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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2012年09月30日

消費増税をチャンスに変える

ヒット商品応援団日記No534(毎週更新)   2012.9.30.

前回のブログ更新から1ヶ月が経ってしまったが、この1ヶ月で消費の根底を成す日本経済が大きく変化し始めた。周知の尖閣諸島の領有権をめぐる反日デモ、暴徒化したデモによる焼打ちや略奪、そうした「チャイナショック」によってあのトヨタは中国市場から限定的な撤退を発表した。国内の産業空洞化の象徴であった中国であるが、本格的な進出を始めた1990年代と比較し人件費が高くなり、生産性の高い製造が難しくなり、ベトナムやインドネシアへと移転する企業が出始めていたが、こうした中国離れは加速する。
当然であるが、中国の進出企業の株価は軒並み下落し、更には減速し始めた中国経済の投資窓口となっている上海総合指数は3年数ヶ月ぶりの安値を記録した。
中国に進出している日本企業は2万2000社を超え、つまり業種を問わず大企業だけでなく停滞する国内市場からの活路を求める中小企業も数多く進出しているということである。私の周辺にも大阪に出張するのと同じように上海に出向いているビジネスマンは多い。

一方、消費増税については何回かに分けてブログにも書いたが、既に生き残る為の統合再編の動きが水面下で起き始めている。
今、1989年4月の消費税3%実施、1998年4月の消費税5%実施、その間に起きたバブル崩壊、さらにはリーマンショック、こうした消費をめぐる大きな経済事変について「何が」起きたかを分析している。その「何か」であるが、一番大きな新たな変化は1998年を境に起きた「デフレの波」である。この「デフレの波」の更に進化した新しいビジネス、新しい業態、新しい商品が2014年4月に向けて続々と誕生することとなる。
1998年当時、私は「中抜き」というキーワードを使ってSPA(製造小売業)のビジネス業態を見ていたが、最早SPAによる価格競争力は常態化している。もう一つの「中抜き」はまるごと抜いたビジネスで、その先頭に立ったのが楽天であった。
こうした新しいビジネス誕生と同様に、消費増税を前に次なる「何か」が生まれようとしている。実はこうした「何か」を生み出すと同時に、スクラップする事業や商品、場合によっては企業すらも売却する時代になったということである。

1998年4月消費税5%実施の時に圧倒的な顧客支持を得たのが流通ではイトーヨーカドーとイオンの「消費税分還元セール」と、デフレの旗手と言われたマクドナルドの「半額バーガー」であった。そして、2014年4月消費税8%の実施に際してはどうであるか。答えは明快で、1998年以上の激しい価格を含めた競争になるということである。そのための統合再編である。
奇しきも流通企業とフードチェーン企業の成功例を挙げたが、今回の3%の消費税アップを吸収し、今まで通りの利益を確保するには従来のやり方・努力では到底達成できない。つまり発想の転換が必要になるということである。このことは、大企業だけでなく、町のパパママストアも同様である。
私は3年前のブログに低迷する外食産業について、すかいらーくというファミレスの最後の一店がクローズするニュースに触れて、次のように書いたことがあった。

『ファミレス業態全てとは言わないが一つの時代を終えようとしている。ていねいに顧客を見てメニューが用意できるフレキシブルな業態が支持を得る時代だ。そのシンボル的存在が餃子の王将であろう。あるいは寿司屋の概念を根底から変えた回転寿司が今やファミリーレストランとなった。』

周知のようにすかいらーくは低価格帯のガストへと業態転換し、以降多くの飲食施設はブッフェスタイル、食べ放題業態へと転換した。消費増税はこうした業態転換を激烈に推し進めることになる。

ところで、「収入」に関する統計データは厚労省や内閣府も出しているが、先日国税庁から、サラリーマンやパート従業員など4566万人を対象とした調査結果が報告された。昨年度の平均年収は前年度より3万円少ない409万円であったと。これはちょうど平成元年と同じ水準にまで下がったことになる。そして、最も低かったのがアルバイト比率の高い宿泊や飲食といったサービス業で、230万円であった。更には平均200万円以下であった人は1069万人に上り全体に占める割合は23.4%。
そして、残念ながら、日中間の政治対立が経済へと波及し、景気悪化へと向かっていることを考えると、企業ばかりか個人にとっても収入が増える要素は見当たらない。多くのビジネスマンにとっての課題はこうした情況を前提にした消費増税への対応である。消費は「情報」によって左右される心理市場化されており、基本は将来の収入に対し、楽観的であるか、悲観的であるかによって決まる。暴徒化したデモ隊が乱入し破壊される平和堂や焼打ちにあったトヨタの販売店など繰り返しTV放映されることによって、日本にとって最大の貿易輸出入国である中国とのビジネスの不透明感、不安感が醸成される。そして、消費増税が1年半後には始まる。悲観的心理は増々強くなる。結果、日銀からの発表があったが、お金は消費には回らず、不安定な株式市場でもなく、極めて安全確実な現預金へ貯蓄へと向かっている。

未来は分からない、だから予測は当たらない、というのが私の持論であるが、ユーロ危機は今なお続き、そして今回のチャイナショックである。これだけの悪材料は消費という視点に立てば、暗い未来しか描けない。しかし、考えても分かるが、生活者は消費しないわけではない。ブログにも書いたが、消費増税によって消費回数を減らすといった「収縮」は勿論起きる。課題は「消費の移動」である。「何か」を止めて、「何か」に消費を代えることが起きるということである。その「移動先」の中心点を今から準備し創造することが「次」の消費市場創造となる。つまり、消費税5%を実施した1998年前後に現れたニュービジネスのように。新たな発想による着眼、アイディアによっては、等しくチャンスがあるということである。勿論、そのビジネスフィールドはグローバル市場であり、どんなに地方のビジネスであっても世界へと直接つながっている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 10:48Comments(2)新市場創造