さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2008年04月02日

平成構造不況へ

ヒット商品応援団日記No253(毎週2回更新)  2008.4.2.

4月1日暫定税率の時間切れによるガソリンが値下げとなった。一週間ほど前から混乱が起きるとマスメディアは報じていたが、混乱は政治の世界だけで、GSも利用者も至極当たり前のこととして初日を終えた。どこのGSが一番安いか、口コミや運転中にガソリン価格を確かめたり、ネット上の比較ガソリン価格サイト(http://gogo.gs
)を見て、今まで控えていた給油を満タンにするドライバーがほとんどであった。一方、当然であるが、提供する側のGSは周辺の競合GSの価格をにらみ、赤字覚悟で価格を設定している。情報の時代ならではの現象が随所で見られた。
同時に、原油や原材料のコストアップによる本格的な値上げが始まった。2007年度の企業決算は大企業・輸出企業を中心に極めて良い成果になると思うが、昨日の日銀短観の発表を待つまでもなく、2008年度は一挙にマイナスへと転じることが予測される。

今、内需拡大・地方経済の格差是正を含めたテーマに経済諮問会議を始め議論されているようであるが、私は経済のアナリストではないのでマクロ経済の動きについては分からない。しかし、消費というミクロの経済については理解しているつもりである。昨年から「価格」という壁を超えるにはどうしたら良いのかこのブログでも書いてきたが、今明確に不況の時代を迎えたと理解している。日本のGDP420兆円の約6割が消費によるものである。今回のガソリンの値下げに対する生活者の冷静な行動を見るにつけ、出口の分からない構造的な不況のように思えてならない。

昨年このブログでも書いたが、不況の時代には「笑い」が求められていることは周知の通りである。大きな笑いではなく、チョット笑える、そんな小さなことが商品にも、販売にも、店頭での一言にも求められているということだ。
ところで不況の時代には笑いと共にもう一つ面白い傾向が見える。日本経済の不況時にはキャラクター産業が奇妙な成長を遂げていると指摘したのは、あの「物語消費論」を書いた大塚英志さんである。高度成長期を終えた1970年代に、ドルショック・オイルショックという大きな転換点を迎え暗い不況の時代にあの「キティちゃん」が誕生し、サンリオの奇跡と呼ばれた。こうした事例を踏まえ、大塚さんは「暗い世相の中、もはや日本人は過剰な消費はするべきではないと人々が悟った時代にキティちゃんは誕生したのである」(『「おたく」の精神史』講談社現代新書より」と指摘している。

私の「キャラクター」理解はこうである。まず消費すべき価値を見失いつつある時代で、それが価格にストレートに向かっているという現状認識が第一点。こうした前提を踏まえ、従来のキャラクターという記号の意味合いが変わってきているという認識である。確かに、地方の町おこしをはじめ、過剰なまでのキャラクターが舞台へと上がっており、それなりの人気を得ている。また、「真性おたく」が1990年代半ばに消滅し、取って代わったのがキャラクターを主人公とした「ライトノベル」で、その元祖ともいうべき「スレイヤーズ」は1200万部とも1500万部とも言われている。

しかし、記号という仮想現実の消費世界から、ここ数年多くの回帰現象に見られるように、過去へ、日常へと消費価値が向かっていると私は考えている。もし自己を投影する「何か」をキャラクターとするならば、動物園や水族館ブームのように「生きていること」、生命力のもつ不思議さやかわいらしさへとキャラクターの質的変化が始まっているように思える。少し飛躍しすぎるかもしれないが、今日の雑学ブームやクイズバラエティの氾濫も、あるいは脳科学への注目も、価格以外の消費すべき価値を探している「踊り場」であるが故との認識だ。さて、この踊り場から何が生まれてくるか、新しい消費価値の芽は2008年度中には出てくると思う。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:51Comments(0)新市場創造