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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2007年10月17日

亀田父子物語

ヒット商品応援団日記No211(毎週2回更新)  2007.10.17.

先日のWBC世界フライ級タイトルマッチ「内藤VS亀田」戦を見て、プロレスまがいの反則に誰もがおかしいと思い、こんなことがボクシングという下手をすると命に関わるスポーツで起こって良いのかと思ったことと思う。その試合を含め、多くの問題についてはスポーツ紙やTVの報道で繰り返し指摘されているのでここでは取り上げるつもりはない。私が指摘したいのは亀田父子物語を創造し、ビジネスにしてきた戦略の誤りについてである。

私が亀田父子を知ったのは一昨年のマスメディアによる報道であった。大阪に三兄弟をボクシングのチャンピオンにしたいと独自なトレーニングをしているファミリーがいるとの内容であった。当時は子殺し、親殺しといった社会事件が象徴するように、家族崩壊のニュースが続出した時期であった。親子の絆、父権復活が叫ばれ、マスコミも亀田父子の絆を舞台に上げ、一つのケースとして取り上げた。その頃感じたことは、スポ根漫画「巨人の星」の一徹と飛雄馬父子であった。今回の反則行為を含めた日本ボクシングコミッションの処分発表に際し、以前在籍した大阪のジム関係者は、大阪にいた頃はまじめで礼儀正しい子供でした、と語っていた。また、東京へ行ってからまるで変わってしまったとも。

これは私の推測であるが、所属ジムを協栄ジムに変え、東京へと移り住むようになってから大きく変わったのだと思う。この変化を促した、というよりビジネス化したのがTBSと協栄ジムであったと思う。当時、ボクシング業界は右肩下がりの時代にあって、ユニークなパフォーマンス、ヒール(悪)役を演じるシナリオ、亀田父子物語の創作が始まった。確かに、ボクシングとはまるで縁のなかった若い女性がパフォーマンス見たさに、試合会場へと足を運んだ。新しい市場が生まれたと錯覚をしたことが、今につながってくる。

確かに新しい市場は生まれたと思う。しかし、同時に失った顧客もまた存在する。今回の「内藤VS亀田」戦の会場はまばらであったと聞く。勿論、TV放映の視聴率は大阪地区では約40%を稼ぎ、ビジネスとして成立したのだとは思う。しかし、ビジネスは継続である。ブームとトレンドとは全く異なる。前者は一過性のものを指し、後者は以降も続くもののことを指す。私が繰り返し指摘してきたように、トレンド(傾向・潮流)はサプライズから本質・本道へ、非日常の過剰刺激からリアルで日常的な穏やかさへ。誰もが過剰なパフォーマンスなど求めてはいないということだ。亀田父子物語の創作者は時代の風を無視したのか、読み間違えたのか、いずれにせよ極めて大きな代償を払うことになる。

私は熱烈なボクシングファンではないが、今回の事件に触れ、沢木耕太郎さんが書かれた「一瞬の夏」という本を思い出した。恵まれた才能を持ち、世界チャンピオンに挑戦するが果たせなかったカシアス内藤をモチーフに書いたノンフィクションである。そのカシアス内藤が癌と戦いながら横浜にジムを開き、若いボクサーを育てている。ボクシング界に求められているのは、今なお戦っている「カシアス内藤物語」(http://doraku.asahi.com/hito/interview/html/061127.html)であると思っている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:41Comments(1)新市場創造