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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2008年12月17日

行列の裏側

ヒット商品応援団日記No326(毎週2回更新)  2008.12.17.

8年ほど前、以前在職していたコンサルタント会社で、私は心理化している市場を解き明かすのに「行列の法則」という手法を使って説明していた。言葉を変えると、情報によって動く顧客心理、行列をしてまでも買いたいという主な心理要因を9つに整理したものである。最近では銀座にオープンしたH&Mの行列、都心のデパ地下に初出店したモンシュッシュの堂島ロールや有機野菜を使ったケーキのポタジェ、あるいは新千歳空港での花畑牧場の生チョコの行列は、それ自体がマスメディアにとって一つの話題となっている。勿論、こうした事例は地域単位にも町の名物店として、ラーメンやさぬきうどん、あるいは観光名所化するエリアや商業施設なんかもあてはまる。

今、マーケティングにおいて課題となっているのは、話題を創り行列を創ることはできるが、それらは瞬時に終わってしまうということにつきる。これは商業だけでなく、お笑いタレントやミュージシャンなんかも同様である。以前、続々とTVに登場するお笑いタレントを称し、吉本興業が大量生産し、TV局というコンビニに店頭化し、売れなければすぐに陳列棚から外される生産販売手法であると指摘したことがあった。
このブログでは問題があるので具体的商品名は挙げないが、スーパーやコンビニ、あるいは百貨店といった流通を見回せばいくらでもある。昨年の夏から秋をピークにスーパーやコンビニの店頭に並んでいたプリンのような豆腐は今や探すのに苦労するほどである。一昨年の秋から翌年の春にかけて、都心の商業施設や百貨店に急速出店したユニークな冷蔵タイプの和菓子店は今や都心部では退店し、地方へと移っている。

情報の時代のニュースとは、好奇心、やじうま的興味ということにつきる。そして、ニュースとは、新しい、面白い、珍しいという鮮度そのもので、持続することは極めて難しい。いや不可能といっても言い過ぎではない。つまり、1回のみということである。サプライズという言葉が最早死語となったように、次から次へと押し寄せる情報によって、否応なく忘れ去られていく。もし、埋もれた記憶を取り戻すことができるとすれば、それは「思い出」ということになる。
つまり、思い出となるぐらいの強い刻印が心に刻み付けられなければ、市場、顧客から選ばれる理由にならないということだ。

さて、こうした情報の時代にあって、持続、継続していくにはどうすべきかである。顧客への思い出づくりをどうすべきかということだ。勿論、こうした前提には商品力、図抜けた商品力がなければならない。本格、本物、厳選、あるいは匠といったプロの手による独自性が明確にわかる商品である。その上で、行列が出来る商業施設や商品はどんな「思い出」物語を創ろうとしているのか、少しスタディしてみたい。

まずH&Mの行列であるが、先日大手デベロッパーの方と興味ある話をすることとなった。それはまだH&Mの行列自体が話題となっていたオープン当初のことだが、行列がまるでない、いくらでも店内に入っていける時間帯があり、それは夜7時以降であるとのこと。マスメディアの取材は夜に行われることはない。つまり、間違った報道ではないが、一面的な情報に過ぎないということだ。そして、H&Mの行列の裏には、前回書いたので多くは書かないが、やはり世界的に著名なデザイナーを起用したトレンド物語がある。

モンシュッシュの堂島ロールについては以前から注目しており、東京進出一号店としてラゾーナ川崎に出店した時も行列ができた店である。元々、大阪のTV局でタレントのYOUがこれは美味しいということが発端にブレークし、東京に出てきたロールケーキの専門店である。このモンシュッシュは人気があるにも関わらず、以降なかなか出店しなかった店である。最近百貨店に出店し、行列ができる店として再注目されているが、行列ができているのは銀座店だけで、日本橋店ではスムースに買うことが出来る、これも情報の一面性であると言えよう。但し、行列の裏側には再注目されるぐらいに時間差を置いた限定出店という戦略を持った点であることは注目しなければならない。既に長い行列はないが、持続して顧客を惹き付けているクリスピークリームドーナツにおける限定出店戦略物語と同じである。市場の規模と行列までしても買いたいという希少性を考えた戦略である。

ところで、有機野菜を使ったケーキのポタジェであるが、出発は北関東のケーキショップからであるが、東京中目黒に初出店した時に注目された店である。今、都心のデパ地下で行列ができているが、その特徴は有機野菜のケーキというとことん健康にこだわったケーキにある。その延長線上ではないが、出店したデパ地下ではオーナーシェフ柿沢さんによる子供達への食育スクールを併行して開催していると聞く。ポタジェの行列の裏には、こうした健康に対する強い思いの物語が潜んでいると言えよう。
最近、話題となり行列ができている花畑牧場の生キャラメルにはタレント田中義剛さんの亡くなった友人との約束といった創業物語があるように、何かのきっかけによって思い出される物語が存在している。前述の既に無い、あるいは無くなりつつある一過的な行列商品にはこうした持続、継続させられるだけの強い物語性はない。

10年ほど前、顧客満足がテーマとなった時代に言われていた格言、「売って終わりの商売から、売ることから始まる商売」を思い起こさせる。売ることから始める物語には「思い出」となるぐらいの強い思い入れが必要であるということだ。数年前までは、9つの「行列の法則」の内、「ニュース&ジャーナル」あるいは「リミッテッド」という情報興味による行列が圧倒的に多かった。今回事例として取り上げた商業施設や専門店は「オンリー」という独自性を持っている。が、いつしか類似商品も現れてくる。そして、必ず行列が終わる時が来る。「思い出物語」はここから始まる。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:18Comments(1)新市場創造