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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2007年11月04日

「見せる」を「魅せる」へ

ヒット商品応援団日記No216(毎週2回更新)  2007.11.4.

偽装、偽造ばかりの時代になってしまったが、顧客に全てを見せることが極めて重要な時代となった。生産者の顔を見せる、製造工場はガラス張りにしていつでも見れるようにする、調理は顧客の前でする、出来上がったものはその場で食べてもらう、使用素材の履歴はいつでもどこでも明らかにできるようにする。ここ数ヶ月の偽装事件のほとんどが農水省への内部告発によるもので毎月300件を超している。つまり、内も外もないというのが情報の時代である。

本格的にオープンキッチン、オープンダイニングが始まったのは1990年代であるが、よく考えれば寿司屋は江戸時代から目の前でにぎってくれていたし、街の食堂は常に対面でオープンに料理してくれるものであった。赤福の前会長がいみじくも記者会見で述べていたように、「その日食べるものをその日に提供することから、拡大してしまったことが起因する」と。今日の冷凍&解凍技術は鮮度維持を可能にする極めて高いものである。一匹700〜1000円で都心のデパ地下で売られ人気となっている釧路沖でとられる青刃さんまも窒素による瞬間冷凍ものである。私が良く行く鳥取で秀逸な技術によって旨味を引き出す氷温技術もそうした冷凍&解凍技術の一つである。問題はそうした技術をオープン、いや逆に売り物にする情報公開・プレゼンテーションだと思う。

冷凍&解凍、あるいはフェイク商品等、情報は公開され、顧客が食べたり、着たり、使ってみて、実感納得するということが原則である。今や「見せる」ことを魅力に変えるプレゼンテーションが盛んである。先日オープンしたエキュート立川にも出店している行列ができる店の一つである「かにチャーハンの店」はまさに「見せる店」である。オープンキッチンで調理される鍋ふりでは1m近くもチャーハンを上げ、お米がパラパラになるパフォーマンスを見せてくれる。値段の安さもあって、常に行列となっている店である。一方、私も知っている調理器具メーカーの三栄コーポレーションではロボット調理器具でプロの技にせまる鍋ふりを行っている。勿論、熟練した達人の技には届かないが、その技に迫る技術で見ていても面白いものである。共に、「見せる」を「魅せる」あり方へと進めた良き事例だ。

繰り返し書いて来たが、その見せ方に過剰な演出があってはならない。過剰さから、増々素の力へと魅せる世界が変わって来ている。賞味期限や消費期限という情報のみの判断で生活しているが、日本人が培って来た知恵や工夫、冷凍&解凍といった技術や保存料に頼らない古来からの発酵&乾燥技術もそうした素の力の一つである。戦乱の世を経て、商業が全国レベルへと流通し始めた江戸時代にはこうした技術によって生まれた食品が地方には今も残されている。よく行く鳥取でも鯖の糠漬けである「へしこ」などは一種の保存食で地元ではよく食べられている食品である。
また、受け手である生活者も情報だけに頼らない本来持っている五感による判断、素の力を磨く必要がある。2年ほど前から「食育」論議が盛んになったが、親子で料理し食べるといった程度のもので、日本人が経験し育てて来た食文化には至っていない。おにぎりの定番である梅や塩むすびは何故そのようになったのか誰も伝えようとはしない。塩はミネラル豊富な沖縄宮古島産が一番といった表層の「見せ方」ばかりである。素の魅力とは、梅や塩がもつ力のことである。いずれにせよ、食の提供者はこうした素の力をどう魅せていくかが今後の課題であり、結果豊かな日本食文化へとつながっていく。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:19Comments(0)新市場創造