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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年07月08日

納得劇場

ヒット商品応援団日記No381(毎週2回更新)  2009.7.8.

沖縄に行っていたのでブログの更新が遅れてしまった。前回のブログで東国原シアターについて書いたが、1週間も経たない内に、第一幕は指摘した通り終わってしまった。今回のサプライズに対し、瞬間「あっ!」と思わせたが、やはり前回小泉劇場の学習効果からであろう、その意図する世界はシナリオのレベルの低さ、演じる役者が稚拙であることもあって、国民から見透かされたということだ。マスメディアによる世論調査を見ても、自民党からの出馬に対し、70%前後が評価していない。第二幕は上がるのかもしれないが、もし上がるとすればより強いパフォーマンス、仰天プランしか残されていない。つまり、サプライズ戦略を採るとは、更に刺激的なパフォーマンスしか残されていないということである。つまり、第二弾、第三弾といったエスカレートさせるシナリオが用意されているのが普通である。

かなり前になるが、ある商業施設のリニューアルに際し、閉店セールを組んだことがあった。約1ヶ月半のロングセールで、最初の2週間は30%off、次の2週間は50%off、徐々にoff率を上げ最後は棚や什器までをも売るといったプランを実施したことがあった。最初の30%offはいわば認知拡大が主要な役割で、顧客は徐々にoff価格と欲しい在庫商品とのかねあいを考えるようになる。そして、最後の1週間が本当のセールとなり、全てを売りつくすプランであった。そして、この売りつくしの先に「生まれ変わった商業施設」があり、閉店セールは「次」への期待を促すプレキャンペーンのようなものとして位置づけていた。
今回の東国原シアターは地方分権というテーマの認知度を上げることには成功したが、「次」に見えるもの、期待を醸成する何かが見えてこないという致命的なシナリオとなっている。つまり、「生まれ変わった商業施設」の喩えで言うならば、旧自民党閉店セール後の「生まれ変わった自民党」、「生まれ変わった産業構造へと転換する日本」が見えてこないということである。私もそうであるが、多くの国民は地方分権に賛成である。しかし、見えてくるのは与野党どちらが政権を担当するにせよ、政局混乱後の再編をうかがっての自己PR、パフォーマンスしかない。

おそらくこれからも劇場型サプライズがマスメディアを賑わすことと思うが、少なくともそうした学習体験を積んだ生活者が驚くことは少ないと思う。何故なら、非日常的なサプライズ価値から、日常的な納得価値へと大きく転換してきているからである。ここ半年ほど盛んにキーワードとして使われてきた巣ごもり消費とは、日常的な納得価値のことであり、巣ごもりという内側にあっても知恵や工夫を働かせた活発な消費は存在している。
昨年9月のリーマンショック以降、日本にも起こった多くの出来事は異常事態であり、単なる経済の指標に表れているだけではない。もっと単純に言えば、異常な生活になったということである。こうした異常さに向き合い、手の届く範囲で生活を組み立てよう、次にまた異常事態が起きた時に備えよう、自己防衛しようと誰もが考えて生活している。そんな時代に、考えることを止めたような底の浅いサプライズ表現は逆に反発を買うだけとなる。これが「今」を表す空気感であろう。

前回、ブログの最後に「ブランドはその心理効果を失い、アウトレットで買われる時代である」と書いた。ブランドを政府自民党に置き換えて読み込んでみれば分かる。つまり、アウトレット商品を鮮度ある新品の如く売ろうとサプライズ効果を狙っても見透かされるということだ。
私は政治のプロではないが、マーケッターとして、アウトレット商品をより良く売るにはどうすれば良いか考えてみた。それは、誰の目にも分かるように、本当の閉店セールを組むことしかない。つまり、自ら命名した東国原シアターを即第一幕で閉じることだ。そして、批判を浴びることになると思うが、総裁選を行い、誰もがここまでやるのかといった新閣僚人事を大胆に行うことしかない。人気だけでなく、納得価値にふさわしい実績のある人材を登用することだ。例えば、東京副知事の猪瀬直樹を国交省大臣、幹事長もしくは政調会長に舛添要一、官房長官には野田聖子、総務大臣には鳩山邦夫の復帰、行革担当大臣にも渡辺喜美の復帰、つまり少しでも納得価値に迫ることができるオールスター人事、ヒットパレードということである。恐らく、見え方として、あたかも「政権交代」したかのようなキャスティングである。そして、その戦略はと言うと、抵抗勢力(競合)を民主党にはしないということだ。誰を競合とするのか、それは官僚組織となるであろう。つまり、官僚叩きである。

政治のプロではないので、このような第二幕となるかどうか分からない。ただ、こうした政治を劇場として見ていくならば、アウトレット商品再生の訳あり「納得劇場」とでも言えるであろう。
訳あり消費を見ても分かるように、生活者はしたたかであり、かつしなやかさを持っている。これから起こる政治に、どんな評価、判断を下すのか分からない。しかし、バブル崩壊後失われた十数年と言われているが、政治に於いてもやっと納得価値という成熟した大人の価値観を持つに至って来たと思う。つまり、与野党共々納得競争ということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:46Comments(1)新市場創造