さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2007年09月23日

リスクとリターン 

ヒット商品応援団日記No204(毎週2回更新)  2007.9.23.

米国のサブプライムローンの焦げ付きに端を発した嵐が世界中に吹き荒れている。先日も英国銀行の取り付け騒ぎのニュースが流され、日本においてもその影響として投資信託における損失が8〜15%下げたと報じられた。
サブプライムローンを始め、今回の金融の嵐について徐々にその詳細が報じられているが、金融の専門家ではない私にとって不思議なことばかりである。米国における低所得者向けのサブプライムローンの借り手は約625万人と言われ、そのローンの返済の仕組みは給与所得が右肩上がりを前提としており、その所得が上がらなかった場合は転売すれば済むといった「住宅神話」に裏づけられたものだ。バブル崩壊を経験してきた日本人にとっては、不動産神話が住宅神話に変わっただけて、その本質はバブルであると直感的に思うであろう。ただ、バブルの最中には、バブルという認識はない。

世界規模の「金あまり」の中で、多くの金融商品が証券化という方法で誕生してきた。周知の映画ファンドのように資金を持たない制作者にとってはとても良い方法の一つであり、日本映画再生に役立つファンドも存在している。しかし、今回のサブプライムローンの場合、貸し手の金融会社はリスク分散のために約80%を証券化し他の金融会社に転売していた。その転売先も多くのファンドと組み合わせ新たなファンドとして繰り返し販売する。その販売価格を決めるのがいわゆる「格付け」である。今回のサブプライムローンの問題について、この格付けの曖昧さが指摘されているが、この曖昧さと共に問題指摘されているのがリスク分散がリスク拡大となってしまった構造にある。格付けを偽装とはいわないが、北海道のミートホープ社ではないが、牛肉に鶏肉を混ぜて販売してきたものとそれほど変わらない。

今回のサブプライムローンに端を発した嵐は多くのヘッジファンドの破綻へとつながっている。このヘッジファンドはちょうど10年前には数でいうと約5,500、資金量は約3000億ドルといわれている。それが、2006年には1万ファンド、1兆5000億ドルとも言われるように急激に膨張してきた。つまり、数年前に禿鷹ファンドといわれ、リターン・運用益が20%を越えるようなハイリターンの時代は既に終えたということだ。そして、この過当競争は、儲からないヘッジファンドの増加へとつながる。まさにサブプライムローン問題を通じて露呈したように、マネーゲームには必ず勝ち負けがあり、リスク拡大先のババを誰が引くか、といった情況だと思う。

日本資本主義の源流、貨幣経済の元となっている物と物との交換や金融について調べてみるといくつか示唆的なことがある。物と物との交換、交易の場を市庭(いちば)、あるいは市と呼ばれていたが、この市庭は生活する俗界から離れた聖なる神仏との境界につくられていた。見知らぬ他人が交換するためには、物を一旦神仏に差し出し、そして物を受け取るといった手続きが必要であった。あるいは金融についても同様な手続きがなされていた。例えば、物を貸して利息を得るといった行為の原初的形態が「出挙(すいこ)」である。出挙とは神仏の倉庫にある種もみを農民に貸し出し、収穫の秋には神への感謝として若干の利息を付けて返すといった手続きである。これは私の推測であるが、この利息とは自然災害などによって収穫できないことへのリスク回避、経済循環のためであったのではないかと思っている。

私は金融の専門家ではないが、株式市場を始め多くの個人投資家が増え、外貨取引のFXも既に64万口座を超えている。ヘッジファンドやグリーンメーラーといった短期の利ざやを目的とした金融取引においては、今日の神仏である公としてのルールが厳密に求められてしかるべきと思う。ヘッジファンドとは対極にあるベンチャーキャピタルのように、コト起こし事業を資金だけではなく育てる不可欠なファンドの存在も知っているが、エンロン事件以降これからもサブプライムローンのような構造的問題の嵐が吹き抜けると思う。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:17Comments(0)新市場創造