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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2009年06月14日

わけありブームの終焉

ヒット商品応援団日記No375(毎週2回更新)  2009.6.14.

夏を目前にして上野松坂屋が行う冬物バーゲンセールに多くの顧客が押し寄せ、話題になっているとTVメディアが報じている。いわば問屋の倉庫に眠っているアウトレット商品のバーゲンセールである。更に、百貨店での下取りセールの対象が衣料や靴ばかりでなく、浴衣まで広がったとも。周知のように、本格的に下取りという販促を初めて行ったのはイトーヨーカドーであるが、過去6回実施され、日経ビジネスによると下取り点数は累計で270万点近くに及んでいる。マスメディアは価格にしか視点を当てていないが、実は生活者のライフスタイルそのものが根底から変わり始めているのだ。相変わらず意味あるニュースとはほど遠い、企業から送られてきたリリース情報を流すだけである。

昨年から取り上げてきたわけあり商品もどの流通も取り扱うようになったが、わけあり業態の一つであるアウトレットの出店が急増する計画となっている。少し前に、ある地方の町長と話をした時、その町にこのアウトレットを誘致するか否かの議論・検討を行ったと言う。その町には高速道路のインターチェンジがあり、近くには町が保有する広大な土地がある。誰が考えてもアウトレット誘致としては最適な条件が整っている町である。町の活性、町財政の改善、こうした表向きの理屈もあるが、アウトレットが出来ることによって周辺の市街地商業は更に疲弊し、唯一ある百貨店は間違いなく撤退する、そんな議論を行ったと言う。それで結論はと聞くと、以前郊外に大きな商業施設をいくつも誘致したが一時活性はしたが、次第に中心市街地は空洞化しシャッター通り化してしまった。今は、その反省から、町が持っている自然や歴史文化資源をテーマとしたビジネスを育てていくことを通じ、そこに住む住民や企業に貢献したいと。単純化して言うと、「外から持ってくる」から、「内にあるものを育てていく」への転換の話しであった。

昨年秋以降、東京ばかりか大阪も同様であると聞いているが、家庭に残る不用品回収の車がひっきりなしに回ってくる。それに合わせたようにリサイクルショップやリペアショップが続々とオープンしている。これもわけあり業態の一つである。リサイクルショップの全国的FC展開も盛んである。既にリサイクル商品の価格競争も始まっている。しかし、よくよく考えれば、インターネット普及のキラーコンテンツの一つがオークションサイトであった。既に新品、中古品、趣味から必需品、車まで、最近では不要となった店舗やオフィス、校舎に至まで数多くの商品が安く個人単位でも流通している。町の商店から百貨店、ネット上まで、わけあり商品で全てが埋め尽くされている。そして、今やリサイクル商品、アウトレット商品、規格外商品、多くのわけあり商品の在庫が家庭にも、問屋にも、メーカーにも無くなっている情況だ。わけありバブルとまでは言わないが、わけありへの過剰さが至る所で見かけるようになった。

以前このブログに書いたが、わけあり商品もそうであるが、マスメディアが取り上げる頃はブームやトレンドのラストシーンであると。つまり、一番最後の段階でそれら情報を手に入れるのがマスメディア、特にTVメディアである。新聞においては記者クラブ制、TV局においては下請け・孫請け会社への丸投げ委託、つまりダイレクトな現場情報がほとんどないのがマスメディアだ。二次情報、三次情報を入手し加工するのが今や主要な仕事となってしまった。
わけあり商品も、わけあり業態も次第にその鮮度を落としていく。つまり、日常化し、至極普通になっていくということである。この1年間で、生活の中にしっかりと定着し始めており、最早ニュースにはならないということだ。

「価格競争のゆくえ」のところでも書いたが、当分こうした競争が続き、わけあり商品やわけあり業態もマスメディアにこれからも露出すると思う。しかし、敢えてわけありブームは終わったと考えた方が良い。
以前、「割り算の経営」というタイトルでブログを書いたことがあった。いわゆる「掛け算の経営」と対比させて書いたものである。売上×店数、客数×客単価、商品単価×数量といった考えを根底に置いた規模経営を、私は掛け算の経営と呼んだ。今、わけあり商品も「掛け算の経営」へと向かっている。つまり、量を追いかけた経営ということである。「割り算の経営」は小さな単位へと、これでもかと割り算をしていく経営である。小売りで言うと、店単位から売り場単位へ、売り場単位からコーナー単位へ、コーナー単位から商品単位へと、小さな単位で経営を考えていくのが割り算の経営である。特に、安心が時代のキーワードとなっており、安心こそ細部に宿るものだ。このままわけあり商品の量を追いかけた経営を進めていくと、大きな落とし穴、社会的問題が発生する予感がしてならない。1年前、あろうことか汚染されていることを知りつつ、いや汚染されていることを熟知し極めて安価な米を転売し利益を得るといった汚染米事件を経験してきた。わけあり商品の仕入れ先がいつしか海外へと見えないところに向かう時、また同様の事件が起きる可能性がある。

私が本格的にわけあり商品を取り上げたのは、1年前のエブリデーロープライスのOKストアに関するブログであった。その中で、OKストアのMDコンセプトに着目した。何故安いのか、その訳を丁寧に店頭表示し、顧客納得を得て販売していくオネスト(正直)コンセプトについてであった。店頭には安いわけあり商品が並ぶが、その裏にはオネスト、顧客に正直に伝える商品ということである。つまり、わけあり商品とは正直商品ということだ。残念ながら、ブームはいつしか本質を見失い、コンセプト、正直さとは正反対の極へと振れていく。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:53Comments(0)新市場創造