まれた新しいスタイルの音楽アニメといっても過言ではないように感じる。RADWIMPS(ラッドウィンプス)というバンド名の意味は、ウィキペディアもよれば「すごい」「強い」「いかした」という意味の軽い俗語「RAD」と、「弱虫」「意気地なし」という意味の「WIMP」を組み合わせた造語である。つまり、「かっこいい弱虫」「見事な意気地なし」「マジスゲーびびり野郎」などの意味である、と言う。今まで消費という舞台では草食系とか、低欲望社会の申し子のように言われてきたが、このバンド名の如く、今時の若い世代のセンシティブでナイーブな特徴が良く表現されている。
そして、映画の内容であるが、ごくごく普通の日常の中の幸せってなんだろうではないが、幸せへの渇望や喪失感を心の中に秘めた入れ替わった2人の主人公のストーリーとして展開される。楽曲ごとに世界が一変し飽きさせない映画となっており、少々伏線があって複雑化しているが、見事に観る者の「感」が動かされる映画となっている。特に歌詞がよく劇中歌「前前前世」における”心が身体を追い越していくんだよ”といったフレーズも、あるいは繰り返す言葉遊びも、そうしたセンスは未だかってないものであった。こうした「幸せ」というテーマ世界は若い世代だけでなく、宮崎アニメにおけるエコロジーと同様世代や性差、さらには人種を超えた「時代」が求める本質的なことであり、映像の綺麗さに一瞬ジブリ映画と見間違うが、またジブリ映画とは異なるテーマアニメとして世界各国で高く評価されていくと思う。そして、10年近く前にunder30とか草食世代と揶揄されてきた世代だが、今やっと表舞台へと上がってきた。

サブカルチャーの時代が本格化した

ポケモンGO以外にも関脇にPSVRという仮想現実を遊ぶゲーム機が入っており、「君の名は。」もジャンルとしてはアニメ映画である。更に映画「シン・ゴジラ」が東大関に番付されている。「シン・ゴジラ」の監督はあの新世紀エヴァンゲリオンの監督である庵野秀明氏である。CGを駆使した映画であるのだが、ゴジラによって破壊されるビル群の「リアルさ」に息を呑む映像となっており、庵野秀明氏における創作がアニメからリアルへという一つの変化(進化?)を見せているのも面白い。「シン・ゴジラ」の「シン」とは「新」「真」「神」などの意味が含まれているということで、そのリアルさには今までにない迫力を感じる。ところで今なお根強くいる新世紀エヴァンゲリオンフアン、いやオタクがどんな思いで「シン・ゴジラ」を観たか聞いて観たいものである。
いずれにせよ大仰ではあるが、サブカルチャーという文化、クールジャパンの進化が日本経済を牽引していく時代がはっきりと結果として出てきたということだ。
実はローカルジャパン東京の小さな話題であるが、先月墨田区に「すみだ北斎美術館」がオープンした。墨田区は江戸時代葛飾北斎が生まれ育ったところであるが、その生涯にわたる多くの作品が展示され、美術館はぎゅうぎゅう詰め状態の人気であった。私はその中でも「北斎漫画」を観たかったのだが、その北斎漫画」こそ今日のコミックやアニメのルーツとなっているものである。
こうしたサブカルチャーが観る者、遊ぶ者に「熱気」をもたらしたことは確かである。文化が経済を牽引する時代、しかもカルチャーではなく、サブカルチャーによってである。これは小結に番付された広島についても同様である。この広島にはオバマ大統領の広島訪問なども含まれてはいるのだが、あの広島カープのリーグ優勝、「神ってる」と言わせたほどの逆転試合の連続であった。この広島カープの優勝についてはブログにも書いたので多くは書かないが、万年Bクラスの弱小球団、ある意味裏舞台のチームといったらカープフアンに怒られるが、そんな球団がぶっちぎりの優勝を果たしのである。巨人でもなく、阪神でもなく、小さな市民球団がである。このように、「表」ではなく、「裏」にあったもの、隠れていたものが表に出てきて観る者に「熱」をもたらした半年であった。
サブカルチャーと言えるかどうかは問題があるかもしれないが、張出大関のピコ太郎(PPAP)も突如として世界的な話題となった。周知のようにYouTubeに投稿された動画が拡散したことによるものだが、モノマネなどの関連動画を含めると8億6000万回もの再生回数があったとのこと。今年の忘年会はピコ太郎で決まりとなると思うが、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」と同様自己表現時代にあっては「わかりやすく」「ものまねができる」ことが、ヒットのカギとなっている。また、違った視点に立てば、サブカルチャー拡散の基本条件に合致していたということである。

復活、そして老舗続々

AIやVRあるいは、関脇の日産せレナもそうであるが、新しい技術による革新的な商品が生まれてきている 。一方、この1年間過去のヒット商品の復活についてブログに書いてきたように、復活商品が数多く表舞台に上がってきた。日経MJも書かざるを得なくなったようだが、前頭にはこうした商品が番付されている。
まずは吉野家の「豚丼」、日本マクドナルドの「400円ランチ」や最近では「カルビマック」というデフレマインドに応えた復活商品が人気となっている。吉野家の「豚丼」は8ヶ月間で2700万食という大ヒット商品となった。日本マクドナルドも過去のヒット商品を立て続けに発売し、そうした成果によって売り上げの右肩下がりが止まり、赤字経営から脱却し始めた。
こうした外食のみならず、任天堂は1980年代にヒットしたいわゆるファミコンの復刻版を発売。以前より小型化しているが外形は昔とほぼ同じで、発売4日で26万台を突破し品薄状態が続いているという。また、売れないCDなどの音楽業界で、じわじわ右肩上がりなのがアナログのレコート盤である。
こうした表舞台でのヒット商品ではないが、古くからある街場の飲食店やパン屋、あるいは地方の老舗が注目されており、その中から小さなヒット商品、ニューレトロ商品も誕生しているようだ。レトロ、老舗、復活、こうしたキーワードは消費のみならず、今という「時代」のキーワードになってきている。実はまだ食べてはいないのだが、神奈川県平塚にある大正十三年創業という地元ではよく知られている高久製パンが作るカレーパンはまさにそうしたヒット商品の一つである。この弦斎カレーパンはカレーライスまんまを入れたカレーパンで、福神漬けまで入っており、こうしたアイディア溢れる、しかもロングセラー商品はいくらでもある。つまり、「過去」の中にヒット商品があり、過去を知る世代のみならず、知らない若い世代にとって新しく、新鮮であることが多い。OLD NEW、古が新しいということである。ポケモンGOも、そのキャラクター古くからあるものでGPSを使うといった遊び方は異なるがこれもOLD NEW商品と言えなくはない。

こうしたヒット商品を俯瞰してみていくと、横溢するデフレマインドを突破する入口のヒントが見えてきている。それが新しい技術によってであれ、過去あったヒット商品の復活であれ、今まで気付かず隠れていた商品であれ、「こころ揺さぶり」「熱中できる」、それがたとえひと時であってもだが、新海誠監督ではないが、「小さな幸せ」を運んでくれる、そんな商品が待たれているということだ。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:40Comments(0)新市場創造