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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2007年04月22日

人生美学市場 

ヒット商品応援団日記No160(毎週2回更新)  2007.4.22.

この1年ほど、和回帰、日常回帰、家族回帰、都心(中心)回帰、ふるさと回帰、多くの回帰現象とその背景にある価値観変化について触れて来た。ここ1〜2年書店には「日本論」や「日本人論」、あるいは「日本文化」に関する本が棚に多く並ぶようになった。このブログでも「国家の品格」や「えんぴつで奥の細道」あるいは柳澤桂子さんの「心訳般若心経」、最近では熊野古道や鳥取の三徳山三佛寺の投入堂といった日本精神誕生の秘密への注目、更にはお茶や座禅といった修養人気についても触れて来た。バブル崩壊後の十数年、不安と閉塞感が支配する時代にあって、立ち止まり、「今」はどこから生まれて来たのかその誕生へと遡行するこころの現象であったと思う。

もっと平易に言えば、「未だ知らない日本探検」に多くの人が旅立ち始めたということだ。私の場合、マーケティングという職業から和への傾向といった消費動向の変化推移を見て来た訳であるが、より意識的に調べるようになったのは歴史学者網野善彦さんによる多くの著作であった。そこには学校教科書には書かれていない「日本」があった。日本は島国=閉鎖的国家でもなく、単一民族国家でもなく、稲作単一文化国家でもない。特に、日本資本主義の源流を鎌倉時代の仏教に見出した点(「日本中世に何が起きたか」洋泉社刊)については、現在のライフスタイルの原型が江戸時代にあることを考えるとマーケティングにおいて多くのヒントやアイディアを得るものであった。
また、最近読んだ本に、あのホリエモンの恩師と言われている東大教授船曳健夫氏の「右であれ左であれ、わが祖国日本」(PHP新書)における歴史的地政学的という、日本への視座は興味深いものであった。船曳氏は日本国家のモデルを国際日本(織田信長型政治)・大日本(秀吉型政治)・小日本(家康型政治)の3つにわける。そして、この国家の在り方は3つの超大国(中国、ロシア、西欧/米国)に囲まれた中で日本の命運が決まって来た、という超俯瞰的な視座をもった独自な国家論を展開している。網野善彦さんとは異なる分野の研究者であるが、二人に共通していることは「未だ知らない日本」への一つの視座を与えてくれていることだ。

前回書いた自己確認市場のように個人のみならず、国家も自己確認しなければならない情況下にある。3つの超大国との関係、外交・経済といった諸問題が報じられており、これから日本が進むべきグランドデザインをどう描くのかということである。つまり、個人も国家もアイデンティティを無くしているということだ。そして、個人においては「私は誰」といった回帰現象となり、国家においては憲法改正論議の中で「日本って何」と議論され、その誕生を探すことへと向かうであろう。そして、ここ10年位精神の旅は、船曳さん流に言うならば3つの国家モデルの間を漂流することとなる。個人も国家もその歴史を辿り、検証する精神の旅を続けるということだ。

さて、マーケティングの話に戻るが、個人の精神の旅はどんな消費となって現れてくるであろうか。これは私の仮説であるが、ビジネスから家族に至る多くの諸関係から一定の「自由」を得る団塊世代から、次の「ライフデザイン」が生まれる。漂流する精神は「人生」に最大価値を置くことへと至る。”素敵な一生であったであろうか”である。その人生価値は消費という視点に立ってキーワード化すると「道」となる。日本文化固有の人生の極め方「道」である。仕事でも、遊びでも、更に奥へと突き詰めることに無上の喜びを感じる「道」である。ゴルフ道、ボーリング道、・・・・カメラ道、蕎麦打ち道、散歩道、スポーツや趣味といった道楽も「道」の精神につながる。勿論、その道具やスタイルは全てプロ仕様となるだろう。
今や、店頭に並ぶ商品は全てこだわり商品となった。素材に、水に、土に、塩に、価格に、サービスに、ディテールに「こだわる」商品ばかりである。こだわり競争を超えるもの、それは「道」である。道の精神世界は固有であり、競争を超えたものである。こだわりを超えた、その精神の響きに魅せられる顧客が増えてくる。未だ知らない日本の「道」、その人生美学。そんな小さくてもキラリと光る埋もれた商品がこれから発掘され店頭に並ぶであろう。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:39Comments(0)新市場創造