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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2007年04月01日

夢舞台       

ヒット商品応援団日記No154(毎週2回更新)  2007.4.1.

前号の最後に、「シニアの日常は全て思い出づくりとなる」と書いた後に、あの植木等さんの訃報をニュースで聞いた。植木等さんの死とは、団塊世代にとって自身の限られた時間認識を更に鮮明にさせるものであった。そして、50数年間生かされて来たことへの感謝と自身の思い出づくりを加速させる。「Always三丁目の夕日」を観た後にも同様の感じを受けたが、今回の植木等さんの死はとてつもなく大きい。戦後の高度成長期にあって、無責任男、ほらふき男を演じた植木等さんであるが、その笑いは痛快で清涼感すらあった。
団塊世代にとって「過去を振り返る」とは、限られた未来を描き行動することと同じである。過去を遡り、残された時間をどう生きるかが唯一の生きる目的となる。勿論、過去は取り出したい「過去」だけであり、「今」の自分を投影している。よく青春フィードバックというが、ストレートしか球種を持たない当時の若い団塊世代に、フォアボールでもいいじゃないか、どうにかなるさ、と一種の「軽さ」を持った応援歌であった。夢は飲み込んで走ることしかなかった昭和という時代、青春時代を象徴した人物であった。

さて団塊世代は昭和に立ち戻り、どんな未来を描くのであろうか。働いて食べることに精一杯であった昭和にあって、好きな仕事に就けることなど極めて難しいことであった。戦後という時代に翻弄されたというより、結果として時代を切り開いたという少しの自負はある。昨年の嬬恋ライブで吉田拓郎が最後に歌ったアンコール曲は象徴的であった。拓郎のデビュー曲である「今日までそして明日から」を歌い、またこれからも生きていきます、またいつか会いましょうとの言葉通りである。死を身じかに感じ、やり残したことは何か、昭和の自分に帰り、そこから団塊世代の未来は始まる。

やり残したことは何か。既にその芽が出てきているのが「田舎暮らし」である。「Always三丁目の夕日」を観られたら分かるが、中学・高校を卒業し都市へと集団就職するのがごく普通の時代であった。40数年後の今、後にした「ふるさと」の暮らしの取り戻しが田舎暮らしになったのだ。数年前から、団塊世代夫婦の旅は、「ふるさと」探しの旅となっている。昨年11月に創刊された団塊世代向けの雑誌「ノジュール」なんかは、よきガイドマガジンになっている。これからも、田舎暮らしを始める団塊世代は多く出てくる。同時に、都市の中にも「ふるさと」が数多く出現する。まずは郷土料理であろう。飲食店ばかりか、郷土の食材、調味料、調理道具なんかも注目されていく。特に、昭和という時代の温故知新が本格的に始まる。例えば、その傾向の一つにコンビニで売られている「ころっけパン」や「揚げパン」があるが、小さな移動屋台のような業態で、コッペパンを使った揚げたて出来立ての懐かしい「ころっけパン」専門店なんかも十分流行っていくと思う。

団塊世代はビートルズ世代と言われたように音楽世代である。オヤジバンドの舞台を用意したライブハウスはどこも盛況である。今、こうした音楽ばかりか、当時の遊びクラブが盛んである。べーごまや模型飛行機づくり、三角ベースの延長線上の草野球、・・・全て思い出づくりである。遊びからボランティアあるいは小さな起業まで多様な思い出づくりがスタートするが、そのこころの根底にあるのは「少年・少女」である。身体は太めになり病気の不安もあるが、こころは暗くなるまで遊び回った頃に戻っている。今流行のトレンド、ダメージジーンズなんかもサイズさえ合えば、団塊世代ははくであろう。
既に「好き」を追いかける消費市場は高額商品を中心に売れているが、少年少女達にとって問題なのは「発表舞台」である。団塊世代が中学生の頃、TV番組に「全国勝ち抜きエレキ合戦」があったように、市場を活性化させるには思い出づくりの「夢舞台」が不可欠となる。田舎暮らしも夢舞台であり、好きを求めた高額商品購入の裏側にも必ず夢舞台がある。少年少女になって舞台に立つ、これが団塊世代における市場開発の最大着眼である。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:42Comments(0)新市場創造