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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年01月06日

今、起業の時

ヒット商品応援団日記No331(毎週2回更新)  2009.1.6.

昨年末から新年にかけて、「明日をつくる者」あるいは「出てこい異端児」というタイトルでブログを書いてきた。一言でいうと、パラダイム変革期という価値観の衝突を担う「人」に着目した訳だが、言葉を変えれば新しいコンセプトが求められているということだ。新しい考え方、新しい目的、新しい意匠、新しい魅力となる新しい概念がビジネス現場に求められている。異端児は常に個人、あるいは少数派であるが、そうした人達によって「次」が創られる。奇しくも1/5の日経MJの特集は、そうした人物を、司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」をなぞって平成の志士として取り上げていた。昨年の金融資本主義の破綻から学び実感したことは、極論を言えばいかに利益最優先のビジネスがもろくはかないかということだ。そして、利益以外に大切にしなければならない価値を思い起こさせてくれた。何のためのビジネスか、誰のためにビジネスをしているのか、今一度ビジネスを始めたときの夢や理想の大切さ、原点をである。未曾有の不況というが、そうではなく、そうした経済価値観が崩れ新しい価値観への転換に向き合うという困難さがあるだけだ。コラムニスト天野祐吉さんは、昨年までを20.9世紀と呼び、今年から本当の21世紀になったと言っているが、まさに名言である。

今年の初売りも様変わりしている。高額商品のお得を福袋の売り物にしてきた百貨店は全て「お得な低価格商品」、しかも「生活必需商品」となった。その象徴例が、銀座松屋の缶詰のつめ放題という町の激安スーパーと同じ手法の売り出しだ。そして、福袋を求めた行列が話題となっているが、客数は若干増加したが売上は前年並み、もしくは5〜8%の前年割れ、つまり客単価を下げた結果となっている。このままの業態やサービスを継続していく百貨店であるならば、本店といくつかの支店だけは生き残るが、あとは20.9世紀として閉店するしかない。

昨年の消費の競争軸の一つが「わけあり消費」であった。どんな訳で安いのか、規格外商品であったり、賞味期限ギリギリであったり、中古商品であったり、再利用レンタルであったり、そうした訳あり内容のアイディア競争であった。しかも年末年始の海外旅行における円高ウオン安による韓国旅行が人気となっているように、生活者は正確な為替情報を踏まえたわけあり消費である。
ところで、こうした小売業の売れ方について、価格価値、経済価値という表面的な見方、安くすれば売れるとした考え方だけをしてはならない。確かに、日本における内外価格差による価格価値を求める生活者は多い。しかし、「わけあり」の内容を子細に見ていくと、そこには安くあるための工夫や知恵が詰め込まれている。あるいは、小さな子のいる家庭では、少し高いが「あのおばあちゃんが作った野菜」を求めるように、安心安全を買う。小売業はアイディア業と言われるが、まさにそうした結果となっている。

パラダイム(価値観)転換期のビジネスは、旧パラダイムであった施設や商品が市場から退場させられ、それらを1/10程度の価格で購入し、再販売するリサイクル業が盛んになる。しかし、新パラダイムが創造されないところでは単なるスクラップだけで、ビルドされることはない。
21世紀の新パラダイムはどんな視座・着眼によってなされるか、新しい技術によって大きな転換がはかられるが、ここではそうした開発を除くと2つあると私は考えている。コンセプトチェンジという言い方をすると、私の持論であるが、1つは全てを最小単位に戻すことから始めることだ。100坪の売り場であれば、まず半分にしてみる。顧客支持という売上はどうであるか。メーカーであれば100品目の売上を見て、上位50品目を特定してみる。更に、半分にし、そうした眼をもって例えば10坪にしてみる。更に、残りの90坪を見ていく。ここで必要な眼とはビジネスの精度である。何故、顧客支持はある一定のコーナーや商品に向かうのか。私はこうした売り場や商品のことを代表売り場、代表商品と呼んでいる。パラダイム変革期には、こうした代表性すらも売上を下げていく。日本市場において、顧客の好みは多様となり、あれこれチョットづつが基本となった時代だ。そこで必要なこととして、顧客は何を「次」に求めているのかを残った資源の中で小さな単位、例えば10坪で仮説をもってトライしていく。次なる好みを探り、新たなコンセプトを見出す試みである。小さな単位であれば投資リスクも小さくなる。駄目であれば、スピードをもって自在に「次」に向かうこともできる。そうした選択肢の1つに海外市場も当然あるであろう。

もう1つが全てを自前でやろうとしないことである。コラボレーションと言っても良いし、共生という言い方もできる。あるいは仕事の単位に置き換えるとシェアリングにもなる。昨年、このブログでも何回か取り上げてきたが、「垣根を越える」ことによって新しい理想とする市場に向かうということだ。従来の取引以外のところに「新しい関係」を築き、トライしてみることである。日本には古くからこうした考えによって全国至る所に朝市とか日曜市といったように市場が創られてきた。従来からの市も良いが、時代にふさわしい楽しみ方もある。確か秋田の商店街であったと思うが、「100円市」も良いと思うし、更に広げて「ワンコイン市」(100円と500円)にしても良い。あるいは、テーマパーク化という理想を目指すのも面白い。今や観光名所化したテーマパークである福岡博多天神の屋台村も最初は少数の屋台から始まった。

こうした事例の延長線ではない、新しい関係づくりもある。製造業とサービス業、産官学と市民、小売業とケータリングサービス業、こんな組み合わせがあったのか、そんな関係から次のヒット商品が生まれてくる。そして、コラボレーションは日常化するであろうし、プロジェクトが日常業務となり、おそらく数年先にはこうした試みはシステムとなっていくと思う。これらを可能にするのが、実は小さな単位の現場経営である。今日ある大企業も、小さな町工場や商店であった。勿論、取引先はじめ回りの人達に助けてもらいながら今日があるのだが、今私たちが先人から学ぶとすれば、何も無かった時代にあって、あったのは夢や理想を目指そうとする強い志しを持っていたことだ。20.9世紀ではなく、21世紀とするために、全ての企業が人が起業する時を迎えている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:27Comments(0)新市場創造