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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年08月31日

勝手に広告

ヒット商品応援団日記No295(毎週2回更新)  2008.8.31.

ちょうど1年前、私は鳥取県の都市市場開拓事業の委員を依頼された。引き受けた理由の一つが、人口60万人に満たない日本で一番小さな県の産業活性がテーマであり、鳥取県で成功させることができればそのビジネスモデルは他の県や市町村にも適用することができると考えたからである。以降、委員会での討議をしながら、県内企業のリーダーとも話し合い、現場も見させていただいた。東京にいると、「都市と地方との格差」、あるいは「疲弊した地方」という論議も実感を伴わない抽象論議になりがちである。しかし、行かないと分からないことがいかに多いか実感した1年であった。

以前「今、地方が面白い」というタイトルでブログを書いたが、確かに都市生活者が失ってしまった多くの豊かさが、鳥取県も同様に埋もれたままであった。委員会でも発言したが、鳥取県の代表的な商品の一つに「板わかめ」がある。健康に関心の高い都市生活者にとって格好の商品であるが、添加物が使われ、しかもサイズが大きく一度には食べきれない量だ。つまり、豊かな素材はあっても都市生活者研究が徹底的に足りないということである。一方、都市生活者にとっても鳥取県はほとんど知らない県の一つである。日本地理学会の調査では、お隣の島根県がどこにあるかという認識の正答率は51.5%。鳥取県もほぼ同じような認識しかされていないと思う。

都市と地方、互いに情報を持っていないということから、都市市場の開拓拠点として東京にアンテナショップを創ることが委員会の具体的テーマとなった。多くの人が知っているアンテナショップと言えば沖縄県の「わしたショップ」であるが、「わしたショップ」以外は全て赤字で県が補填しているというのが実態である。委員会においても当然反対の意見、あるいはお金をかけずにできる方法論など検討がなされた。結果として実施となったが、経済同友会など県内企業団体を始め推進要望が強かったことと、その背景には都市市場開拓に向かうにはあまりにも経営体力のない企業が多かったということからであった。

総事業費1億5000万のアンテナショップが一昨日東京新橋にオープンした。(http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=87115)1階は県産品の物販で、2階が県産の食材を使った飲食施設である。従来だと飲食施設は農水産物=和食となるが、イタリアンという洋のスタイルを採用した。素材の持ち味を生かすことにおいては和食もイタリアンも同じである。3種ほどの前菜とパスタを食べたが、なかなか繊細な味で女性を意識した手軽な価格のメニューとなっている。オープン初日、多くのお客さんが行列を作っており、1階の物販では商品の品切れが起きたと聞いている。

売上という事実が第一の顧客評価である。何が売れ、何が売れないか、その理由は何かという情報を得ることが、アンテナショップの目的の一つだ。オープン前に内覧会&プレセールが行われたが、鳥取砂丘と共に知られている県の代表商品「らっきょ」について早くも評価が出てきている。従来のらっきょはカレーの付け合わせの甘酢らっきょであり、そうした甘酢らっきょしか生産者は認識していない。しかし、流通のバイヤーからは、塩らっきょは無いのかという指摘を受けたという。らっきょは血液サラサラ効果として都市生活者には認識されている食材で調理法は多様である。このように生産者の勝手な思い込みによって商品が作られているのが実態である。こうした情報ギャップを生産者・メーカーが認識することから、ヒット商品が生まれる。その仕組みは私が既に提案し、用意されている。今、鳥取県でヒット商品づくりがスタートした。今回のブログはその「勝手に広告」である。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:50Comments(0)新市場創造