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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2011年01月04日

触媒の時代へ

ヒット商品応援団日記No478(毎週更新)   2011.1.4.

新年明けましておめでとうございます。
新年には新聞各社の元旦号を読んで着目すべき視点をコメントしてきだが、今年は例年になくつまらない内容ばかりであった。その象徴と思うが、経済専門紙である日経新聞は、時代の転換期であった明治維新、戦後、そして今日という転換期の認識を基に「先例なき時代に立つ」とし、人口減少・少子高齢化、長期化するデフレ、・・・・・といった問題点の指摘に終わっている。

私が期待する2011年はこうである。
既に昨年その小さな芽が出て来ていると感じていたが、予測ではなく期待を込めて時代をキーワード化するとすれば、それは「触媒の年、新たな価値創造のスタート」の一年になると考えている。周知のように、「触媒」という言葉は昨年のノーベル化学賞を受賞した鈴木、根岸両教授の研究テーマである有機化合物の合成研究に使われた言葉である。私はマーケティングをテーマとしているので、触媒というキーワードの世界をマーケティング的に言うと、異なるモノ同士、人、組織、企業、あるいは商品やサービス、場合によってはエリアや国が触媒の役割を果たすことによって、全く異なる新しい価値世界を創造する時代が始まるということである。今までもコラボレーションやコンソーシアムのように、単なる業務提携を超えて新たな価値創造に向かうことはあった。しかし、それらの多くは、足し算の世界で往々にして相互補完的なビジネスであったが、触媒ビジネスは化学反応のように全く異なる在り方へと変貌し、新しい価値世界を生むことにある。

一昨年、希少金属を得るために今まで廃棄して来た携帯電話を始めとした多くの製品から希少金属を取り出す仕組みビジネスを総称し、「都市鉱山」と呼んだが、今まで無用、不必要として捨て去られて来たもののなかに、宝物が埋もれているということだ。5年ほど前、私は「地方がおもしろい」とブログにも書いたが、その後都心一等地には多くの地方発のアンテナショップが出店し、B1グランプリには数十万人もの人が押し寄せるようになった。こうした埋もれた地方ビジネスや商品を次の質的転換へとはかるためにはどんな触媒が必要なのかということである。例えば、新しい冷凍技術(CAS)によって鮮度を失うこと無く届けることができ、村起こしの触媒になった事例も出て来た。しかし、こうした触媒ビジネスはまだまだ少ないというのが現状である。今のところ、SPAのような製造小売りやわけあり商品化、アウトレットや下取りの仕組み化、こうした触媒変化は今のところ「価格差」だけで、それ以上の新たな価値創造世界を生み出してはいない。

今、インターネットによる質的変化を受けているのは書籍、本であるが、例えばアマゾンのようなロングテールによる質的変化やこれから本格化する電子書籍のような変化である。インターネットや科学技術の世界ではこうした化学反応のような劇的変化が続々と起きてくる。そのことによって私たちのライフスタイルも大きく変わっていくであろう。こうした既に起こっている未来として、身近なところでは予測を越えるスピードで電気自動車が普及していくであろう。私はこのような技術世界に起こる変化は受け止めるだけであるが、日常的に起こっている小さな変化、決して見過ごすことのできない消費変化、そこに見出せる触媒という視座をもってこのブログを書いていくつもりである。

例えば、それは昨年末偶然見たNHKの番組であった。あのモノマネタレント、いや独自な芸を確立していた「コロッケ」の30周年記念舞台の番組である。コロッケ自身が30年の芸能生活の推移を説明していたが、デビュー当初は形態模写であったという。そして、その限界を超えるために声帯模写へと変化させたと。そして、次の変化へと促された世界が真似をする人物をいかにキャラクター化するかであったと。一種のキーワード的世界の創造である。そこには真似や模写といった世界とは全く異質な世界が生まれていた。つまり、タレント活動を継続するためには、変化せざるを得なかったというコメントしか番組では述べられていなかったが、こうした小さな質的変化を促した触媒は一体何かということである。

触媒的活動は数年前から始まっており、その中心にはポスト団塊世代がいる。特に、1980年代ポストモダンを提唱したメンバー、例えば浅田彰氏始め坂本龍一氏、中沢新一氏、等が活発な活動を始めたようである。いや、こうした事例を持ち出すまでもなく、団塊世代の多くは退職し始めており、企業運営の中心はポスト団塊世代へと移行している。ちょうど、昭和と平成という異なる価値観、時代の段差をつなぐことができる、触媒の役割が可能なのがポスト団塊世代である。
また、政治の大きなテーマとなっている地方分権も単に行政単位の改革といった側面からではなく、経済成長といった側面から見ていくと、日本の地方ビジネスと世界市場とをつなぎ、新たな産業起こしの触媒の可能性を秘めている。そして、心ある自治体の首長はそうした活動を既に始めている。

いずれにせよ化学反応の大小はあるにせよ、質的変化が至る所で出てくる予感がしている。数年前から、生半可な付加価値などは独自価値にならないと言い続けて来たが、今年は付加価値なる言葉は死語となり、質的変化という新たな価値創造に向かう。そして、言うまでもなくその「質」とは、市場、顧客が決めることに他ならない。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:41Comments(0)新市場創造