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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2008年08月17日

ロングライフ志向

ヒット商品応援団日記No291(毎週2回更新)  2008.8.17.

先日4−6月のGDPが前年同期比−2.4%、個人消費や設備投資、輸出もマイナス成長で、景気後退局面に入ったと発表があった。生活実感からすれば、昨年後半から既に始まっていることだ。折しもマンションや商業施設などの開発を手がけ急成長してきたアーバンコーポレーションが2500億を超える負債で民事再生の申し立てをし、2008年最大の倒産であると報じられた。前回、「大人の夏」というテーマで大人になった北島康介選手を取り上げ、「大人消費」が本格化するであろうと書いた。流される景気などの情報に右往左往しない、自らの実感を基にした賢明な生活経営が始まるということだ。以降も北京オリンピックでの日本選手の活躍が報じられているが、送り手であるマスメディアの加熱ぶりとは逆に、視聴者は静かな応援だ。その証拠ではないが、北京オリンピックの開会式の視聴率は37.3%であったという。(ビデオリサーチ/関東地区)この視聴率を高いと見るか低いと見るかは議論が分かれるところであるが、他の競技の視聴率を見ても分かるように、その多くは一桁台の視聴率である。(http://www.videor.co.jp/data/ratedata/program/oly_sum/2008_bei1.htm)つまり、一人ひとり、多様な好みのなかで自律的に行動している、別な言葉でいうと「大人の行動」ということだ。

2008年後半、「大人の生活者」は物価は上がっても下がることはないと思っているし、少々の景気対策程度で良くなるとも思ってはいない。エネルギーを始めとした原材料の高騰、一方生活者との消費接点では今なおデフレ傾向。この1年ほどこうした一種のねじれ構造のなかでの消費傾向を書いてきたが、その方向が変わることはない。まだ未成熟なところもあるが、着実に成熟した生活経営、新たな価値観形成へと向かっていると、私は考えている。いくつか芽となって出てきているキーワード「ロングライフ志向」もそうした新しい価値観の一つだ。永く使い続けたい、愛着が湧く、馴染んだ感じ、どこかほっとする、そんな価値世界である。大量生産大量消費の時代から、少量生産少量消費の時代へと置き換えてもかまわない。エコライフにもつながる価値観であり、生活文化を楽しむといってもかまわない。固有な生活文化が未だ残っている地方を掘り起こす時代。あるいは商品で言うと、作られた原点に戻り、復刻させていく試みなんかも始まると思う。単なる消費というより、商品を育てていくと言った方が正確であろう。

ロングライフ志向を具体的に見ていくとイメージが更に湧くと思う。使い慣れた、着慣れた、食べ慣れた、住み慣れた、そんなライフスタイルである。次々と変化情報=刺激が押し寄せるなかで、それでもなお使い続けたい、食べ続けたい、住み続けたい、とする価値観である。それを表面的には保守的、オーセンティックな世界のように見えるかもしれないが、実はモノの本質に迫るということだ。よく素材にこだわっているといったように「こだわり」を売り物にしているが、理想とする「何か」のためにこだわるのである。ロングセラー商品の多くはそうであり、ランキングなどには入ってこない商品である。価格は割高になるが、永く使うことによりコストパフォーマンスも満足させる商品となる。また、アートという視点に立つと、アート(芸術性)を完全の美とするなら、ロングライフ商品は不完全の美、つまり観賞を楽しむアートというより、使い込むことによって得られる「用の美学」の世界だ。

例えば、「住む街」であれば、永く住み続けたい街、愛着が湧く街、そうした街づくりがデベロッパーや住宅メーカーあるいは行政の目標となる。そして、「何を」もって永く暮らしたいとさせるかが、いわゆるコンセプトとなる。このブログでもエコ社会、エコライフの源流である江戸時代のライフスタイルについて書いたことがある。そのなかで、「里山」という自然との共生の知恵活用にもふれたが、今住宅メーカー積水ハウスの戸建住宅で「5本の樹計画」として里山づくりが実行されつつある。時間をかけて街を育てていこうというコンセプトであり、ロングライフという考え方の一つだ。

消費が収縮したとよく言われるが、表面的には市場は小さくなりそのように見える。成熟へと向かうこととは、生活から余剰、過剰を取り去ることから始まる。取り去ってもなお残るもの、そうしたモノ達との暮らしがロングライフ志向である。バブル崩壊以降、「豊かさとは何か」が問われ続けてきたが、ロングライフ志向もそうした豊かさの一つだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:05Comments(0)新市場創造