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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年07月23日

普通と特別

ヒット商品応援団日記No385(毎週2回更新)  2009.7.23.

流通は生活者のライフスタイルを映し出すというのがビジネスの原則であるが、その流通なかで百貨店業態はその主要な市場である中流層の崩壊と共にその過剰さを削ぎ落とし再編統合に向かっていることは周知の通りである。その一方で、既存店の売上を落とし始め、岐路に立たされ、多様な業態を模索していたのがコンビニであった。そのコンビニの今を、日経MJ(7月22日号)が特集していた。久しぶりに読み応えのある特集であったが、一言でいうと「おにぎりやお弁当、雑誌のコンビニ」から大きく変わろうとしている点である。日経MJは指摘してはいないが、これからのコンビニは「生活者が抱えている日常消費課題を解決する圧縮業態」を目指していると言えよう。

周知のように薬事法の改正により、風邪薬や胃腸薬といった大衆薬がコンビニでも取り扱えるようになった。この改正により、ドラッグ業界も再編統合へと向かっているが、コンビニの便利さに立ち向かうことは難しい。更には系列スーパーのPB商品をコンビニにおいても販売することが始まっており、商品MDの裾野を広げ成長してきたドラッグストアは、例えば「スギ薬局」のようにより専門的な医療分野に進出していくことに活路を見出していくと思う。
あるいは「300円弁当」がヒット商品に入る位価格競争が激化しているが、こうした低価格帯と共に、ローソンは「驚きの商品シリーズ」として従来の価格より2〜3割高い価格帯の弁当を販売するという。あるいはファミリーマートやローソンは刺身や果物などの生鮮品を拡充しているが、こうしたコンビニのMDを見ていくとミニスーパー業態とかなり重なるところも出てくる。
価格競争、困った時の大衆薬のような便利さ(コンビニエンス)競争、こうした競争の中軸に、コンビニもまたあるということだ。

もう一つ注目すべきがコンビニ利用の顧客層についてである。セブンイレブンの場合、50代以上の中高年層は既に全体客数の1/4を超えるまでに至っており、そのための施策が急務となっている。地域や商圏といった立地の違いによって商品MDを変えることは既に行われてきたが、これからは店舗づくりを含めシニアに優しいコンビニが生まれてくると思う。つまり、コンビニも少子高齢社会を映し出しているということだ。高齢シニアの常備惣菜は缶詰やレトルト食品とよく言われ、あるいは菓子類では和菓子を増やしていくといった短絡的発想ではコトの本質に迫ることにはならない。単身シニアが更に増加していくことは明らかであり、シニアライフ全体への設計が必要な時代だ。シニアのライフスタイルにコンビニもまだ追いついていないということである。

こうした生活者のライフスタイルを映し出しているコンビニであるが、その出店のスクラップ&ビルトはビジネス上日常的なものとなっている。2008年度のエリアごとの出店増減は、日本の消費のもう一つの時代の今を映し出している。日経MJは「首都圏への回帰 鮮明」と書いているが、人口移動とパラレル(比例)であると言えばその一言で終わってしまうが、首都圏、都市部への集中化が更に進んでいるということだ。コンビニ全体として店舗数は増加しているが、減少している地域はというと、山形、奈良、和歌山、香川といった地方となっている。都市部への集中と地方の商業空洞化という実態を物の見事に映し出している。このことは逆に鹿児島阿久根市のAZスーパーセンターが買い物のための100円バスを自ら運行したり、あるいは山間の過疎地における移動スーパー販売のような地域に対応した流通が求められ、ここにもビジネスチャンスが生まれているということだ。

1980年代までは生活者のライフスタイルの今を見るには百貨店が最適であった。しかし、その座はコンビニに譲り、そのコンビニも次なる変革に向き合っている。巣ごもり生活にあっては、消費対象が非日常的なものから、普段使いの日常的なものへと移行しており、そうした意味を含めコンビニは巣ごもり消費の縮図の如き在り方を示している。
今、消費支出の在り方をハレとケという言い方をすると、ケの方、日常へとそのウエイトが増している。そのケの中心にコンビニがあり、そうした意味でコンビニ市場は拡大していく可能性がある。 前回、バランス消費という視座の重要性について書いたが、最近のコンビニ の商品MDを見てみると、このバランスをよく取り入れているのが分かる。低価格帯商品と中価格帯商品、洋と和、ヘルシー系とガツン系、あるいは定番とトレンド、・・・・特徴のないMDと言われるかもしれないが、生活者感覚で言うと「普通が一番」ということになる。勿論、立地商圏によってその「普通」は変わっていくのであるが。

今までは価格帯の2極化による業態分化が指摘されてきたが、これからはそうした点を含め、コンビニのような日常、普通、小さな満足、身の丈消費、といった業態と、東京ディズニーリゾートのような非日常、特殊、特別、大きな満足、ここだけ消費、といった業態とに分かれていくと私は仮説している。百貨店業態はその主対象である中流市場が縮小してはいるが、学ぶべきは東京ディズニーリゾートということだ。繰り返しになるが、東京ディズニーリゾートが集客数を落としたとき本格的な「消費氷河期」に入ると私は指摘してきた。この夏の集客結果は出てはいないが、まだ氷河期には入ってはいない。東京ディズニーリゾートが子供達を含め夢中にさせるアトラクションを次から次へと導入している。今、百貨店が行っているのは、スーパー業界の後追いである下取りキャンペーンや300円弁当である。つまり、百貨店は夢中になるぐらいの「特別な店」にならなければ生き残ってはいけないということだ。
生活者はというと、この「普通」と「特別」とを財布の中身と相談しながらバランスよく消費していく。これが巣ごもり生活の実態である。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:49Comments(0)新市場創造