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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2010年04月14日

無縁社会とツイッター

ヒット商品応援団日記No458(毎週2回更新)  2010.4.14.

昨年のヒット商品の一つであったツイッターが更に広がりを見せているようだ。日経MJによれば昨年は月間利用者が250万人に及んでいると報じていたが、政治家を始め、企業の新製品の試食会やモニターリングなど多様な使われ方が表へと出てきた。当初は140文字以内のつぶやくミニブログであったが、その双方向コミュニケーションのスピード、即時性によって、新しい会話メディアとして定着し始めたということであろう。
そもそもプログの発展は、誕生した米国では主にビジネス用として使われていたが、日本に導入されるや「子育て情報」の交換・交流メディアとして、更には自分のペットを舞台へと上げるメディアとして成長してきた。日本の場合は、「話し相手・つながりを求めて」という動機であったということだ。その裏返しであるが、いかに話し相手がいないか、個人化社会の進化と共に生まれてきたメディアと言えよう。

団塊世代以上のシニアにとって、血縁、地縁、職縁というつながりは今なお残ってはいる。しかし、1990年代に起こった多くの神話崩壊、特に終身雇用・年功序列といった会社=第二のコミュニティ神話の崩壊、更には大企業神話、金融企業神話がもろくも崩れるさまを見てきた。今の若い世代にとって職縁というつながりは極めて薄く無縁へと向かってきた。更には、都市を漂流するティーン達、援助交際や薬物汚染に象徴されるような第一の神話であった家庭の崩壊、学校の崩壊。バラバラとなった社会、そうした予兆が明確になったのがツイッターの前身である2ちゃんねるの掲示板への書き込みであろう。2000年代初期、多い日には1日300万件もの書き込みがあった2ちゃんねるであるが、書き込むという行為でそれなりの満足を得ていた時代であった。

こうしたつながりを求めたコミュニケーションはSNSやツイッターへと発展していく。既成のマスメディアが送り手として物語や世界観を一方的に送るコミュニケーションであるのに対し、インターネット上のコミュニケーションはプラットフォームさえ整備できればメディアとして大きく成長できることを証明した。
おもしろいことに、こうした双方向のコミュニケーションから生まれたのが、あの「電車男」である。2004年に出版され、映画化されたものであるが、送り手=作家を持たない新しい物語である。2004年3月〜5月まで、2ちゃんねるの掲示板に書き込まれた匿名の人達によるコミュニケーションである。つまり、匿名が物語の作者であり、主人公ということだ。

ところでこのツイッターであるが、多様な会話メディアとして活用されている。その冴えたるものがラジオ番組であり、いわば匿名レポーターとして番組内で紹介されるといった具合である。どこそこの桜は今は5分咲きであるとか、この地域で一番美味しいラーメン屋さんはどこそこといったように。テーマ次第ではあるが、コミュニティの相互補完メディアとしても機能している。
少し前に、「仮想と現実、行ったり来たり」というテーマでデジタル社会とアナログ社会について書いたことがあったが、インターネットの側から、特にツイッターにおいては、現実、アナログ社会へとその境界を越えてきたということであろう。これは未だ仮説ではあるが、初期の2ちゃんねるにおいては「電車男」のような副産物として新しい物語が生まれたが、ツイッターではより現実的な「出会い物語」が生まれて来ると思う。勿論、こうした新しい出会いを求め、促しているのが無縁社会ということであり、一方的にコンテンツを送るマスメディアへの違和感であろう。

ツイッター的リアリズム、という言葉はまだどこにも無いが、血縁、地縁、職縁といった動かし難い大きな観念から離れた、小さな軽い縁、ゆるい縁結びということだと思う。別な表現をすれば、小さなコミュニティの小さな物語創出メディアということになる。これは私の夢想かもしれないが、ツイッターからヒット商品が生まれて来ると予感している。それは企業がツイッターを通じて行うモニタリングやテスティングといった方法によってではない。2ちゃんねるから電車男が生まれたように、小さな軽い縁から生まれた「何か」が、急速に広がりヒット商品になるという意味である。小さな縁が小さな縁にリンクし、その「何か」を縁とすることに満足を得る。単なる話し相手でもなく、売り手・買い手といった関係でもない、そんな関係をツイッター的リアリズムと呼んでみたい。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 12:30Comments(0)新市場創造