さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

スポンサーリンク

上記の広告は、30日以上更新がないブログに表示されています。
新たに記事を投稿することで、広告を消すことができます。  

Posted by さぽろぐ運営事務局 at

2008年04月24日

「正解」のない試験時代

ヒット商品応援団日記No259(毎週2回更新)  2008.4.24.

本格的にはWiiの脳トレ以降であるが、TVのバラエティ番組の多くがクイズ的なものばかりとなっている。「知のゲーム」をエンターテイメントたらしめるために「おばかキャラ」を作ったりしているが、いわゆる雑学の世界である。雑学は博識とは違い、全て短編、ショートストーリ、部分、といった興味の先端部分のみとなる。フルスピードで駆け抜けている時代にあっては、深く考えたり、理解の先を見極めることなど難しい時代なのかもしれない。私はあらゆる単位、社会から経済、消費に至まで「小単位」となった時代という認識をしているが、知のゲームもまた小単位ということだ。

団塊世代の大量退職により、新卒の就職率は順調のようである。先日NHKの番組で「地頭力を鍛える」というテーマで、答えの無い答えを求めた入社試験を取り上げていた。まあ、一言でいうと以前流行った「ゼロベースシンキング」、過去や諸条件にとらわれず新しい発想を求めるといった内容である。SONYの創業者である盛田さんは「人に真似されるものを作りなさい」と常にオリジナリティを求めた経営者であった。そうしたポリシーと同じテーマである。
そのTV番組で紹介された中に、マイクロソフト社の入社試験があった。「富士山を動かすにはどうしたら良いか」という設問で地頭力を試すということがコメントされていた。富士山は見るもので動かすものではないと誰もが思っており、意表をついた設問だ。従来とは異なる新しい発想のできる人材をマイクロソフト社は求めたのだと思う。正解はないのだが、モデルとなる「答え」は、富士山の容積を計算し、パワーシャベルと車で他の場所に移動するというものであった。ゲストコメンテーターの糸井重里さんは、「先が見えない時代の企業の悲鳴のようだ」とコメントしていた。

欲しい情報はネット上で検索すれば瞬時に手に入り、あまり考えることなく一定の答えが出せる時代だ。しかし、同じ答えばかりの世の中では唯一の競争力は価格だけとなり、これまた答えにはならない。ところでこうした知恵やアイディアを経営の中心に置きたいとどの企業も考えている。その源である能力とは脳力であると言われ、今注目されている脳科学者の茂木健一郎さんは、人間の脳を大きく変えたものが2つあると言っている。1つは言語を持つことによって大きく脳が変わってきたということ。もう一つがインターネットの世界が人間の脳を大きく変えていくと言っている。

言葉を持つことは,ベストセラー「声を出して読みたい日本語」を書いた齋藤孝さんが言われているように、心も身体も元気になる、生き生きとさせてくれることは理解できる。もう一つのインターネットの世界であるが、茂木さんは検索エンジンのGoogleを取り上げて、検索→絞り込み→選択、という手順を踏んで「求めるもの」にたどり着く。従来であれば、図書館に行って調べたり、人に聞いたりして選択までの時間がかかるが、Googleだと瞬時に出来てしまうこと。そして、この選択という脳の働きはいわば直感力そのもので、インターネットの世界は、無料で自由にこの直感力を働かせるという説を述べている。つまり、いろいろな条件や壁によって抑えられてきた無意識下にあることや感性的なものが表舞台に出てくる可能性があるという考え方である。齋藤さんの「声を出して・・・」もそうだが、人間が本来もっている五感力、感じ取る力を取り戻すことが重要であることは理解できる。

先が見えない時代は当分続く。であれなこそ想像力、仮説力が求められるのだが、前回書いた天野祐吉さんはそのブログの中で、落語家志の輔さんの「教育論」を引用して、この地頭力に触れている。出来の悪い子供をもつお父さんが先生に呼び出されて試験の出来の悪さを指摘される落語で、ここに出てくる試験問題が天野さん流の地頭力の答えである。
「81個のりんごを3人にひとしく分けるにはどうすればいいか」という設問に対し、与太郎みたいな子供は、”ジューサーでジュースにして分ける”と答える。理由は”りんごには大きいのや小さいのがあるし、甘いのやすっぱいのもあるから。だからジュースにしたんだ”というのが答えだ。そうかと思うと「本能寺を焼いたのは誰か」という設問に対しては”ぼくじゃありません”と答える。そんな落語を引用して、天野さんは「正解とは何か」、そしていわゆる「試験の愚かさ」を指摘している。マイクロソフト社の「富士山を動かす」入社試験問題より、この志の輔さんの落語に出てくる与太郎の試験に対する「答え」の方が、よほど想像力を引き出す良き試験のように、私には思える。毎日が試験であるビジネスに正解はない。だから面白いのだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:49Comments(0)新市場創造