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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年08月24日

価格から見えること

ヒット商品応援団日記No293(毎週2回更新)  2008.8.24.

先日セブン&アイが新しいディスカウント業態のスーパー「ザ・プライス」を8/29足立区西新井にオープンさせると発表があった。2008年度上半期のヒット商品であったPB商品ではなく、NB(ナショナルブランド)商品を卸問屋を介さないで直接取引することで、20〜30%安く提供するスーパー業態とのこと。以前、急成長しているOKストアを取り上げたことがあったが、少し異なる業態のようである。9月には見に行こうと考えているので、その印象などはまたこのブログに書きたいと思っている。

ところで、ここ2ヶ月ほど「価格」について私見を書くことが多かった。それはOKストアの急成長に着目したということもあるが、もう一つは「暴走する資本主義」(ロバート・B・ライシュ著/東洋経済新報社刊)を読んだからでもあった。米国の延長線上にある日本にとって、示唆深い指摘がされており読まれたらと思う。ライシュは私たちが「消費者」であり、「投資家」である一面と、民主主義を体現する「市民」としての一面、この二面性を持っているが、前者の資本の暴走を後者である市民が抑えられなくなっていると指摘。ライシュが第一次クリントン政権時の労働長官という政治にかかわっていたことから、こうした指摘があったのだと思う。1円でも安く買いたい、1円でも多くの投資に対するリターンを得たいとするごく普通の欲望が、結果として資本の暴走を生み、その暴走へと至るメカニズムが見えにくいことから結果として市民が政治が許してしまっているという指摘だ。

実はライシュのような政治、民主主義による歯止めという視点もあるが、私は消費という現場レベルでの新たな試みもあるのではないかと考えていた。まだ小さな単位、地域単位での試みであるが、先日取り上げた京都の上田米穀店がそうであるし、同じ京都府のスーパーNISHIYAMAなんかも米づくり生産者を支援し、そのことを顧客にも伝え、いわゆる「適正価格」で有機米を提供しようと努力している。生産者、流通、顧客とが、互いに「市民」としての自覚のもとで、「適正価格」を追い求めているということだ。理想という高いハードルを持ちながら、現実課題としては互いに低くし、越えられるところから進めているのだと思う。実際にインタビューした訳ではないので推測になるが、生産・流通・顧客が互いの「得」を減らし、バランスのとれたところで実行されているのだと思う。

昨年秋以降、生産者・メーカーのリーダーと話す機会があったが、異口同音に原材料価格などの高騰から新たな価格設定をしたいが流通が受けてくれないと。一方、流通サイドではただですらデフレ状態であるのに値上げは客離れを招くと言う。今の言葉に置き直すと「風上ではインフレ」、「風下ではデフレ」という「ねじれ現象」が起きていた。そのデフレ圧力の顧客はどうかと言えば、周知のように収入は増えず、株式市場も低迷し、働くことそれ自体が不安定という情況だ。まるで解けない迷路に入り込んでしまった感があるが、中国餃子事件とガソリン高騰は、こうした価格決定のメカニズムや問題点を気づかせてくれたと思っている。ライシュ流に言えば、単なる消費者から「市民」としての二面性を持っていることへの自己認識である。

ライシュは「暴走する資本主義」の中で、グローバルスタンダードなどない、あるのはグローバル圧力があるだけだと言っている。米国政府の高官であったライシュはその圧力は大企業ロビーストによるものだと明言している。ところで、今回の北京オリンピックで素直に喜べた選手の一人に200mバタフライで銅メダルになった松田丈志さんがいた。宮崎県延岡のビニールハウスから生まれた競泳選手であるが、ボランティアコーチの久世由美子さんとの二人三脚によるものだ。企業スポンサーを始め、プロスタッフによるプロジェクトに支えられ英才教育を受けてきた選手とは全く異なる。銅メダルの受賞に際し、松田さんは「自分色のメダル」と表現した。このコメントに際し、様々な受け止め方ができるが、私は日本のビジネスの一つの行き方、ローカルゼーションの在り方に重なって見えた。また、最終日に行われた男子マラソンは日本勢は惨敗であったが、金メダルとなったケニアのワンジル選手は仙台育英高を経て日本の実業団で活躍している日本で育った選手だ。ローカルゼーションがパワーをもつには地方分権が必要であるが、価格を超える「日本色」、ローカルゼーションパワーへのヒントがあるように思える。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:56Comments(0)新市場創造