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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年04月01日

雑食系生活

ヒット商品応援団日記No354(毎週2回更新)  2009.4.1.

3月28日から始まった高速料金割引制度の結果情報が各道路会社から発表された。データの取り方が少しづつ異なるが、同じ土曜日の交通量と比較し、地方では秋田道1.6倍、岡山道1.5倍、香川の高松道1.5倍、東京近郊の東名高速道などでは1.05〜1.11倍といったところで、交通量としては5月の連休のような渋滞は起こらなかった。移動活性による消費=地域活性とい前評判であったが、皆一様に財布のひもは固かったという。至極当たり前のことで、高速道路を使って1000円でどこまで行けるかといったマニヤックな人間もいるが、多くの高速利用者は、例えば軽井沢アウトレットモールがゴールデンウイーク並みの混雑であったように、この割引制度を使ってブランド品を安く買いにいくという賢明さが表れた結果だ。高速道路のSAの飲食店などは仕入れを増やし、結果売れずに廃棄処分したところが多かったと聞いている。

同じように4月1日以降、多くの値下げが発表されている。サブプライムローン問題を引き金に巨大な投機資金が原油を始めとした多くの資源から一斉に手を引いた結果である。昨年からの円高還元による値下げに加え、燃油サーチャージの大幅値下げ、更には5月からは電気・ガスといった公共料金の値下げ。政府が製粉会社に売り渡す輸入小麦価格を4月から平均14.8%引き下げると発表があったが、日清製粉など大手は5月から業務用小麦粉を値下げするという。5月になったら、パンやケーキあるいは粉製品が少し安くなるということだ。

一方、雇用情況はといえば、予測通り悪化の一途を辿っている。2月の完全失業率は4.4%、完全失業者数は299万人で、ITバブル崩壊時の350万人に迫ろうとしている。いや、6月ぐらいには恐らく超えてしまうであろう。嫌な予測であるが、2009年12月にはかってない失業者数が生まれてしまうであろう。厚労省によると、従業員の休業手当を助成する「雇用調整助成金」の申請は事業所数では3万カ所を超え、対象者数は186万5792人に及んでいるからだ。ハローワークを通じた予測では、非正規社員の失職者数は、この6月までに19万2000人に及ぶと報告されている。年越し派遣村が象徴しているように、格差問題は、その先にある貧困問題へと移りつつある。
ところで3月の年度末株価は昨年と比較し、35%の下落となった。株保有は企業ばかりでなく、シニア層の老後資産や企業年金も大きく目減りしたということだ。保有している株は塩漬け状態で、消費などに向かう事はない。

ここ数年間、既に死語となったグローバルスタンダードの名の下で、「会社は誰のものか」から始まり、見えざる投機資金が世界中の資源エネルギーへと向かい、跳梁跋扈したあげく、破綻し、その結果が私たちの生活の細部にまで直撃する体験をしてきた。急激な値上げ、1年経たないうちに値下げ、保有資産は40〜50%の目減り。周知の輸出激減と波及する雇用不安。翻弄され続けてきた数年である。グローバリズムとはビジネストレンド、ある時代の潮流であって生きるための思想ではない、と実感したと思う。巣ごもり消費と言われているが、巣の中でグローバリズムという嵐が過ぎ去るのを耐えているだけではない。生きる思想を模索しているということだ。

これは私の仮説であるが、巣の中の生活は1980年代に「一杯のかけそば」や「おしん」に共感したような「清貧の思想」に戻る事ではない。「一杯のかけそば」の作者である栗良平は、後に寸借詐欺でつかまるという落ちがついた良く出来た創作話であるが、そうしたことではない。あるいは明治の人の苦労、窮乏や悲惨さ、子守り奉公や女郎部屋に売られたり行商といった「おしん」のような苦労話でもない。もし新しい清貧の思想があるとすれば、「わけあり消費」に見られるように、財布と相談しながらモノにとらわれないもっと明るくたくましい生活思想である。

以前、ブログにも書いた草食系男子vs肉食系女子という対比が話題となっている。その意味合いとは異なるが、結論からいうと私の仮説は雑食系生活、もっと広げれば雑種系生活へ進んでいくと考えている。この10年前後のライフスタイル傾向を見ていくと、洋から和へ、ヘルシーからガツンへ、量から質へ、若者から大人へ、ハードからソフトへ、ハレ(非日常)からケ(日常)へ、・・・・・・こうした変化する様は情報によって振り子のように振れることから「振り子消費」と、私は名付けた。そして、振り子のエンジン役である情報がいかにいい加減であるかを多くの偽装事件を通して実体験してきた。これからも情報に右往左往することもあるが、この学習体験によって振り子の中心点がかなり定まってきている。私はこの生活を雑食系生活と呼ぶ事にした。つまり、振れていた雑居的生活から、咀嚼する雑食系生活へと質的転換を果たしつつあるということだ。

この雑食系生活の知恵とは、時代の変化に合わせて、ライフスタイル的にいうと時に和を取り入れ、時に洋も取り入れる。例えば、狸や狐のように、季節によって得られる獲物、時に小動物であったり、季節によっては柿や栃の実を食べるといった雑食動物ということだ。業態的にいうと、食であれば静かなブームとなっている「食堂」である。あるいは居酒屋のメニューを見ればよく分かる。和食もあれば、中華も、勿論イタリアンもある。但し、それぞれは専門家の手による味・品質があるという前提である。1社であれこれ専門メニューを用意した旧来のフードコートが限界にきて客数を落とし、商業施設から退店しているのも、経営の効率、合理性ばかりに目がいっているからだ。あるいはファッションでいうと、昨年のヒット商品である柄タイツのように、服は高くて買えないけれどオシャレはしたい、そんな代替商品を楽しむのも雑食系と言えよう。
以前、生活者は消費のプロ顧客であると私は書いた。顧客は更に進化してきている。今、求められているのはそうした顧客の雑食の知恵に応えられる「知恵の業態」「知恵のメニュー」である。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:40Comments(0)新市場創造