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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2015年07月22日

世論というビッグデータ 

ヒット商品応援団日記No619(毎週更新) 2015.7.22.

夏休みに入ってしまったが、いつもであればその前にJTBなどによる旅行動向の予測を踏まえ何かライフスタイル上の変化、消費変化が起きているか書くのが従来のあり方であった。この夏は5月のGWの旅行の傾向の広がりはするもののあまり大きな変化はなかった。前回のブログのように消費増税以降の消費は極めて堅実なものとなっており、マスメディアが煽るようないわゆる「ブーム」に左右されない消費を見せている。安近短という大きな潮流は変わらず、更に言うならば「近」という国内旅行が増えている。円安ということもあるが、やはり消費増税の影響が大きい。そして、旅行という非日常を楽しむ特別な夏休みということもあるが、より日常の小さな楽しみ、例えば家族や友人によるバーベキューといった楽しみ方も、いつもであれば自宅の庭や遠出してもお台場などでのものが、2~3泊のミニ旅行として昆虫採集や観察、川遊びといったアウトドアの夏休み、その中でのバーベキューになるということだ。残念な結果となってしまったが、静岡県西伊豆町での感電死事故に遭われた家族のような夏休みである。

ところでここ数週間、安保法制と新国立競技場問題が話題の中心となっている。このブログでは政治ブログではないため基本的には取り上げないが、過去において「政治世界」で特筆すべき大きな社会変化が見られた時があった。それは小泉政権誕生に見られた「劇場型政治」、「劇場型コミュニケーション」についてで、過剰な情報社会にあって「伝わらない」ことへのひとつの突破方法としての手法についてであった。その時のキーワードがあの「サプライズ」で、以降サプライズ体験を経るに従って、その「驚き度」は次第に低下し、今やそうした手法をとること自体への拒否感すら生まれつつある。前回のブログである「ブームはバブル」という認識につながるものである。

今回の2つの政治課題に対する「世論調査」が実施されているが、政権の支持・非支持といったことの是非や意味合いではなく、その背景にある「国民の意識」のあり方について興味ある結果が透けて見えてきている。その第一は安保法制案についてであるが、多くの新聞各社の政権支持率については概ね非支持が支持を上回っているが、その内訳について、従来の世論調査であれば野党に支持が移り高くなるのだが、その野党第1党である民主党の支持率には大きな変化はなく、低位横ばい状態となっている。この民主党の見方については多様な考えがあるが、一言で言えば政党における政策に「信」を置けないということであろう。つまり、政権交代以降、選択肢を持てない政治状況が続いているということである。結果、自らの理解と意志を持って非支持を表明したということである。こうした非支持の一部の人たちがツイッターなどの呼びかけに応え自然発生的に国会周辺に集まり声を上げたということだ。まさしく「無党派」、いや「自党派」といった方がより正確であろう。オピニオンリーダーが既成の党派から生まれるのではなく、自らが「ひとり党派」になる時代が政治においても始まったと見るべきである。

また、新国立競技場の建設問題についても80%という多数の人が反対意見を述べており、安部総理による白紙撤回・ゼロベースで再度見直すとの発表があり、「ちゃぶ台返し」という軽い言い方もあるが、そんな表面的なことではない。1000兆円を超える国の債務がある状況にあって、消費増税を受け入れた、あるいは受け入れざるを得なかった国民にとって、その建設費用とオリンピック以降の使い道については単なる不満どころではない。ましてや1年半経った今もアベノミクスの成果は実感できていない。新聞を始めとしたマスメディアはこうした背景については一切書いてはいないが、政権与党は十分承知しており、白紙撤回・ゼロベースによる見直しを行わなかった場合、おそらく更なる支持率急落に向かい、参議院に回された安保法制案が60日ルールで成立したとしても、問題は続くと予測される、という背景からであろう。勿論、建設予算が抑えられ、負の遺産として次世代につけを回すことなく、選手アスリートには力を発揮してほしい。

ところで、政治評論家は現政権を「世論=支持率」を気にする内閣と呼んでいるが、その本質は政治においても個人の意見が各々「表」に出てくる時代になったということである。それは個人が情報を受発信する時代になったということ、それが次第につながり合って、ネットワークを形成し、一つの社会を創るようになってきた。いわゆるソーシャルネットワーク社会のことであり、政治家はマスメディア(TV/新聞)によって世論をひっぱっていくオピニオンリーダーだけを見て判断していく時代から、FacebookをはじめとしたSNSに登場する無名の個人(大衆)の動向が鍵にになることを知っているからである。従来無党派というと、政治に無関心な層としていたが、実は無関心どころか逆に理解度の高い関心層、見極める力を持った成熟した市民が誕生し始めたということだ。

消費の世界では既に10年以上前から、こうしたオピニオン世界における主人公の交代が行われ、膨大な個人情報を分析するために「ビッグデータ」なるものが生まれた。そして、周知の巨大流通企業であるウオルマートにおける需要予測を含めた受発注システムの構築といったビジネスにおける傾向の発見などに駆使されてきた。選挙時期になれば各政党は選挙情勢として、程度の差はあるものの多種多様な調査データや既存情報を活用して戦略を立てると思うが、現政権がどこまでマスメディア各社の世論調査を始め、ネット上にあるツイッターやFacebookなどのSNS情報というビッグデータをシステムとして解析しているかわからないが、政治の世界にもビッグデータ的な情報活用が見られるようになった。裏返せば、個人・大衆という主人公交代の波がやっと政治にも波及してきたと言えるであろう。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 10:49Comments(0)新市場創造