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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2014年01月15日

激しい駈け込み需要と価格表示

ヒット商品応援団日記No568(毎週更新)   2014.1.15.

年が明け一斉にバーゲンが始まった。今年の新春売り出しは百貨店やSCといった流通だけではなく、家電量販を始めインテリア・家具など大型専門店が消費増税前の「駈け込み需要」を全面に出した売り出しとなっている。そして、消費者側も旺盛な消費を見せている。恐らく売り出しを組んだ百貨店やSC、専門店は予測以上の売り上げになっていると思う。
こうした駈け込み需要のあり方で更に予想以上の売り上げを上げたのが「夏のボーナス払い」を実施した百貨店である。つまり、今お買い上げいただくと消費税5%のままボーナス時に支払うことになるというカード戦略である。実は昨年秋口から百貨店を先頭にカード顧客の開拓が盛んになった。この目的はリピート顧客の開拓と増税後のポイントプロモーションに備えてであったが、顧客の側は百貨店以上に「消費税」にシビアで8%と5%の差3%のお得を見事に手に入れているということである。

ところで日経新聞を始め経済の専門家は4月の消費増税導入は限定的で夏には回復基調になり、10月からは昨年度並に戻ると楽観的な予測をしている。しかし、表向きはそうした言説を繰り返しているが、消費する側は極めて厳しいものとして受け止めている。ちょうど都知事選が始まるが、事前のメディア各社の世論調査を見ても、景気や福祉、原発に関心を寄せており、オリンピックへの関心は低い。オリンピックを景気浮揚への起爆剤とする政府の考えとは異なり、極めて冷静に景気を見ているということだ。
3月に向け更に激しい駈け込み需要が想定されるが、メディアも経済の専門家も増税後の消費予測に欠けているのが10数年続いてきた消費者のデフレ心理である。5年ほど前低価格競争の先に「訳あり商品」ブームが起きたが、今また「駆け込み」ブームが起きている。これら全てはデフレ心理が引き起こしたブームである。新しい価値の創造、それが気に入れば一定の高い価格の商品でも買うが、一般的平均的なコモディティ商品であれば比較しより安い価格の商品を買う。その顕著な例が、百貨店で実物商品を見て、後は安いネット通販で購入する。既に数年前からこうした傾向、百貨店のショーウインドー化が始まっている。

先日の日経新聞にマクドナルドの業績が発表されていた。12月の既存店売り上げは前年同月比9%減、6ヶ月連続で前年を割り込んでいるとのこと。その内訳であるが、客単価は3.5%上昇したものの、客数は12.1%減となり、この結果は値上げによるものであることは自明である。原田氏に替わったカサノバ新社長は次々とチキンを含めた新メニューを導入し、昔ながらのアメリカンテイストの広告を展開しているが、元の集客にはほど遠い結果となっている。しかも今頃になって宅配強化を打ち出しているが、メニューだけでなくいかに業態としても遅れてしまったかである。2010年から始まっている大量閉店・リストラであるが、今年度も閉店が続くであろう。

こうした消費者に対し、増税の壁をどう超えるか、企業各社の対応が見えてきた。分かりやすく解説した記事が日経MJ(1月8日号)に出ている。ある意味、対顧客への戦略は「価格表示」に表れ、その価格表示の問題点は一言で言うと次の2点に集約される。

1、消費者は昨年来のどの調査結果を見ても、慣れ親しんだ「総額表示」を求めているが、企業・小売り側は「税抜き(本体価格)」及び「税抜き(本体価格)」と「総額」の併記となっており、企業と消費者との間に違いが出ている。
2、特に、SCにおいては出店テナントの価格表示の方針に任せることから、こうした2つの価格表示法が1つのSC内で行われることとなる。例えば、ららぽーと豊洲の場合、GAPは総額表示でユニクロは税抜き表示といった異なる価格表示が併存することとなる。

企業の意図するところは「価格転嫁」をスムーズに行うことを考えて、「総額表示」ではなく、どちらかというと「税抜き(本体価格)表示」に力点を置いたものとなっている。しかし、消費する側は「総額」で高いか安いかを従来通り判断することとなり、小売り現場・消費者共に混乱することとなる。今回の駈け込み需要の激しさを見るにつけ、お得感はよりシビアなものとなっていくことが予測される。そして、シビアな目は表示内容に注がれることになり、間違いなく価格表示を変える企業が出てくる。そうしたことを見越した自在な価格のラベルを印刷できるメーカーに注文が殺到していると聞いている。

ところで10円刻みで販売されている自販機のドリンク類の販売はどうなるか興味深く見ていた。最大のベンダーであるコカコーラグループは一部の商品の価格を10円値上げし、他の商品を据え置き、全体として3%分を調整する意向であると発表があった。他のベンダーもこの方式を取り入れる方向で検討されるようであるが、一時期80〜90円という低価格自販機が大阪で流行ったことがあったが、こうしたエリアごとの価格差問題や電子マネー対応の自販機はどうなるのか等、未解決の課題は多い。
ちょうどJR東日本の運賃改定におけるICカードと券売機の2つの方式採用と同様で、券売機も自販機も10円単位の扱い方に利用者の納得が得られるような「調整」が検討されているということだ。いづれにせよ、今回の消費税8%導入は単なる社会保障を運営するための財政再建といった側面だけでなく、大きな社会問題、多くの社会システムの改変を伴う激変であると理解しなければならない。(続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:48Comments(0)新市場創造