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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年03月22日

気分消費に向かい合う 

ヒット商品応援団日記No351(毎週2回更新)  2009.3.22.

パソコンに向かってブログに何を書くか思案していたが、そう言えば14年前の3月20日オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた日であることを思い出した。当時、勤務先が渋谷であったが、朝8時過ぎから警察車両がサイレンをならしひっきりなしに走り回り、それだけでも異様な光景であった。続々と伝えられるニュースにTVの前に釘付けであった。何が起きたのかまるで分からない、不確かさへの恐怖感がよぎったことを今でも鮮烈に覚えている。その2年後に同じように想像しえない事件、神戸の「酒鬼薔薇聖斗事件」が起きる。今になって思うと、まさに「不安の時代」の序章であった。

当時起こっていた社会現象の裏側には、バブル崩壊後の大企業神話を始めとした従来の価値観がことごとく崩壊していたことがある。ちょうどそんな時期に当たっている。山一証券や拓銀の破綻といった金融神話、終身雇用という安心神話からいつ首になるかもわからない契約労働へ。更には、インターネットという新しい時代の幕開けが象徴するように、楽天市場を先頭にITベンチャーやユニクロ等デフレ企業が続々と生まれた時期でもある。街にはコギャルと呼ばれた少女達が漂流し、家庭までもが崩壊する、そんなカオスの時代であった。つまり、カオス、混沌の象徴として2つの事件があったということである。今日起きている様々な事件・事象の予兆としてあった。

昨年秋のリーマンショック以降こうした鬱屈した空気は雇用不安という新たな要素が加わり、その度合いを強めている。ところで、今回の高速道路通行料1000円で乗り放題に多くの家族連れが利用しているのも、ガソリンも安くなったし1000円ならチョット出かけてみようかという気分転換を求めていたからであろう。気分を変えたい、ひととき何かに癒されたい、少しでも気分良くしたい、ばか騒ぎはいやだがチョットだけ騒いでみたい、そんな気分の時代にいる。

東京でも例年より早い桜の季節になった。お花見には多くの人が桜を愛でに出かけるであろう。動物園や水族館といった小動物の愛くるしさを観に、あるいは路地裏散策にも出かけるであろう。こうした安近短の小さな気分転換の旅は旅消費だけのことではない。今や暗い気分消費の時代の真っただ中にいる。少し整理してみると次のような時代である。

1、知識集約型ビジネス→精神労働、こころの疲労、こころの強化、
2、圧倒的なビジネススピード→生活リズムの喪失、仕事と生活のモードチェンジの難しさ、
3、個人契約労働化の浸透→見えないストレス、自己解決、非正規労働、
4、金融資本主義の破綻→波及するリストラ、成果主義のいきづまり、

1990年代に起きた旧来価値観の混乱を第一次パラダイム変化とするならば、今日の混沌は格差という問題が表面化しているように、その深刻さの度合いを増している。更に、今年に入り倒産件数や失業者数が増加の一途を辿っている。不安の時代の先は不信の時代である。全てが信じられない時代の入り口にいるということだ。

ともすると暗くなりネガティブ発想に陥りやすい中にあって、少しでも明るい気分になってもらうことが極めて重要な時代となった。まず気分を決める価格という第一ハードルを少し下げ、これならチョット使ってみようか、という気分を創ることから始めることだ。既に始まっているが、これからのビジネス潮流である安近短の本質は、全てを「小」という単位に起き直してみることにある。これなら買えるという小さな価格、サービスであれば1時間を30分に、更に10分にする。あるいは顧客接点の現場では、気分醸成のための小さな笑顔、心地よい一言、こうした何気ない小さな気遣いが気分づくりには欠かせない。こうした小さなサービスの原則と共に、店頭の雰囲気づくりも以前にも増して重要となった。もし販促の予算があるとすれば、顧客に楽しさを提供できるようなゲーム感覚のある計画となる。

以前、「こころに効く商品」というタイトルで「こどもびいる」を取り上げたことがあった。福岡のもんじゃ鉄板焼「下町屋」が飲料「ガラナ」のラベルに「こどもびいる」に張り替えて出したところ、人気メニューになり全国に広がった、あのヒット商品である。チョットお洒落に、クスッと笑える癒し商品である。一種の遊び心によるものであるが、理屈っぽい、肩肘張った表現は受けない時代だ。
ところで東大阪の中小企業が共同で開発し、打ち上げに成功した小型人工衛星の名前は「まいど1号」である。何か、冗談でつけたような名前であるが、シンボルキャラクターを募集したり、開発ニュースを随時流したり、応援する勝手サイトも生まれた。公式サイトSOHLAには「夢を打ち上げるんやない。夢で打ち上げるんや」とある。重苦しい気分の時代であればこそ、夢で打ち上げる、そんな夢にふさわしいネーミングとなっている。こうした夢を形にする試みこそ、気分消費の時代の最もふさわしいヒット商品の在り方であろう。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:46Comments(0)新市場創造