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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2015年12月20日

未来塾(20)テーマから学ぶ 「差分」が生み出す第3の世界 (前半)

ヒット商品応援団日記No632(毎週更新) 2015.12.20.

「差分」という聞きなれない言葉を使ったが、これは慶応大学佐藤雅彦研究室による「差分」(美 術出版社刊)によるものである。この「差分」という考え方をもう少し現実ビジネスに引き寄せて、競争市場下の「今」をテーマとした。特に、消費の世界におけるデフレ的現象が続く中、従来の「価格差」以外の競争力として新しい芽とその背景について学んでみることとする。




「テーマから学ぶ」

「差分」が生み出す第3の世界
競争市場下の「今」


5年ほど前になるが、インテリア業界に一つの革命をもたらしたニトリだが、その躍進について、似鳥社長はTV局のインタビューにその「安さ」について”20%程度の安さでは消費者の心を動かすことはできない。動かすとなるとやはり30%以上の安さでないと”と答えていた。しかも、”お値段以上のニトリ”をコンセプトとしている。こうした「差」がもたらす世界は価格だけでなく多様な消費世界に現れている。ビジネスマンであれば、必ずついて回るテーマ、「どう差をつくるか」について、その「今」を、飲食市場に現れた新しい「芽」をテーマとして取り上げてみることにした。

ところで「差分」という聞きなれない言葉を使ったが、慶応大学佐藤雅彦研究室による「差分」(美術出版社刊)によるものである。脳科学を踏まえた次なる表現を多くのビジュアルを使って、”「差」を取ることで新しい何かが生まれる”ことを検証した著作である。差分とは隣り合ったものの差を取った時の「脳の答え」であるとし、その比較には新しい情報が含まれていると指摘をしている。
ニトリの例で言うならば、他との価格差が20%引きでは何事も生まれないが、30%引きになると価格差以外に「新しい何か」「心を動かす何か」「お値段以上の何か」という「第3の世界」が生まれるということになる。少し単純化してしまい佐藤教授には申し訳ないが、私のこの著作から受けた「解釈」はそうしたものであった。「差分」は大変示唆的な著作であり、著作権の問題からビジュアルを含め多くを引用できないので、是非とも一読されたらと思う。

この「差分」という考え方をもう少し現実ビジネスに引き寄せて補足するとなると、やはりブランドあるいは老舗の持つ「差」とは何かということにつながる考え方・着眼である。景気が低迷するデフレの時代にあっては、「価格差」が違いを明確にする一番の要因ではあるが、一方根強いブランドフアンもいる。拙著「未来の消滅都市論」にも書いたことだが、「差異」は顧客によってつくられるとし、ボードリヤールの記号論を引用しながら「特別なコード」、記号価値が消費を左右すると書いた。この記号価値が購入したいと欲求する価格を決めるもので、他に代えがたい記号価値を持つものとしてブランドや老舗を位置付けた。
「差分」という文脈から言うとすれば、多くの時間を経た歴史や文化が堆積した「何か」に新しさを感じ取る、「脳の答え」として創造されているということになる。私の言葉で言うと、Old New、古が新しいと感じる世界のことである。結果、「価格差」が生まれるということになる。
そして、前回の未来塾「シモキタ文化」のところでも書いたが、古着フアンにとって古着とは他者との「違い」を自己表現の中に取り入れる特異な商品としてある。そして、多くの古着フアンはそうした「一点もの」、あるいは「レア物」を探すことを「出会い」と呼び、その「差」を楽しむ消費スタイルとなっている。しかも、上から下まで1万円というのが新品の価格ゾーンで一般的となっているが、古着においては3000円となり、安価に「差」が創れる新しい第3の世界という商品ということだ。

デフレ時代にはこの「価格差」が消費心理の多くを占めてきた。佐藤雅彦先生流に言うと、脳がそのように答えてきたということである。1990年代後半、デフレの旗手と言われたユニクロ、吉野家、日本マクドナルド、あるいは業態は異なるが、ネットショッピングの入り口で仮想商店街を作った楽天も入るかもしれない。今やリアル店舗で商品を確認しネットで購入というのが一つの消費パターンとなっているが、そのお膝元である米国では、アマゾンに負けじとあのエブリデーロープライスのウオルマートですらリアル店舗を受け取り場所としたネット活用に踏み切ってきた。これら全て「価格」の持つ「力」、「差」を戦略化した例であろう。
しかし、こうしたデフレ潮流も数年前から、単なる「安さ」だけでは「差」となりえない消費に向かってきている。その象徴例が圧倒的な「安さ」を売り物とした居酒屋チェーンの衰退である。おつまみをはじめとした食事メニューのほとんどが300円以下となり、若い世代の財布に優しい業態として成長してきた。しかし、その代表的な企業であるワタミは右肩下がりとなり、2015年3月期の決算では創業初の営業赤字、損失は126億円に及んだと報じられている。その中核事業である居酒屋チェーンの和民は2014年度中に約100店舗ほど閉鎖したことが赤字に大きく影響したのだが、それら全て顧客が離れていった結果であることは間違いない。私に言わせれば、それまでの「居酒屋」はお酒中心の業態であったところに、「居食屋」という新しいコンセプト、食事を中心とした業態に圧倒的な顧客支持を得ることができた。しかし、その「居食屋」業態には新たな業態が続々参入する。今ではあのファミレスや中華食堂の日高屋までもが、夕方ともなればサラリーマン相手のちょい呑み居酒屋へと変身する。「差」をつけるどころか、逆に「差」をつけられた古い業態へと向かってしまったことによる。ある意味、「変わること」ができなかった典型的なモデルケースとなってしまったということだ。

4つの「差」づくり

今回のテーマについてだが、1990年代後半からのデフレとは異なる「デフレ」が進行している。ここではその「デフレ」とは何かといった定義ではなく、消費という視点に立つとデフレ的現象が続く中、新しい「差」の創り方が幾つか出てきている。
まずその整理として、以下のような「差」の作り方がある。
●業態としての「差」
●メニューとしての「差」
●価格における「差」
●ネーミングなどコミュニケーションの「差」
勿論、こうした「差」の組み合わせも当然あるのだが、価格における「差」を踏まえた「差」の組み合わせが数多く見られる。


「俺のフレンチ」の革新性

「俺の」ビジネスモデルの出発点は2011年9月第1号店、わずか16坪の「俺のイタリアン」(新橋本店)であった。当時はあまり話題にはならなかったが、「俺のフレンチ」銀座本店をオープンさせた頃から、”立ち食いフレンチ”といういまだかってなかった業態に注目が集まり始めた。そして、2012年の日経MJ「ヒット商品番付」にもその特異性が紹介され、ブームが起こる。当時のブログ
「2012年ヒット商品番付を読み解く」において、私は次のようなコメントを書いた。

『今年のヒット商品は「ありそうで無かった」業態に注目が集まっている。その代表例が「俺のフレンチ・イタリアン」である。・・・・・・キャビアなどの高級食材を使った一皿1000円未満のレストランであるが、大半が立ち食い業態で1日の客回転が5回にも及んでいるという。東京新橋の立ち飲み居酒屋は中高年対象であるが、若い世代の立ち飲み業態、ショットバーは恵比寿を始め都内には無数存在している。しかし、食材にお金を使った本格フレンチ・イタリアンで一皿1000円未満、そのかわりに立ち食いスタイルという「ありそうで無かった」レストラン業態に若い世代が支持をしている。』

フレンチと言うと、高級で着席スタイルという格式を要した業態であると、多くの顧客は理解していたが、「俺の」の場合はリーズナブル価格で、立ち食いスタイルというカジュアルな業態という極めて大きな「差」を感じる人間は多い。しかし、そうした感じ方はシニア世代が多く、若い世代にとっては敷居は低く、しかも新鮮なスタイル感であった。同じ「差」であっても世代やマーケットによって大きく変わる良き事例である。
しかも、飲食業態は初期投資が大きく償却に時間がかかる。「俺の」の場合は、出店店舗の多くは撤退した居抜き物件で小さな投資で償却も短い、そんなビジネスモデルでもある。そうしたことから周知のように、「スパニッシュ」「やきとり」「割烹」「そば・おでん」「焼肉」「中華料理」と、その多様な飲食へと成長してきた。現在は30数店舗ほどであるが、世界への出店を含め、300店舗を当面の目標とすると発表されている。元々中古本販売の「BOOK OFF」の創業者であった坂本孝氏をリーダーとした企業で、その程度の店舗数をマネジメントすることは十分可能である。

ところで全ての店舗を見たわけではないが、ブームという期間を終え、業態やメニューに幾つか「手直し」が入っている。創られた「差」が大きければ大きいほど、新しい「何か」への興味・関心を呼び、結果ブームという現象が生まれる。つまり、新しい客層を開発することはできるが、同時に時間経過と共に利用回数も減ってくる、あるいは一度体験してみたいとした「観光利用」のような顧客は当然リピーターにはならない。
例えば、写真の「俺のフレンチ」は元は「俺のイタリアン」であった。そして、立ち食いスタイルではなく、34席全て着席スタイルといういわば業態の転換である。しかも、銀座並木通り店では初めてコース料理のみを取り入れている。ちなみに、フレンチとしてはかなり安いものであると思うが、例えば6品フルコースで3999円(税別)となっている。
今後どんな展開を見せていくか興味深いものであるが、着席スタイルの店を多くし、更には小型店を少なくし、大型店舗の出店を多くしていくと推測される。その象徴と思われる店が銀座に2店ある。
「俺のフレンチTOKYO」と「俺のイタリアンTOKYO」である。それぞれ180席と130席ほどの大型店舗で、全て着席スタイルとなっている。そして、ピアノなども置かれライブミュージックを楽しみながら食事をするといった具合である。アミューズ代300円、ミュージックチャージ300円が必要となる。そして、料理の方も今までの小型店でのメニュー価格よりかは高く設定されているようだ。

こうした手直しと共に、新規メニューの導入に際してはその単価を上げていくとも聞いている。つまり、リピーター化を図るための着席スタイルの拡大と、客単価を上げて新たな採算ベースの経営を行うということであろう。
また、こうした手直しが明確に出ているのが「俺のだし」であろう。オープン当初の店名は「俺のそば」であったが、店名の変更と共にメニューにも変化が出てきている。
銀座5の店頭写真を見ていただくと分かるように、「天丼」も出すようにメニューも変わってきている。勿論、蕎麦屋に天丼はつきものではあるが、そばに特化したメニューから客層を拡大するための一つの方策であると考えられる。元々、立ち食いそばは客層が広い業態である。そうした意味合いにおいては業態としての特異性は「俺のフレンチ」と比較しあまり大きな「差」は感じられない。
オープン当初の「俺のそば」の頃、メインとなる肉そばを食べた時感じたのは、勿論味は違うのだが、虎ノ門にある「港屋」という立ち食いそばの人気店が思い出された。この港屋は周知の三田にある「ラーメン二郎」のそば版と言われ、そのデカ盛りと共に、食べ飽きないように生卵を無料にして変化をつけるスタイルなど、その多くを「俺のそば」に取り入れていると感じたのである。(「俺のそば」の場合は生卵は10円と有料となっている)
顧客のためになる良き点であれば真似をしても構わないのであるが、若干懸念するとすれば手直しをしたネーミングにもなっている「だし」の特徴、その「差」はどう評価されているかである。ちなみに、
俺の肉そば(冷)700円、(温)600円、
場所;東京都中央区銀座5-1 東京高速道路南数寄屋橋ビル B1F
営業時間;月~金11:00~15:00、17:00~23:00

「俺の」はこの新しい業態を導入して3年程経つが、現時点での成功要因は「差」が一番大きく感じるフレンチを導入したことによる。そして、ネーミング、コミュニケーションにおいても、「俺の」という極めてユニークなものとし、その「差」もまた極めて大きい。そうした意味で、4つの「差」づくりがうまくいった事例となっている。そうした意味で、「俺の」という業態は固有な第3の世界、ブランド創りにはまずは成功したと言えよう。

ところで「俺の」という戦略によく似た、というより同じ戦略をとっている飲食チェーンビジネスに気づくことであろう。「俺の」に少し遅れた2013年12月銀座に1号店をオープンさせた「いきなり!ステーキ」である。立ち食い&着席という業態も同じであり、そのネーミングも”思いきり食べて欲しい”という思いから、店名に「いきなり」とつけたとのこと。「俺の」と同様意外性があり、他のステーキハウスなどとの違いをまさに店名にすることによって、新しいステーキ店としての「差」、新しいイメージが想像・創造されている。
メニューも食べたいだけ注文できるようにグラム単位となっている。ちなみに、
「リブロースステーキ」;1gが6円
「ヒレステーキ」;1gが9円
価格設定もわかりやすく、好みとお財布を相談して決められる良きメニューシステムとなっている。上記のようながっつり食べたい向きと共に、「国産黒毛和牛サーロインステーキ」は1gが15円。運営しているのはペッパーフードサービスでステーキやハンバーグなどの飲食店を展開している企業であるが、2013年の輸入牛肉の規制緩和以降、赤身肉ブームやシニアももっと肉を摂る必要があるとの指摘もあり、そうした肉食ブームの追い風を受け、「差」創りも現時点では順調となり、急速にその店舗展開が進んでいる。

サイドメニューに「差」をつくり、メインメニューとなった立ち食いそば店


立ち食いそばと言えば、江戸時代からの日本のファストフーズであるが、駅のホームで食べる忙しいサラリーマンの定番飲食業態店の一つである。全国にはご当地立ち食い蕎麦という特色ある業態も数多くあるが、全体としてはそのメニューは時代と共に進化している。東京においては、ここ数年その立ち食いそば店のメニュー自体に大きな質的変化が出てきている。その変化とは”たかが立ち食いそば、されど立ち食いそば”といった蕎麦自体の進化ではない。そば粉の産地に凝る、打ちたて茹でたてにこだわる、こうした立ち食いそば店は数多くあるが、そのメニュー作りの「差」に極めてユニークな店が出てきており、街のビジネスマンの大人気店となっている。
まずその立ち食い蕎麦店の一つが「よもだそば」である。日本橋と銀座という地価の高い場所にあるそば店であるが、写真を見ていただけたら分かるように店先のノボリにはそばと共に「本格インドカレー」とある。蕎麦においても特徴ある特大かき揚げそばなど嬉しいメニューが人気となっているが、なんといってもカレー専門店並みの本格インドカレーを出しており、そのインドカレーを食べに来る客もいて、地価の高い一等地でも客層が広がり経営が成り立つ良き事例となっている。立ち食いそば屋だけど、でも普通とは異なる立ち食いそば屋という第3の世界が構築されたということである。ちなみに、

特製インドカレー490円/半カレー270円(定番特大かき揚げそば370円)
他にも外国人向けのメニューとしてチーズそばといった変わりそばもある。
場所;日本橋店 東京都中央区日本橋2-1-20 八重洲仲通りビル1F
銀座店 東京都中央区銀座4-3-2 銀座白亜ビル1F
営業時間;平日7:00~22:00

もう一店立ち食いそば店を挙げるとすれば、サラリーマンの聖地新橋で行列ができる店がある。昭和59年創業丹波屋という6~7名も入れば一杯となる小さな店であるが、この店の人気サイドメニューもカレーである。ここ丹波屋のカレーはネパールカレーで、代々続くアルバイトのネパール女性が作ったもので、当たり前の話だが、「本格ネパールカレー」である。
多くの立ち食いそば店のメニューの作り方の一つがセットメニューである。普通の立ち食いそばの場合はおにぎりや稲荷寿司とのセットであるとか、ごくごく普通の半カレーのセットが多い。丹波屋の場合もよもだそばと同様ミニカレーとのセットが多いようだが、そのネパールカレーが売り切れてしまうことが多いようだ。是非食べてみようと新橋に行った日も、まだ12時を少し過ぎだというのに、店頭には「カレー売り切れにつきすみません」との張り紙が掲げられていた。いかにカレーフアンが立ち食いそば店に行っているかである。このカレーについては、「マツコ有吉の怒り新党(テレビ朝日)」で紹介されたことが行列を生み、またカレーの品切れの火付け役となったようだ。ちなみに、

インドカレー 410円/ミニ280円(定番春菊天そば370円)
場所;R新橋駅 新橋駅烏森口から徒歩2分 ニュー新橋ビル1階/営業時間;7:00~23:30

サイドメニュー戦略の広がり

サイドメニューと言うと、まず思い出すのがファミレスにおけるデザートであろう。その中でも大ヒットメニューになったのが「ナタデココ」で、1992年ファミリーレストラン「デニーズ」の新しいデザートとして登場したメニューで、一大ブームを起こす。周知のように独特の歯ごたえがある食感、しかもカロリーが低く、食物繊維が多いのでダイエットに良いと若い女性から圧倒的な支持を得たメニューである。こうした特徴、他にはない「差」もさることながら、そのネーミングはフィリッピンの常用語でもあり極めて独自なユニークなものであった。「ナタデココ」は従来のデザートとの「差」、更にはデニーズというファミレスブランドに新しい「何か」「差」を創り得た良き事例であろう。

ところで大手回転寿司チェーン店と言えば、スシロー、かっぱ寿司、元気寿司、そしてくら寿司となるが、中でもくら寿司の業績が群を抜いている。特に営業利益面においては外食産業においてもそうであるが、他の回転寿司チエーン3社と比較し極めて高くなっている。その背景にはマグロに代表される寿司ネタという原材料の高騰、更には寿司職人不足がある。何故、くら寿司が高い利益を得ることができているのか、そのメニュー戦略の一つがサイドメニューの強化、どこにもないメニューの開発にある。

くら寿司のサイドメニュー戦略に移る前に、外食、特にファミリー層を主対象とした外食産業の傾向を簡単に説明しておくこととする。前述のデニーズではないが、順調に成長してきたファミレスも2008年のリーマンショックによる景気後退により、4~5年間にわたり大手三社で500店もの店舗閉鎖を余儀なくされた。一昨年の夏頃から回復基調を遂げているが、その原動力となったのも新規メニューの導入であった。ここではファミレスの詳細については触れないが、実は回転寿司チェーンもファミリー向けのサイドメニューの強化を図ってきた。業界的に言うと、回転寿司のファミレス化となる。つまり、業際がここでもどんどん無くなってきたということである。

こうした業際が無くなってきた中でのサイドメニュー戦略であるが、周知のようにかなり思い切った戦略が採られている。これは創業者である田中邦彦社長の「安くておいしいだけでは飽きられる」との信念によるものと言われている。多くの回転寿司もファミレス同様デザートを強化してきたが、くら寿司の場合のサイドメニューは、例えばラーメンというそれだけで一つの専門店メニューになるような戦略である。勿論、生半可なラーメン専門店顔負けのクオリティも持ったラーメンである。
ちなみに、2012年に導入された「ラーメン」は魚介系醤油からとんこつ系醤油まで8種類と充実されており、全て360円である。
結果、どのようなものとなっているか、サイドメニューの浸透とともに、客層も広がり、しかも客単価が上がってきたということである。
更に、CMでも知られているように、寿司屋の「シャリカレー」の導入である。酢飯にカレーというありそうでなかった、意外性のあるカレーであるが、これはこれでさっぱりと食べられるカレーとなっている。
このカレーもシンプルな「シャリカレー」は350円、定番であるかつなどをトッピングしたカレーは450円で8種類、全10種類のメニューとなっている。
寿司屋のラーメンについてはそれほどの意外性、驚きはないが、やはり「シャリカレー」となると少しの驚きと共に、一度は食べてみたいという気持ちが動く。つまり、明確な「差」が生まれるということである。しかも、客単価も上がり、客層も広がるという戦略となっている。
こうした戦略を可能としているのも、寿司屋の基本である「にぎり」、なかでも「熟成まぐろ」一貫100円という商品があればこそである。

こうしたヒット商品を生むまでには多くの失敗もあったとのこと。ヒットしたラーメン以前にも1998年には「無添加ラーメン」という屋号で専門店をオープンさせているが、わずか1年で撤退している。また、10年ほど前にはコーヒーを販売したが売れずに撤退。以降、検討を重ね、寿司を食べた後、さっぱりした飲み物に変え、2013年に再度販売にふみきり、一定の評価を得ている。スタートは「回転寿司」という業態であったが、回転レールの上に乗るメニュールは、まさに業際を超えたメニュールに向かっているということだ。回転寿司のファミレス化も次のステージに移ってきたと言えよう。(後半へ続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:10Comments(0)新市場創造