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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2007年05月13日

テーマパークビジネスの今    

ヒット商品応援団日記No166(毎週2回更新)  2007.5.13.

前回母の日ギフトについて「青春物語」を贈るといった例で物語消費について書いた。そのブログを書いている最中に大阪吹田のエキスポランド「風神雷神Ⅱ」の事故のニュースに接した。確か報道番組だと思うが、テーマパーク・遊園地といったエンターテイメントビジネスでは東京ディズニーランドの一人勝ちのようなコメントがあった。事実一人勝ちで、バブル崩壊以降、向ヶ丘遊園地、宝塚ファミリーランド、阪神パーク等多くの遊園地が次々と閉鎖されてきた。事故を起こした遊具メーカーであるトーゴは破綻し会社更生法の適用中である。破綻した夕張にもそうした遊具施設があり、財政破綻の一つの要因となっている。少子社会、レジャーの多様化、そしてバブル崩壊といってしまえばそれで終わってしまうが、人工的に作られた絶叫マシーン・ジェットコースターに代表される「興奮」「スリル」といった消費欲望自体が変化してきているのだ。

理屈っぽく言うと、今市場はどんな刺激の「欲望物語」を求めているかということである。「風神雷神Ⅱ」のような現実から離れた人工的非日常的遊戯の刺激を回数化させていくにはエスカレートさせていくしかない。テーマパークビジネスの原則は、いかにリピーターを創っていくかで、エキスポランドのような中規模テーマパークは、競争を勝ち抜くために体感刺激が過激な遊具へと変化していくこととなる。遊具という設備投資は大きく、回収する前に、新たな集客をはかるための更なる投資が必要となる。こうした悪循環から多くの設備型テーマパークが廃園・撤退に追い込まれて来た訳だ。この「風神雷神Ⅱ」のような絶叫マシーンはその刺激の強さによって集客には格好の遊具であった。ところでこの絶叫マシーンより更に恐怖感を体感できる遊具(背面型マシーン)は既に出来上がっている。しかし、エスカレートを重ねていくに従って、刺激は麻痺していきマーケットは減少傾向となる。サプライズ物語は10年20年という単位で考えていくと継続しないということである。

東京ディズニーランドはこうした設備型テーマパークとは似て非なるもので、根底から異なるビジネスモデルである。ゲートに入ればそこには現実と遮断された異空間があり、顧客一人ひとりが主人公である世界が広がる。正面にはシンデレラ城があり、ランドマークとして強烈なインパクトをもって私達に迫ってくる。そして、多くの遊具施設や次々と催されるアトラクションという「NEWS」による「回数化」を前提とした見事な仕組みとなっている。そして、次回来場を誘うかのようにディズニーグッズという「お土産」が用意されている。良く言われるように入場料によって経営が成立するというより、お土産という物販、飲食による収入によるビジネスモデルとなっている。見事に物語マーチャンダイジング&マーケティングがなされているということだ。
他のテーマパークと比較すると多く仮想現実の構造で似ているが、唯一異なることは物語の「過剰さ」の在り方の違いであると思う。東京ディズニーランドはディズニー物語の読み込みへの過剰さを現実世界と100%遮断し、仮想現実を創造している。「風神雷神Ⅱ」のような体感刺激の過剰さではない。まさにディズニーワールドというファンタジックな虚構の物語世界を確立させていることだ。

さて、もう一つの欲望変化は1990年代半ばまで物語消費の主人公であった新人類世代から団塊世代へと変化してきたことにある。当然であるが、物語の内容ももまた変わることとなる。新丸ビルや東京ミッドタウン、あるいは百貨店のリニューアルに見られるように、そこには「大人の時間」「上質な日常」といったキーワードの如く、過剰さを削ぎ落とした欲望物語が提案されている。洋によったものを和へとバランス良く取り入れる傾向であり、サプライズとは反対の一種のおだやかさが時代の潮流となっている。テーマで言うと都市化によって失ってしまった「自然物語」、動物園や水族館である。
人工から自然へ、虚構から現実へ、非日常から日常へ、デジタル世界からアナログ世界へ、子供から大人へ、物語の舞台、シナリオ、演出、そして観客が変わったということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:46Comments(0)新市場創造