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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2011年03月20日

被災への応援歌

ヒット商品応援団日記No489(毎週更新)   2011.3.20.

前回、東日本大震災の翌日からスーパーの陳列棚から商品が消えた、とブログに書いた。マスメディアはやっと一昨日ぐらいからそうした情況を報じるようになった。どのTV局かは言わないが、被災地のことを考えれば、「買い占め」は許さないとコメントしていたが、まるで分かってはいない。何故、商品が消えたのか、私はいくつかの不安心理が冬眠生活へと向かわせ、備蓄に走ったと指摘をした。その背景を整理すると、
1)首都圏にいた人間であれば今回の地震の大きさM9.0に恐怖感を覚えるほどであった。しかも、M7クラスの余震が近々あるであろうと発表され、更に長野や茨城を震源地とする地震は続いている。そして、福島原発の事故と共に、当然不安心理へと陥る。
2)東京という一大消費地のかなりの部分をまかなっている東北地域が壊滅状態であることから、日常利用商品のほとんどが供給できない状態に陥った。その中には石油もあり、道路事情もあって、物流がほとんど機能しなかった。私はシステム崩壊と表現したが、このことも不安心理を増幅させた。
3)そして、それらの心理に追い打ちをかけたのが、計画停電であった。しかも、13日の夜に突如として発表され、翌日朝の通勤・通学の混乱は報道の通りである。つまり、計画ではなく、無計画停電であった。そして、こうした背景に共通しているのが「情報の不確かさ」であり、「伝えるべき情報の遅さ」が不安を増幅させていた。

今、不安心理を解消するためであろうか、インスタントラーメンもトイレットペーパーも増産体制を組んでおり、お米も十分あるので安心してくださいと盛んにTVを通じ報道されている。高度情報化社会の特徴は、安心してくださいと言えば言うほど、その裏に何かがあるであろうと、疑心暗鬼に陥る。不安心理解消には情報ではなく、リアルさを実感することによってでしかない。例えば、空となった陳列棚に、お米は1人1袋とか、ガソリンは5ℓまでとするのではなく、極論を言えば、欲しいだけ供給・陳列し、実感してもらうということである。もしくは、顧客が不確かさに不安を感じているのであるから、明確に「○月○日の何時には、どのぐらいの商品が入ります」と約束し、それを守って実行することしかない。小売り現場は常にそうした約束によって顧客関係が維持されている。
福島原発についても、当初から安全ですから心配いりませんと報道されてきたが、水素爆発が起き、海外からの危機情報と政府発表との違いがインターネット通じて知らされるようになり、しかも外国人の多くが日本から避難するところまできている。そうした事実としての情報が知らされないところで、いくら安心ですと言われても、「逆狼少年」になるだけである。しかし、東京の生活者はマスメディアを通じて流される「冷静に」と、政府に言われるまでもなく、パニックどころか冷静に行動している。

ところで、前回「ほとんどの人は混乱のなかにあって寛容である。それは、今なお生きるために闘っている30数万人の人達がいるからであろう。黙々と、またそうした有形無形の共助の気持ちがそうさせていると思う。」と我慢の背景についてブログに書いた。
その続きであるが、年明け早々の1月11日に、「二十歳の老人とタイガーマスク現象」というタイトルでブログを書いた。ちょうど就職氷河期にある20歳の若い世代と昨年伊達直人という匿名の人物が児童養護施設にランドセルが送られ、一つの自然発生的な運動として全国へと広がったことを取り上げた。そして、コミュニティが崩壊した無縁社会ならではの匿名連鎖現象であると指摘をし、漫画タイガーマスクの影響などというマスメディアもあったが、そうではない。伊達直人&ランドセルは一つの記号、保護された弱い児童たちへの思いとして、その記号として使われているのだ、とブログに書いた。

さて、今回の東日本大震災においてどんな記号が発信されているか、私の感じとったことを書いてみたい。
ここ数日、私の知人の安否は今なおわからないが、同様の電話やメールが数多く寄せられた。そうしたことは別として、被災地と、特に周辺である東京、そして東京の西側にいる人達との間に、明確な大震災の情報の受け止め方の違い、質・量ともにあることを感じていた。そのことの象徴であろうか、今回の大震災について一番激しく反応したのが関西の人たち、つまり阪神淡路大震災を経験した人達であった。自助、共助、公助と良く言われるが、自助はほとんど不可能な状況であり、今必要なことは共助と公助である。
やはりというか、そうだろうなと思ったのは、中越地震を経験した新潟県が東日本巨大地震の被災者の受け入れを表明したのに続き、関西広域連合は被災者が避難所全体で移る「丸ごと疎開」を受け入れると発表した。そのなかに鳥取県も含まれていたが、その鳥取も大きな地震災害に遭っている。共助も公助も、等しく「経験」が象徴的なものとなっている。

今回の東日本大震災もタイガーマスクこと伊達直人が活躍している。この1週間ほど多くの情報に接して感じたのは、小さなタイガーマスクこと伊達直人が自然発生している。このことはマスメディアが「できることを一人ひとりやろうではないか」というキャンペーンによってではない。勿論、姿の見えない政治家の世界でもない。無名の良寛さん、無名の赤ひげ先生、多くの無名の伊達直人が動いていることを感じた。政治ショーではない、勿論パフォーマンスでもない。ボランティア組織が中心となって動き始めているが、そうした組織以外の人達が小さな単位で義援金を集めたり、役に立ちそうな物資を自治体のHPを見て送ったり。そうした、具体的な小さな支援、アイディア溢れる支援まで。つまり、リアリティを持った経験ある小さなタイガーマスクが自然発生的に現れてきたということだ。勿論、ネット上では被災者の声を伝えるべく、多くのブログなどのサイトで展開され、義援金などのアピールも数日前から始まっている。

発信されている記号として言うと、無名の災害経験者&ソーシャルネットワークということになる。このソーシャルネットワークの意味はSNSとしてのそれも含め、もっと広範な意味合いとしてである。災害がもたらす縁と表現したらチョット悲しすぎるが、そうした縁ネットワークがリアル(被災現実)とヴァーチャル(被災想像)の世界に生まれてこようとしている。バラバラになってしまった社会の単位が再生し始めているということだ。家族、地域、職場、そして情報縁によるコミュニティ、それぞれが新しい共同体再生へと向かっている。行方不明の家族を探す人達や避難所で生まれた自助とそこに見られるアイディア溢れる相互扶助の仕組み。そして、地域を超えた支援。それら全ては新たな共同体再生へと向かうことを願っている。現段階では、その入り口となるキーマンが経験ある小さなタイガーマスクやその組織である。そして、今は政治が全く機能してはいないが、中長期的には政治の世界であろう。

バラバラとなった個人化社会にあって、家族や地域、職場、多くのクラブなど社会の単位でのつなぎ直しが始まる。そのつなぎ直しに象徴的な人物像がタイガーマスクである。勿論、希望は与えられるものではなく、自ら灯すものである。電気が通じない暗闇のなかで、蝋燭の灯りで生活している被災地の映像があった。そうした映像を目にして、自明灯(じみょうとう)という自助の言葉が思い浮かんだ。困難であればこそ、そんな小さな灯りに自ら灯し奮い立たせて生きる力としている。そうした中、新たな応援歌が生まれるかもしれない。それが歌謡曲であっても、Jpopであってもかまわない。既に、YouTubeにはそんな応援歌が生まれているようだ。痩せていってしまった歌も、再び生まれ変わって登場して欲しい。(続く)

追伸 20日の昼、住まい近くの商店街を歩いてみた。スーパーを始めほとんどの店は営業しており、陳列棚にはそれまでなかったトイレットペーパーやティシュペーパーも並ぶ店も出てきた。食品も60〜70%程度は入っており、問題を感じることはない。そして、どの店も照明は半分以下に落としており、駅周辺には数十名のボーイスカウトの少年達が募金活動をしていたことを報告しておく。  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:45Comments(0)新市場創造