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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2014年08月26日

未来塾(9)「商店街から学ぶ」洪福寺松原商店街(前半) 

ヒット商品応援団日記No590(毎週更新) 2014.8.26. 

第9回の未来塾は洪福寺松原商店街から学びます。横浜の生活者にとってはなじみのある商店街ですが、東京の生活者にとってはほとんど知られていない「ハマのアメ横」と呼ばれるユニークな商店街です。上野のアメ横と同様「安さ」を売り物にした商店街ですが、その「安さ」の奥にある商店街の原点とも言うべきポリシーを学びます。




「商店街から学ぶ」

時代の観察

洪福寺松原商店街


横浜には3大商店街があり、その賑わいぶりは各々異なり、そのなかでも親しみを込めて「ハマのアメ横」と呼ばれる洪福寺松原商店街がある。実は以前から友人にその賑わいぶりを聞いていたが、どんな激安ぶりなのか興味をそそられ何回か炎天下の商店街に足を運んでみた。
その実感であるが、今日の激安の原点である「わけあり商品」「ローコスト経営」「賑わいづくり」「売り切る力」「小売業はアイディア業」「人なつっこさ」「業種を超えた安さの追求と共有」・・・・・町の商店街の原点、商売の原点ともいうべき要素が至る所で体感した。
今、上野のアメ横は上野という街自体が変わりつつある。上野公園側にはおしゃれな飲食店が入る商業ビルがつくられ、アキバのAKB48に触発されて「ご当地アイドル」の発表舞台がつくられる。一方、アメ横センタービル地下の食品売り場に代表されるようにアジア系、中国系飲食が至る所にに進出している。年末の買い出し=アメ横というイメージから変わりつつある。街は常に変わっていくものであり、もしかしたら、あの懐かしい人ごみで溢れる市場感覚はここ洪福寺松原商店街にしか残らないのではと思われるぐらいである。東西250メートル、南北200メートルに約80店舗弱と規模は極めて小さいながらあの「上野のアメ横」のもつ匂いを残す商店街であった。


洪福寺松原商店街は横浜から相鉄線に乗り3つめの天王町駅から徒歩5分ほどのところにある。横浜の3大商店街の内、横浜橋通り商店街は横浜市営地下鉄阪東橋駅徒歩2分、六角橋商店街は東急東横線白楽駅の駅前にある。前回の戸越銀座商店街を始め多くの商店街が駅前という好立地にあるのだが、松原商店街は砂町銀座商店街と同様に駅から離れたところにある。
何故「ハマのアメ横」と呼ばれる名物商店街になったのか、商店街ビジネスの原点が実は松原商店街にもあった。
その松原商店街の誕生であるが、どこか上野のアメ横を思い起こさせる共通するものがある。昭和24年米軍の車両置き場として接収されていた天王町界隈や松原付近が解除返還される。住宅もまばらだった一角に昭和25年1号店とも言うべき萩原醤油店が開店する。醤油1升につき3合の景品付きで値段も安く評判を呼ぶ。その後八百屋、乾物店、魚屋など相次いで店舗を構える。
昭和27年には18店舗になるが、周辺の住宅はまだまだ少なく、ある程度広域集客することがビジネス課題となる。そこでつけたキャッチフレーズが「松原安売り商店街」であった。上野のアメ横も戦後の焼け野原からの、ゼロからの出発であった。そして、お客を呼ぶにはどうしたら良いのか、まだまだ物が不足している時代にあって、安く提供することが「上野のアメ横」も「ハマのアメ横」も同様の商売のポリシーでありその原点であった。


元祖わけあり商売

商店街創業のなかでも、今日の集客の中心的店舗である魚幸水産は当時からユニークな商法であった。三崎漁港や北海道から直接仕入れ激安で売りまくる。今日でいうところの「わけあり商売」を当時から行っていたということである。
炎天下ということもあり、店先には鮮魚は並ばれていないが、入り口の奥まったところではマグロの解体ショーと共に、ブロックになったマグロを客と相対で値段をやり取りして売っていく、そんな実演商売である。これも上野のアメ横商売を彷彿とさせる光景が日常的に繰り広げられている。

魚幸水産と共に、商店街の集客のコアとなっているのが外川商店という青果店である。年末のTV報道で取り上げられる青果店であるが、次から次へと商品が売れ、売るタイミングを逃さないために、空となった段ボール箱をテントの上に放り投げ、一時保管するといった松原商店街の一種の風物詩にもなっている青果店である。
炎天下の昼時という最も買い物時間にはふさわしくない時であったが、テントの上には段ボールの空箱がいくつも積まれていた。
この外川商店も激安商品で溢れている。季節柄果物は桃の最盛期で1個100円程度とかなり安く売られている。


また、この外川商店も魚幸水産と同様、見事なくらいの「わけあり商品」が店頭に並んでいる。写真の商品はきゅうりであるが、なんと一山100円である。そして、見ていただくとわかるが、見事なくらい曲がった規格外商品である。商店街には青果店は他にも3店ある。例えば、規格外ではないまっすぐなきゅうりを売っている青果店の場合、一山150円であった。
こうした商品が店先の路上にまで進出して売られている。実は、この商店街の南北に伸びる通りは旧東海道で10メートルほどの道幅があるのだが、これもルール違反ではあるが、道幅は半分ほどになり、結果として一つの賑わい演出につながっている。
冒頭の写真もこの外川商店の全容写真であるが、他の店もそうであるが、その多くはテントとパラソルが店先のフェースとして使われている。


テントとパラソルが商店街のアイデンティティ

テントとパラソルからイメージされるのが市場、マルシェである。洪福寺松原商店街も多くの商店街と同様振興組合があるが、その誕生と成長のコンセプトである「松原安売り商店街」が商店街全体のイメージをつくっている。そのシンボル、アイデンティティがテントであり、パラソルである。
次の写真はそうした店頭の風景写真である。




どちらかというと、上野と同様の戦後の闇市的雰囲気を醸し出している商店街であるが、このカラフルなテントとパラソルによって、他には無い独自な世界をつくり出している。

エブリデーロープライス、毎日が特売日


エブリデーロープライスをポリシーに世界No1の流通企業になったのはあのウオルマートであるが、そのウオルマートを見に行かなくとも日本にもそうした企業があり無借金経営を果たしているのがスーパーオーケーである。周知のようにスーパーにおけるわけあり商品の元祖でもあるのだが、特売というセール設定を無くしたスーパーである。結果、特売の折り込みチラシといった経費を無くすこととなり、これもローコスト経営へとつながる。ちなみにオーケーの経営の目標は「売上高総経費率を15%以下に抑える」というローコスト経営にある。
ところでオーケーのように全体システムとして実施してはいないが、基本的な考え方はこの松原商店街においても至る所で見られる。
写真の値書きの上に「本日限り」とあるが、3回ほど日を違えて見て回ったが、毎回同じ「本日限り」であった。
あるいは不二家の菓子ぺこちゃんも50円とこれも激安である。

こうした個々の商店と共に、ここ松原商店街では横水市場という業務用スーパーも出店している。周知のように量的には大袋商品が多いが、それほどでは無い商品も売られている。また、面白いことに、奥まったところにある鮮魚コーナーでは普通の刺身類なども売られており、あるいは青果や酒類も売られ、業務用ではない小さな単位の商品も安価で売られている。業務用スーパーではあるが、一般顧客への小売りを意識したMDとなっているのは、推測するに最近流行の業務用スーパーのFC店かもしれない。

更にユニークなことであるが、物販店以外の美容院についても激安サービス料金となっている。松原商店街は80店舗弱の商店街であるが、激安は魚幸水産や外川商店だけでなく、業種を超えた「安売り」、まさに「松原安売り商店街」というコンセプトに基づき、どこよりも強いパワーを創ることに成功している。エブリデーだけでなく、オールショップロープライスとなっている。

名物づくりへのチャレンジ


このようにハマのアメ横と呼ばれるように「安さ」は大きな名物となっている。その中心は前述の魚幸水産や外川商店によるわけあり商売であるが、小さな商店も個店ならではの名物づくりにチャレンジしている。例えば、ぼけた写真で申し訳ないが、サン・ペルルの半熟卵入りのカレーパン(200円)もその一つである。少し辛めのカレーに半熟卵がほど良く合ってなかなか美味しくいただいた。
また、こうした商店街巡りの楽しみの一つがこうした「買い食い」であるが、懐かしいハムカツが(1枚65円)精肉店で売られていたので、食パンに千切りキャベツと一緒にはさんで食べたが、昭和30年代にタイムスリップした。
更には、知る人ぞ知る段階であると思うが、キムチの冬伯の唐辛子みそやキムチ類もなかなか美味しく、聞くところによると近隣の焼肉店が買い求めに来店すると言う。これも一般販売だけでなく、業務用需要をもまかなっている専門店ということだ。
砂町銀座商店街にも煮卵やシュウマイ、おでんといった名物惣菜が沢山あったが、戸越銀座商店街にはなかった名物が、ここ松原商店街には存在している。(後半へ続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:16Comments(0)新市場創造