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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年06月04日

パーソナルブランドの時代

ヒット商品応援団日記No271(毎週2回更新)  2008.6.4.

前回ブランド効果が衰退していった背景について、中流の崩壊と個性化の進展という2つの要因を挙げた。この点についてもう少し言及してみたい。
中流の崩壊については、「勝ち組・負け組」論議や格差問題、あるいは市場の2極化といった文脈の中で多くが語られてきた。この中で最も注視しなければならないことは、中流市場(≒百貨店顧客)がブランドを支えてきたということである。高級インポートブランドはもとより、多くのブランドは、中流市場の「憧れ」がブランド価値を創ってきたといっても過言ではない。この「憧れ」を期待値といってもかまわない。多くのブランドは「違い」を固有の世界として確立するために、百貨店の中の売り場ですら、路面店の如きショップを創ってきたのである。

この中流市場の崩壊は、1998年以降の経済、下がり続ける所得という課題を背景に、未来への漠然とした「不安」という心理世界が衰退を加速させる。情報の時代の特徴であるが、マスメディアから流される少年犯罪や年金といったさまざまな不安情報は、それが「重要さ」と「曖昧さ」が大きければ大きいほど「うわさ」になりやすい。この「うわさの法則」通り、期待や憧れといった心理は急速に漠とした「不安」へと向かっていく。時代の寵児「ホリエモン」、あるいは新しい日本版セレブ・ヒルズ族といって話題に持ち上げたマスメディアは、今はどうであろうか。潮目が変わった、顧客の関心事が変わったといってしまえば終わりであるが、昨年来の偽装事件報道を含め、過剰な不安情報はブランド衰退の遠因の一つになっている。

もう一つの個性化の進展であるが、言葉を変えて言うと、主体が個人、個客の側に移ったということである。消費のプロはその学習体験の積み重ねにより、生半可なブランドはその本質を見抜いてしまうまで成長していく。そして、いつしか単なる消費から、自らコーディネートしたり、プロデュースするといった創造の側へと成熟していく。これがプロ顧客と呼ばれているものである。ちょうどインターネット上の個人放送局であるブログがマスメディアに代わって情報の発信者になったのと同じである。主客逆転、表が裏になり、裏が表になった時代である。表現主体が個人の側に移ったということだ。

十人十色とよく言うが、今や一人十色となった。色づけするのは個人である。だから、住まいから被服まで色づけしやすいようにシンプルなものが好まれ、大きな潮流となった。勝手にデザインするな、私がデザイナーということだ。ブランド名は忘れたが銀座プランタンでは、従来のサイズより更に細かなサイズを用意したところ売上が急成長したと報道されていたが至極当たり前のことである。既製服ですら、どんどんセミオーダー化してきたということだ。
こうしたモノ販売より前に、サービス業において一人十色は進行している。例えば、海外旅行などは良き事例である。1980年代ぐらいまでは、パック旅行が中心で観光プログラムがしっかり組まれていた。しかし、行きたくもない所に連れて行かれ、買いたくもない土産物を買わされることを繰り返し、そんな旅行は行きたくないと考える顧客が増える。今や行き帰りの航空便とホテルを決める位でフリープランが主流である。

さてブランドの今はどうかということであるが、ブランドという考え方、ブランディングが不必要になったということではない。ブランドは小さな市場単位として拡散した。ある意味、ブランドに過剰な期待をしてはならないということだ。今、百貨店に導入されているブランドを見ても、ほとんど知られていないイタリアの田舎町の職人が作るバッグや靴であったり、無名に近いオランダのデザイナーであったり、パーソナルブランドといっても良い位の小さなブランドばかりである。ブランドも大量生産大量販売という時代を終え、個人が作り、その範囲内で個人が買う時代になったということだ。個人の考えや思いが作る商品を通して語られ、それが一つ普遍性として波及していくことによって文化価値が生まれる。それを人はその表現を臭いといったり、どこか違った雰囲気といったりするが、受け手である顧客が創っていくのが文化だと思う。そうした個人文化・パーソナルブランドの時代を迎えている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:27Comments(0)新市場創造