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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年08月23日

消費氷河期へ

ヒット商品応援団日記No394(毎週2回更新)  2009.8.23.

国内初の新型インフルエンザによる死者が出た沖縄県では、流行警報が発令された。高校野球、プロ野球更に相撲界にも感染が広がり、新型インフルエンザの第二波がやってきたということであろう。発生した5月当時の水際作戦は失敗に終わったが、今回の国内感染の広がりに対しても正確な感染者数は不明のままである。厚労省は「感染者は11万人にも上る」(8/21)と発表したが、その推計の根拠となる基礎データを厚労省は持っていない。5月当時、夏場は感染力が低下し、第二波は秋から冬にかけてと勝手にシュミレーションし想定外の早さであると専門家は言うが、全て想定外だから「新型」なのだ。医師木村盛世氏は「インフルエンザが夏に感染力が低下し、冬には強まるという学術的エビデンスはない。冬季の人々の行動特性が感染拡大に影響してはいる、ということはあるかもしれない。だが、ウイルスは湿度及び温度が高い状態には弱い、などと通常いわれていることが、証明されているわけではないのだ。」と発言している。(ダイヤモンドオンラインより)

つまり、予測に値するようなことは何も分かってはいないということである。更に、予防のためのワクチンがマスメディアに取り上げられ始めているが、ワクチン薬害(副作用)の経験を踏まえ上昌広氏は次のように警鐘をならしている。
『新型インフルエンザワクチンの導入にあたって、リスクとベネフィットをどのように考えるか、国民的な議論が必須です。ところが、マスメディアはこの問題を全く報道していません。このため、多くの国民は十分な判断材料を持ち合わせません。これまでのメディア報道を見る限り、多くの国民は新型インフルエンザワクチンを有効と信じ、十分量のワクチンが確保出来れば、「国民皆接種」すべきだと考えているように見うけます。
しかしながら、一旦、副作用が報道されたら、世論は一変するでしょう。きっと、ワクチンの問題点を挙げ、製薬企業や厚労省を糾弾すると思います。これでは、いつか来た道です。羮に懲りて膾を吹く。我が国は、必要以上にワクチンのリスクを強調し、ワクチンの使用を控えるようになるでしょう。これでワクチンラグの完成です。結局、困るのは自分たちですが、自縄自縛となって動けません。そうならないためにも、今まさに、もっと大人の議論をしようではありませんか。』(JMM「第37回:新型インフルエンザワクチンで薬害を起こさないために」より)

流行宣言と共に、早速マスクを買い求める動きが出てきた。新学期が始まる頃、またマスク姿の異様な光景が頻繁にマスメディアに登場するであろう。しかも、上昌広氏が述べているように、大人の議論をマスメディアが取り上げない時、ワクチン問題を含め漠としてあった不安が恐怖に変わらないことを祈るばかりである。つまり、不安心理がパンデミック(感染爆発)しかねないということだ。そして、不確かな感染者数の増加と共に、人が集まることそれ自体が自粛へと動く。イベント、展示会、セミナー、個人においても物理的移動は極端に小さくしかも少なくなる。初秋なのに、既に冬に入るということだ。へたをすると極寒に入ってしまう恐れがある。私が言うところの消費氷河期である。

ところで、ヒトやモノの移動であるが、通販的宅配的な方法は増々盛んになり、移動手段は不特定多数が利用する公共交通からマイカーのようなものへと比重が高まる。この夏のお盆休みのように高速道に集中し大渋滞を起こすということだ。更に、歩いて買い物ができる「徒歩圏内」ということになる。そして、地場スーパーとコンビニの価格競争も生まれる。昨年、タスポ効果でコンビニビジネスは良かったが、今年は嫌な表現になるが、新型インフル効果が追い風になるかもしれない。


消費氷河期というとまるでモノが売れないように考えがちであるが、決してそういうことではない。むしろ逆なのである。勿論、「年間所得100万円減少時代」は改善されないまま進行し、消費全体としてのパイは更に縮小する。しかし、売れる商品、売れる店、売れるサービスは一カ所に集中するのが消費氷河期の特徴である。新型インフルエンザ対策商品、例えば空気清浄器といった自己防衛型商品、あるいは巣ごもり用のレトルト食品や缶詰、冷凍食品は売れるであろうが、心理的にも物理的にも、消費は内側へと向かうということである。その内側にある物差しの第一は、やはり「低価格」である。第二には「不要不急」でないことは消費&行動しないということである。第三には「行動半径は小さくなり回数も減る」ということである。

こうした視点から見ていくと、残念ながら観光産業に真っ先に影響が出てくるであろう。観光は地球が与えてくれた最高のエンターテイメント、作為ばかりが目立つこの時代にあって素直に感動を与えてくれるものだ。しかし、「不要不急」であるであることの一番は観光、旅である。ところで、7月末までの感染者数が突出している沖縄の観光ビジネスは大きな影響を受けていると思う。
消費氷河期のライフスタイルを一言でいうならば、今まで「外」で行っていたことを「内」、「家庭内」「部屋の中」で極力行うことに他ならない。ライフスタイルを衣食住遊休美知といった分け方をするならば、全てにおいて「内」へと向かうということである。高い外着は売れず、安い内着、カジュアルな室内着のようなものは売れる。外食は減り、更に内食は増える。調理道具や冷凍庫が完備した冷蔵庫は売れる。観光、旅といった遊びは更に安近短となり、部屋の中でのゲームやDVDのレンタルなどを視聴することが増えるであろう。従来の家庭内充実型商品から、家庭内防衛型商品へとより鮮明になる。

しかも、食べ慣れた、着慣れた、使い慣れた、使用体験といった経験という安心の裏付けのあるものとなる。新しい、面白い、珍しいといった未体験のものは敬遠される。勿論、「年間所得100万円減少時代」であり、新たなことへのトライをしたくてもできないという側面を持つが、その本質は自己防衛、安定、保守となる。
しかし、変化を求めるのが消費という欲望の本質である。生活のどの分野に出てくるか分からないが、提供者自身もあっと驚くような売れ方をすると思う。これは私の推測であるが、「わけあり的」商品ではなく、「代替的」商品からだと思っている。昨年末、売れない百貨店で唯一売れたのが「おせち料理」であった。海外旅行や実家に戻る「代わり」に、お正月位はチョット贅沢をしようということであった。恐らくコンビニではおせち関連の商品開発が進行中であると思うが、二匹目のどじょうを狙っていると思う。宅配ピザも宅配パーティも同様である。
新型インフルエンザがどこまで蔓延するか分からないが、既に新型インフルエンザを理由としたオレオレ詐欺が出始めている。不安が恐怖に変わるような不安定な心理情況ではこうした詐欺や詐欺まがい行為が増加する。
私は「振り子消費」というキーワードを使うが、恐怖心理に落ち入る時、大きく振り子が振れ、一定の方向へと集団で向かう。一点集中、一極集中、一社、一エリア、一つの集団行動、あっと驚くような消費行動が出現する。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:49Comments(0)新市場創造