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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2006年10月11日

働き方さがしの時代  

 ヒット商品応援団日記No106(毎週2回更新)  2006.10,11,

労働基準法改定の論議が盛んだ。ほとんどの日本人がホワイトカラーになり、工業化社会の時代とは違って、「時間で働く」ことの意味合いが変わってきたことによる。そして、論議を加速させているのが、グローバリズム、競争力という怪物である。1992年、バブルの崩壊と共に多くの企業において成果主義が取り入れられ実施されてきた。しかし、一部営業主体の企業においては成果主義の成果が得られたものの、多くの企業にとって成果は得られてこなかった。そして、追いかけるように2000年頃からどれだけ人の意欲を高められるか、モチベーション論議が盛んになった。そして、プレゼンテーションテクニックや営業ノウハウなどのハウツー本が書店に並ぶようになった。つまり、この10年間の論議は極まるところ「人の生産性」につきる。その生産性すらも「時間で働くのか」、「成果で働くのか」といった2者択一的論議ばかりである。更に、IT技術の進化により、労働の平準化、つまり一定のスキルさえ持てば、誰でも同じ仕事ができるという環境が作られつつある。そして、仕事をする場は、自宅、出先、会社など多様になってきている。こうした傾向はJRの通勤定期券の減少というかたちで如実に表れている。

さて、個人の側での働く意味合いを、特に若い世代においては、「お金」と「生き甲斐」、どちらかといった論議もある。今なお、元ライブドア代表の堀江さんに共感する若い世代は多い。そこに見えるのは「成功物語」「シンデレラストーリー」である。一方、生き甲斐を見いだせないといって「ニート」と呼ばれる64万人もの若者がいる。しかし、奇妙なことに両者に共通していることがある。まるで人生を終えた老人のような醒めた達観した考え方である。(生き急ぐ、二十歳の老人  http://remodelnet.cocolog-nifty.com/remodelnet/2006/05/index.html)そこには食べるために働くといった欠乏感はなく、精神的飢餓感だけがある。「精神的飢餓感」が成功物語に向かうか、自己の内面世界に向かうかの違いだけである。しかも、数年先の近未来のシュミレーションによるものであり、私のような団塊世代にとってはもっと「現在」を生きて欲しいなと思っている。こうした豊かさを背景に、どちらが良い、悪いではない現実がある。

一方、企業の側もリストラを行い、正社員を減らし、パートや派遣など非正社員の人間で経営をしてきた。しかし、日本一の出産数を誇る産院で看護士に医療行為を行わせるといった相次ぐ不祥事に見られるように、リスクとそのことによるコストもまた大きいことが分かってきた。人への教育、更には会社への帰属意識、ロイヤリティが今大きな経営課題となっている。経営の神様と言われたGEの前会長であるJ.ウエルチはインタビューの質問に、GEは100年以上の企業文化を持っており、その文化とは「誠実であること」と答えている。そして、「意味のない仕事を社員にさせることこそ残酷である」と言い、経営のリーダーは「尊敬される人たれ」とも言っている。
iPodで旧来のスタイルを変えたあのスティーブ・ジョブズはスタンフォード大学の2005年の卒業講演で次のように話している。

”自分が本当に心の底から満足を得たいなら進む道はただ一つ。自分が素晴らしいと信じる仕事をやる。それしかない。そして、素晴らしい仕事をしたいと思うなら、進むべき道はただ一つ。好きなことを仕事にすることだ。”

このスティーブ・ジョブズのように「時間で働くのか」「成果で働くのか」といった論議を超えた企業、個人は、実は沢山あるのだ。ただマスコミが取り上げないだけである。ところで、業界内では取り上げられている企業にSHIBUYA109がある。あのティーンにとってのファッションの聖地である。多くの流通が苦戦している中、2005年度の売り上げは254億と過去最高売り上げを更新中である。ところで、SHIBUYA109の来館者数は月間500〜600万人で、その多くは「ヘアメイクなどの美容系」「ショップスタッフ」更には「モデル」になりたいと思っている若い女性たちである。多くのカリスマを輩出しているブランドショップであるが、ショップスタッフは単なる販売員ではない。1人2役3役当たり前で、ヘアメイク〜ファッションの変化を常に観察し、自ら取り入れ、オピニオン顧客の意見を取り入れたMDを行い、店頭ではその商品を自ら身に付け、モデルとなって顧客サービスに当たる、といったいわばミニ経営者の役割を演じている。しかも、刻々と変化するトレンドに追いつき追い越すために1週間単位でMDを投入するといったSPAである。「好き」を超えて、ブランドをマネジメントする働き方である。そのショップスタッフになりたいという若いティーンは多い。また、最近では元カリスマスタッフが戻ってきているという。J.ウエルチではないが、意味ある仕事と思い至り得る「マルキュー文化」が育ちつつある。

つまり、時間で働く就業形態があっても良いし、成果を目標に働くのも良いし、第三の道のように成果もリスクも引き受けるような働き方があっても良いと思う。1つの企業の中に、多様な働き方を一人ひとりが選択できる経営が理想である。まだまだ、労働力市場における流通が未成熟な日本にあって、しかし二者択一的な働き方ではない多様な働き方を採用している企業もある。そうした企業には間違いなくリーダーの理念が明確になっており、一つの文化を形成していることだけは事実である。そして、何よりもどんな仕事であれ「意味ある仕事・役割」であることを、生き急ぐ若い世代に説き続けることがリーダーの最大課題であり仕事となった。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:21Comments(0)新市場創造