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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2010年05月27日

また君に恋してる

ヒット商品応援団日記No469(毎週2回更新)  2010.5.27.

坂本冬美が歌ういいちこのCMソング「また君に恋してる」がヒットしている。元々はビリーバンバンが歌った曲であるが、私のような団塊世代ばかりか若い世代にも共感を得て、ダウンロードは140万を超えたと報じられた。永く連れ添ってきた二人(夫婦/男女)の男心を歌ったものであるが、こぶしを効かせずに淡々と歌う坂本冬美の歌は、何故か男心にも女心にも、そして若い世代にも通じる歌へと変貌している。

私のような団塊世代の恋愛には、どこか自分に素直になれない「照れ」があった。ちょうどそんな恋愛時代を映し出した歌に沢田研二が歌う「勝手にしやがれ」(作曲大野克夫、作詞阿久悠)がある。1977年のレコード大賞受賞曲であるが、女性に対し素直になれない男は「窓際に寝返りうって 背中で聞いている やっぱりお前は出ていくんだな」「別にふざけて 困らせたわけじゃない 愛というのに照れてただけだよ〜・・・・」と歌う。真直ぐになれないから、気取ってごまかす、そんな若さ故の男と女の気分を歌った曲である。
以来、30数年照れはあるものの「また君に恋してる 」と心の中では言えるような年代になった。そうした意味で団塊世代が共感できる曲ではある。

その「また君に恋してる 」のなかに次のようなフレーズがある。

「若かっただけで 許された罪
残った傷にも 陽が滲む
幸せの意味に 戸惑うときも
ふたりは気持ちを つないでた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
また君に恋してる いままでよりも深く
まだ君を好きになれる 心から」

団塊世代にとって、気持ちをつなぐ「君」は共に暮らしてきた女房であるが、若い世代にとって「君」は誰であろうか。
1年数ヶ月前、不安と未来が見えない時代にあって、アンジェラ・アキは、未来の自分に宛てた手紙なら素直になれるだろう、だから「未来の自分に手紙を書いてみよう」と呼びかけた。そして、生まれたのが「手紙」という曲であった。「拝啓 ありがとう 十五のあなたに伝えたい事があるのです」というアンジェラ・アキからの応援歌を思い出す。恐らく、「君」は恋愛対象としての異性だけでなく、仲間も、そして「未来の自分」をも含めた広い愛すべき対象であるのではと思う。

愛しさ余って憎さ百倍という言葉があったが、男と女の間に愛しさが無くなり、憎さだけの男女の殺人事件が横行する時代。あるいは欲望を失ったかに見える草食系男子、逆に肉食系女子と揶揄される世代論が横行する時代。そんな時代ばかりであると勝手に思い込んできたが、「また君に恋してる 」のヒットはもう一つの時代の空気感を表している。それはひととき心和ませてくれている植村花菜が歌う「トイレの神様」にも通じる世界だ。亡きおばあちゃんと自身の思い出を歌った曲であるが、好きなおばあちゃんには素直になれる、そんな曲である。

ところで、「照れ」を歌謡曲にした阿久悠は、自らの青春時代の恋愛は免許制で資格を取得しなければならなかったと書いている。その免許とは何かというと、「教養講座としての文学を読むこと」、読まない人は「人を思いやり、自分を制御することを知る人間講座の実地を学ぶ」、どちらかを誰に言われることでもなく自覚していた、と言う。無免許で恋愛してはいけないということである。勿論、阿久悠が男から女を通して時代を見つめていたのに対し、女から見ていた松本隆という作詞家がいた。松田聖子という素材を得て、新しい女性像を創り上げたが、いつかこの二人を通し、1970年代以降の時代を見つめてみたいと思っている。
話を戻すが、今免許資格が個人にも勿論社会にも問われない時代にいる。「また君に恋してる 」はラブソングであるが、ラブソングを歌いたい、免許を取りたいとする若い世代も多いということだ。このことは太宰治を始めとした数年前からの古典文学ブームにもつながっている。

過剰な情報が行き交う騒々しさに辟易する時代であればこそ、淡々と語るように歌う坂本冬美の「また君に恋してる」に共感する。強引に消費へと結びつけるわけではないが、その「淡々さ」とは過剰なものを削り、更に削ぎ落とし残るものとしてある。素の魅力、シンプル・イズ・ベスト、ある意味本質・本物に戻ろうという潮流のなかにある。消費に明るさが戻りつつあるとブログにも書いたが、その明るさとはこうした「素に帰る潮流」と軌を一にしている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:37Comments(0)新市場創造