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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2007年03月25日

恋愛市場化の時代 

ヒット商品応援団日記No152(毎週2回更新)  2007.3.25.

誰を顧客とするのか、このビジネスの大原則は古くて新しい。いや、今ほどこの原則をつきつめないと間違いなく失敗する時代である。1970年代の市場規定は収入といった経済をベースに、性別・年齢・エリアといったデモグラフィック的属性で顧客を決めていた。まだまだモノ不足の時代で提供者論理が中心であった。1980年代に入ると経済的には少しづつ豊かになり、個性あるいはセンスといった言葉に代表されるようにモノ価値以外デザインといった付加価値が生まれ、ユニセックスのように性別で顧客を決めることができなくなった。個性マーケティング、デザインマーケティングといったことばが生まれた時代である。1990年代はこうした経緯を踏まえ、更に「違い」を創造するためにモノ以外のサービスに力点が置かれ「個人」のサービス要望を聞きながら、商品を提供する時代へと向かった。世帯収入が右肩下がりになる1990年代後半には、そのサービス要望に価格を置いたのがデフレ企業であった。勿論、流通もこうした変化を受け、有店舗メディア、無店舗メディア、今やメディアミックスの時代となり、「お取り寄せ」ブームのようにいつでも、どこでも、欲しいものが手に入るようになった。

このブログで格差をテーマに何回か書いてきたが、東京ほど格差の激しいところはないとも書いて来た。釧路沖でとれた一尾700〜800円もする青刃さんまが飛ぶように売れていたり、沼津の一枚4000円もするアジの干物のお取り寄せに話題が集まったりしている。こうした時に使われている顧客名称が、2005年度の流行語大賞のキーワードの一つとなった「富裕層」である。この富裕層の定義の仕方にはいくつかあるが、野村証券の調査によると2005年の富裕層マーケットは81.3万世帯、金融資産は167兆円となっている。(http://www.nri.co.jp/news/2006/060905_1.html
プライベートバンキングの主要な顧客層であるが、1506兆円という個人金融資産の14.1%を占めていることに驚く。あるところにはある、というのが実感であるが、こうしたマーケットと低価格を売り物にしたディスカウンターのマーケットは明確に異なっている。ちなみに、2005年度には生活保護世帯は100万世帯を超えている。そのシンボルとして「東京足立区の修学援助率42%」というショッキングな情報の発端となったのが文芸春秋/2006年4月号の佐野眞一氏による「ルポ 下層社会」である。当時の夕刊フジ(http://www.yukan-fuji.com/archives/2006/08/post_6481.html)があるので興味のある方は見られたらと思う。

こうした経済から始まり、今流行のキーワードでいうとノンエイジング市場、ユニセックス市場、トレンド市場といったデモグラフィック的属性では誰を顧客として想定したらよいのか分からない多様なマーケットが存在する。百貨店顧客といったように流通で区分する方法もあるが、JR東日本の駅商業施設ecuteのようにミニデパ地下化した流通も出て来ている。また、最近ではネット通販のヒット商品が既存流通で販売されるものも出て来ている。話題になった「携帯小説」がアナログの書籍で店頭で売られるようなものである。
数年前にビジネス書において「one to oneマーケティング」が流行ったことがあるが、既に自明のことであり、すぐ廃れてしまった。顧客は全て「個客」を前提にして想定するのだが、重要なことは「何」に興味・関心をもった顧客かということである。必要でモノを買う顧客は少ない。どんなところにこころ引かれたのか、どんな点を素敵だと思ったのか、興味・関心を入り口にした「内なるこころ」に個客はいる。通販であれ、対面販売であれ、この「内なるこころ」を解き明かすことが、「誰を顧客とするのか」につながる。顧客を発見するとは「内なるこころ」の発見に他ならない。

顧客と直接顔を合わすことのない通販も同じである。多くの人が活用するAmazonのページをめくればそこには「この本を購入される人はこんな本も購入している」との表示がある。これも「内なるこころ」を次の購入へとガイドする一つの方法である。この仕組みもかなりの精度をもってきていると思う。カタログハウスでは顧客からの問い合わせや質問について、全て手書きのはがきで答えている。見えない顧客と「手書き」というこころで会話しようとしているのだ。対面販売しているから「内なるこころ」が交流しえる訳ではない。誰を顧客にするのかではなく、顧客を好きになれますか、が答えである。「好き」は「内なるこころ」の扉を開ける鍵となる。こうした心理が強く働く市場の時代とは、恋愛市場と考えなければならない。昨年秋以降話題となった山形新幹線のカリスマ販売員齋藤泉さんは、何故人より3倍4倍売れるのか、恋愛市場化している良い事例であろう。齋藤泉さんは記者の質問に答えて次のように答えている。
「お客さまはあったかいし、優しい。今ここにいなければ、この方と出会えなかった。この場にいれてよかったと。こんなに仕事が嫌なのに、こんなに得している」と。(http://www.yukan-fuji.com/archives/2006/10/post_7417.html)(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:40Comments(0)新市場創造