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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2008年12月07日

2008年ヒット商品を読み解く(1)

ヒット商品応援団日記No323(毎週2回更新)  2008.12.7.

日経MJによる「2008年ヒット商品番付」が発表された。昨年に引き続き、私なりにヒット商品の裏側にある消費心理、消費価値観について読み解いてみたい。番付に載った商品の多くは、既にブログに取り上げてきたので、ヒットの着眼点を整理しキーワード化してみたい。
上期のヒット商品のところでも書いた傾向、自己防衛傾向がリーマン・ショックに端を発した金融危機により、更に生活全体への危機対応へと進んできたと言える。東西の横綱には「ユニクロ・H&M」と「セブン&アイとイオンのPB商品」、大関は「低価格小型PC」と「任天堂DSのwiifit」、関脇には「ブルーレイ」と「パナソニックの電球型蛍光灯」と続く。東芝のDVDレコーダー「ブルーレイ」が入ったのは、HD-DVDレコーダーの市場からの撤退によってシェアーが伸びたもので、それ以外は全て価格価値に主眼を置いた商品ばかりである。「お買い得」「買いやすい価格」、あるいは「パナソニックの電球型蛍光灯」のように、商品自体は高めの価格であるが、耐久時間が長いことから結果安くなる、「費用対効果」を見極めた価格着眼によるヒット商品である。そうした自己防衛市場への消費移動を整理し、キーワード化してみると次のようになる。

1、外から内へ、ハレからケへ
このブログでも何回となく象徴的な意味合いとして、「外食」から「内食」への傾向を書いてきた。しかも、中国冷凍餃子事件により、冷凍食品から手作り料理へと移動が起こり、前頭に入っているような「熱いまま急っと瞬冷凍」といった冷蔵庫が売れたり、前頭に入っている親子料理の「調理玩具」がヒットするといった具合である。ライフスタイル的に見ていくと、ハレからケへの移動、非日常から日常への消費移動となる。遊びも「任天堂DSのwiifit」、あるいは「ブルーレイ」といった家庭内充実商品が売れるという訳だ。そして、特に都市ではミニホームパーティがますます盛んになっていく。
また、今年の夏の旅行は燃料チャージにより国外から国内旅行へと大きく旅移動が起こり、今年の年末年始も同様の傾向である。ロングセラー商品であるJRの「青春18きっぷ」は、今やシニアの青春定番きっぷとなり、まさに小さな旅、日常型の旅の時代だ。唯一人気となっている海外旅行は、円高ウオン安の韓国だけで、これもまたご近所海外という小さな旅である。

2、エブリデーロープライス
エブリデーロープライスというキーワードを注目すべきであるとブログで書いたのは今年の5/4であった。その象徴的な事例として、東京(一部仙台)の中堅スーパーで急成長している「OKストア」を取り上げた。その商品MDコンセプトとなっている低価格の「わけあり商品」は、夏以降多くのマスメディアでも取り上げられることとなった。今回の東西横綱もしかり、小結に入っている「円高還元セール」もお買い得価格は円高という「わけあり」ということである。数日前、西友が家電量販店と同じ手法の「最低価格保証制度」を導入すると発表があった。親会社のウォルマートの経営・ローコスト経営を本格的に導入するということであろうが、安さを保証・約束する宣言である。
ところで景気後退というより、明確に不況期に入っていると認識しなければならない。世界的なデフレ傾向を踏まえ、日本においてもデフレか更にあらゆる業種に押し寄せてくる。そして、既に指摘してきたが単に安いということではなく、意味あるわけあり商品・サービスであるかの競争となっていくであろう。「食」を始め日常型消費商品から、生涯で一番高い買い物である住宅まで、この「わけあり競争」は始まっている。
ところで、横綱のH&Mの競争相手はユニクロであるか否かといった論議があるが、そうではない。H&Mもユニクロも、競争相手は百貨店の平場にあるカジュアル衣料であり、商品開発力のないカジュアル衣料専門店である。ある意味、中途半端な価格、中途半端な個性商品は淘汰されていく、いや既に始まっているということだ。若干課題があるとすれば、H&Mのサイズが欧米基準になっている問題であり、この課題を解決できるならば、エブリデーロープライスという最もベーシックな潮流を推進できると思う。

3、個族から家族へ
5〜6年前、個人化社会の象徴として若い世代に「マイブーム」が起きた。ある意味、「自分確認」=「自分探し」として、マイ○○という商品に自分を置き換えたブームであった。実はこうした私生活主義が少しづつ変わり始めている。書籍卸しのトーハンによる2008年のベストセラーランキングでは「ハリー・ポッター/最終巻」が第1位(185万部)であったが、今年ブームとなった「B型自分の説明書」(3位)をはじめ、O型、A型、AB型全てがベスト10入りし、シリーズ累計では500万部を売り上げた。10年ほど前から始まった個族の自分探しという占い依存型から自己確認型へと変化してきている。自分の居場所を失い都市漂流する若い世代に社会的な注目が集まり、バラバラになった個を家族という単位へとつなぎなおす動きが始まっている。消費面でいうと、上記の家庭内充実型商品、家事であれ、遊びであれ、家族一緒という単位変化が出てきている。象徴的な例であるが、5〜6年前の隠れたヒット商品であった「一人鍋」は、カレー鍋のように家族一緒の鍋へと変化してきた。つまり、上記傾向を踏まえると、家族割り、夫婦割りといったプロモーションは、携帯電話や映画鑑賞、旅行(交通・ホテルなど)、ゴルフのみならず多くの業種・業態へと広がるであろう。

4、小さなアイディア、小さなうれしい
日経MJと同じように年度のヒット商品を発表している三井住友グループのSMBCコンサルティングは今年の横綱は該当なしとなっている。社会的注目を集めるような商品力と実績を集めた商品はなかったとし、「横綱不在時代の幕開けか?」とコメントしている。日本は既に不況期に入っているという認識は同じであるが、日経MJはヒット商品が小粒になったと指摘、SMBCは消費支出の選択と集中が始まると指摘している。私に言わせれば、両社共に、生活価値観(パラダイム)がどのように変わりつつあるか、その過渡期の断面を指摘いると思う。
例えば、外食から内食への移動では、内食について言えばヒット商品は小粒になり、納豆の「金のつぶ」のように改良型商品がヒットする。しかし、外食が全て無くなる訳ではない。回数は減るが、ハレの日には家族そろってお気に入りの店を選択して使うことになる。つまり、中途半端な外食には足を向けないということだ。
今回のヒット商品番付には入っていないが、昨年冬のヒット商品である「湯たんぽ」は、今年の冬にはお湯を入れなくても済む特殊な注入液を電気で暖めて使う「湯たんぽ」に注目があつまっている。つまり、既存商品の進化系、小さな工夫、小さなうれしいが、小さなヒット商品となる。生活者は、そうしたディテール、細部にまで敏感に反応する賢明な顧客へと成長しているということだ。

さて、大分長くなってなってしまったので、次回も2008年ヒット商品を引き続き読み解いてみたい。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:02Comments(0)新市場創造